ある日、森の中でシスターに出会った
キンキンと鍔迫り合いのような音が俺にも聞こえてきた。
「ユウ!前方に人間一人、魔物が五体!どうする!?」
「俺に構わず先に行け!無理はするなよ!」
「分かった!」
ダン!と力強く地面を蹴りつけると弾丸のような速度で跳躍するリゼ。
〜???side〜
『ゲギャッ!』
「くぅっ!?」
ガキンッ!となんとかゴブリンナイトの槍をロングソードで弾くことに成功する。
くそっ!なんでこんな町付近にゴブリンナイトの群れがいるのよ!
ハァハァとロングソードで威嚇するが、奴等は安全圏から様子を伺っている。
チッ!せめて、昔みたいに足が動けばこんな魔物くらい蹴散らせるのに!
「はぁはぁ、みんな……ごめんなさい……私は、ここまでもかも」
「伏せて!」
まともに動かない右足のせいで、いよいよ覚悟を決めて謝罪を口にした時、鋭い声が聞こえてきた。
「っ!!?」
『グギャッ!?』
咄嗟に身を屈ませた私の頭上から落下してきた人影が反応できなかったゴブリンナイトの首を蹴り折る。
「お、武器ゲット。槍かー。まぁ、使ったことないけど、なんとかなるでしょ。お姉さん、危ないから離れててね」
「き、君はいったいどこから?い、いや、それより危ないわ!」
シャツだけを羽織った小柄な少女がゴブリンナイトの槍を拾いヒュンヒュンと確かめるように振り回して残った四体に向かって駆け出す。
『グゲャアッ!!』
「よっ」
二体のゴブリンナイトが同時に左右から突き出す槍を飛んで身を縮めてすり抜け槍を振り抜き、正確にゴブリンナイト二体の首を切り飛ばす。
『グギャッ!』
「ふっ」
着地の瞬間を狙って突き出すゴブリンの槍の棒部分を足で弾き、体勢を崩したゴブリンの首を突き刺す。
『グギャアッ!?』
一瞬で仲間が倒されたのを見た最後の一体は逃走を図る。
「忘れ物だ、よ!」
ヒュンッ!と槍を勢いよく投げると槍はゴブリンナイトの頭部に命中して絶命させる。
「なっ!?」
苦戦すらせずに瞬く間にCランク相当のゴブリンナイト達が全滅したですって!?
この少女は何者なの?
「怪我はない?」
「はっ、誰かは知らないけど助かったわ。ありがとう」
少女に声を掛けられて我に返った私は慌てて頭を下げてお礼を言う。
「お礼ならボクよりかユウに言ってよ」
「ユウ?」
知らない名前に疑問を思い浮かべているとガサゴソと森から気配と音がしてロングソードをそちらに構える。
「ハァハァ!クソ速いなまったく!ぜーぜー」
冴えない雰囲気の男性が額から汗を流しながら膝に手をついて息切れをしていた。
「ストレージっと。ユウ、魔物の死体回収したよ」
「はぁはぁ、さ、流石抜け目がないな。ふーふー、さて、そこのシスターさん。お願いがあるんだが、いいか?」
「わ、私か?まぁ、君達には助けられたが、私にできることなら……」
貴重なアイテムボックス持ちの少女を引き連れているこの男性はなんだ?少女の様子から奴隷商人には見えないし、冒険者みたいな雰囲気はないけど。
「あー、なんだ……予備の着替えとか、ないか?」
「……着替え、ですか?」
警戒する私に向かって男性は困ったように意外な要求をしてきた。
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「わー!一度、修道服って着てみたかったんだよね!」
たまたま予備で持っていた修道服を渡すとテントをアイテムボックスから取り出して着替えた少女リゼが出てきてクルクルと回り楽しそうに笑う。
「身長的に少しブカブカかもだけど大丈夫かしら?」
「ちょっと動きにくいけど、大丈夫だよ!あ、でも胸元はかなりキツいからちょっとツライかも?」
「……え?」
ムニュムニュとパツパツに張った胸元を触りながらそう言うリゼと私の胸元を見比べる。
ズン
チョン
「11歳に……発育で負ける……私って……」
軽い自己紹介でリゼの年齢を聞いている私は世の理不尽さに心の中で涙する。
〜???side out〜