辺境の街カザシュリ
辺境の街カザシュリ。特に名産や特産もなく国境付近でもない為、栄えてはいないがそれなりの規模らしい。
二人の門番が入り口の前にいて歳をとった年配の男がこちらに気づいた。
「アリアか。今日はやけに遅かったな。何かあったのか?」
「デヴィッドさん。えぇ、実はゴブリンナイトの群れに遭遇しまして」
「何っ!?ゴブリンナイトだと!?今すぐ冒険者ギルドに知らせないと!」
「あぁ、それなら心配ないぜ。もう討伐済みだ」
俺は二人の会話に割り込みそう告げた。
「何?討伐済みだって?見ない顔だが……あんた達は誰だ?」
「俺はユウ。ただの旅人だ。たまたま遭遇した魔物を討伐しただけだ。で、コイツはリゼだ」
「こんにちは!」
怪訝なデヴィッドに俺はそう紹介し、リゼは笑顔で挨拶をする。
「お前達だけでゴブリンナイト達を討伐しただって?……本当かアリア?」
「えぇ、彼等がいなかったら危なかったわ。だから、街に入れていいかしら?」
「アリアがそう言うなら問題ないさ。どうぞお二人さん。ようこそカザシュリに。それと、アリアを助けてくれてありがとな」
「で、冒険者ギルドへの口利きでいいのかしら?」
無事に街へ入れた俺達三人はしばらく歩いてから、アリアがこちらに振り向きそう告げた。
「あぁ、そうだ」
「分かったわ。その前に先に孤児院に寄ってもいいかしら?」
「そもそもアリアはなんであんな場所にいたの?」
「コレの採取のためよ」
リゼの疑問にバックから薬草みたいな物を取り出す。
なんだあの薬草モドキは?
そう思った俺はスキルで鑑定があったことを思い出して使うよう意識する。
ピッ
名前:生命草
効果:煎じて飲むと僅かに生命力が増す効果がある。ただしあくまで応急処置にならない為、完治はしない。
……なるほど、な。鑑定ってスキルは便利だな。
ん?そういや、自分にも使えたから他人にも使えるのか?
物は試しにとアリアを鑑定してみる。
ピッ
名前:アリア
種族:人間
職業:シスター(元冒険者)
レベル:45
年齢:19歳
身長:158㎝
所持スキル:剣技、脚技、不屈、武術の心得
……コイツ、なんでシスターなんてしてるんだ?
この世界の基準は知らないが、明らかにシスターのステータスじゃないよな?
あ、リゼの鑑定ってしてなかったな。
ふと思い付き、何気無しにリゼを鑑定する。
ピッ
名前:リゼルーナ(リゼ)
種族:人間
職業:ーーしゃー仮)
レベル:ーー
年齢:11歳
身長:149㎝
所持スキル:武王、気配感知、アイテムボックス、武器熟練度アップ、守護者、女神の加護
おい。なんかバグってるぞ!?それに物騒なスキルがあるんだが!?気になった俺はそのスキルも鑑定する。
ピッ
武王:ありとあらゆる武器を触るだけで巧みに扱える。
守護者:スキル保有者が、護りたい対象のために戦う時、身体能力が上昇する。
女神の加護:女神による奇蹟が授けられるであろう。
マジでこのロリ何者だ!!?
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余計な詮索をしたなと思う俺はアリアの案内で孤児院に到着し、個室には寝ている男の子がいた。
「フレッド。頑張って飲めのよ」
アリアが吸いのみのような器の水に生命草を混ぜて、フレッドの後頭部に手で支えて上半身を起こして水を飲ませる。
「んん……おね、ちゃん?」
「あぁ、フレッド……良かった」
少し顔色が良くなったフレッドが目を開けると、アリアが目元に涙を浮かべてフレッドを抱き締める。
くいくいっ
「あん?」
「ユウ。二人にしてあげよう」
「……そうだな」
袖を引っ張ってそう言うリゼの言葉に頷き、頭を掻きながらゆっくり部屋を出てドアを閉める。
「で、どうなの?」
「……あのままだと長くはないな」
鑑定で見たんでしょ?と目線を受けて俺は頷いた。
フレッドの状態はかなり悪い。生命草でいくらか体力を回復したようだが、根本的解決にはならない。
「ちなみに、治癒魔法の遣い手について何か知っているか?」
「治癒魔法なら教会所属の聖女だね。会うなら、最低でも貴族か王族の繋がりがいるよ」
「なるほど、な。だから、生命草だったのか……」
あっちの世界や異世界も権力者は変わらないな。