2話 大精霊堂
俺たちは先日ギルド長から依頼を受けた。(正確にはギルド全体に国王から命じられているから俺だけではない。)どうやら、新しい遺跡が出てきたらしい。たくさんの冒険者がその遺跡の調査に向かったがそのうち6割が周辺にいた魔物に襲われて調査できずに帰ってきた。残りの4割は未だに消息が途絶えているらしい。俺たちの任務は、周辺の魔物狩りと遺跡の調査、そして最優先事項として消息が途絶えている人の救助だそうだ。臨時依頼なので収入はかなりある。その遺跡はたしかに気になる。遺跡の魔物のドロップ品はかなりいい素材だ。更に遺跡の壁には高度な魔法が組み込まれていたり、レアな金属が手に入って武器の改良ができたりする。道中にいた遺跡から脱出してきた人たちを転移魔法でギルドまで送り届け、急いで遺跡へと向かった。
遺跡の到着し一番最初に目に入ったのは遺跡に入らず目の前でたくさんの人が立っていた。不思議に思った俺は一人の冒険者に聞いてみた。
「なぜ遺跡の中に入らないんだ?外のほうが危ないだろ」
「遺跡に入れねぇんだ。なぜ入れないって聞かれても俺らにもわからん」
入れない?なぜだ?たしかに頑丈そうででかい扉だが。
「とりあえずギルド長だけでなく国王まで心配なさっているから一度帰ったほうがいいんじゃないか」
「そうなのか!すまない、世話をかけた。おーいみんな撤収だ!これ以上は無理だ!」
「「「おー!」」」
いた人を全員送り届けてから遺跡の調査を始めた。上級の魔法を当てているがなかなか壊れない。どうしようか。
『壊す前提でやるな』
『でも扉は開かないんだろ?』
『それはあやつらにその資格がないからだ。でもお前は違う』
『どういうことだ?』
『この遺跡は大精霊堂という。ここは風の大精霊堂、風の大精霊のハースティがいる。外にも風の精霊が多かっただろう。それはこの大精霊堂が原因だ』
『大精霊、資格…まさか!』
『そうだ。こういう大精霊堂は精霊に認められたもの、つまり精霊使いだけが入る資格がある』
更に話を聞いていくと、この精霊堂の周りにいた魔物は幻影魔法で作られた第一の試練『強さ』をはかる試練。そしてこの扉が第二の試練『精霊』の試練。第二の方は精霊と契約しているかで決まるらしい。俺は様々な精霊と契約しているからもちろんオッケー。開けようと扉に手を触れると、扉がひかり、目がなれるといつの間にか遺跡の中に入っていた。更に遺跡の中はとても明るい。奥に進んでいくと、祭壇のようなものがあった。これはどこかで見たことがあるな。スティルと契約したときの祭壇に似ている。ということはどこかに大精霊が居るはずだ。さっきスティルが風の大精霊、ハースティといっていたな。
「おーいハースティ。どこに居る。いたら返事をしてくれ」
『人間が吾輩になんのようだ。ここは人間が立ち入っていい場所ではない』
『この者をここに連れてきたのは私だ、ハースティ』
『もしやそなたは、スティルか!』
ハースティとスティルは旧知の仲らしい。しばらくの間俺がいることを忘れて二人で話していた。
『で、そなたがスティルと契約しているやつだな』
「はい」
『なかなかな実力のものと見た。そなたよ、もし吾輩がそなたと契約してやろうと言ったらどうする』
「どうするも何も、是非お願いします。というか俺からお願いしたいところだ」
『ははは!その強気気に入った!吾輩はお前のもとにつくことにしよう!』
「いいのか!」
『スティルよ、この者は実力だけでなく前の契約者よりも人がいいな!』
『ああ、我も同意見だ。実力はまだまだあいつの足元にも及ばんが、あいつ以上の実力を身につけると思っておる』
『さあ、若き賢者よ!吾輩との契約の義を行おうではないか!』
「―我の心と通じ合う風の大精霊よ。今、我と契約し、その進化を発揮せよ。精霊契約!!!」
〜その後のギルドにて〜
「というわけで、あそこは大精霊堂と言われる精霊が眠っている遺跡でした。大精霊堂には遺産などお金になるものはないでしょう。それにあそこは精霊使いしか入ることができないので調査するのは極めてこんなんでしょう」
「協力ありがとう!報酬の件だが、300ゴールドとギルドランクの無条件昇格でどうだろうか?」
「それでよろしくお願いします。ではこれで失礼します」
「うむ、報酬は受付でもらってくれ」
そういえばギルドランク、そんなのあったなー。これからは少し上のクエストを受けることができるのか。これで自分の実力を伸ばすことができる。
『そういえば、言い忘れていたがエスティナよ。我らの力は緊急事態のとき以外は簡単に使うでないぞ』
「ん?なんでだ?」
『それは我らが大精霊だからというのもあるが、我ら片方でもすごいというのに二人の大精霊を使役すると知ったら人々はそなたを恐れるだろう』
「それは、例の契約者が関係あるのか?」
『そうだ。あいつは炎、水、風、雷、土、光の大精霊を使役しておった。それ故にあいつは大賢者と呼ばれていたのだ』
「じゃあなんでその人じゃなく俺のところにいるんだ?死んでしまったのか?」
『いやいまも生きておる。あいつは闇に染まってしまったのだ』
〜続く〜