水浴びのお約束
「お?本当にあったな」
そこそこ大きい湖の水面に月明かりが反射してなかなかに幻想的な雰囲気を感じるな。
「よっと」
「ちょ!?ま、待て待て!」
気軽な口調でボロボロの上着を脱ごうとすりリゼルーナに慌てて静止する。
「ん?どうかしたの?」
「どうかしたの、じゃねぇよ!俺がいるだろが!羞恥心とかねぇのか!?」
「ユウなら好きなだけ見ていいよ?それとも……はっ!?まさか、小さいのがいいの!?その好みに合わせるにはちょっと難しいかも」
「違うわ!俺はロリコンじゃねぇよ!!」
自分の胸部を持ち上げた後、驚愕の表情を浮かべるリゼルーナに思わず叫ぶ。
「……はぁ、もういい。俺は見張ってるから、ささっと済ませろ」
「ふふ、はーい。気が変わったら入って来ていいからね?」
後ろに振り返って手頃な巨石があったのでソレに背を預けて座る俺の背後からそんなふざけた台詞が聞こえてきた。
パシャパシャと背後から聞こえてくるせいで余計な想像を頭を振り追い出して、大きく息を吐き夜空の月を見上げる。
……色々あったが、リゼルーナに出会えたことは幸運だったな。
わざとふざけたことを言って場を温めてくれてることくらい分かる。
優しく気が利き、ドラゴンを倒せるくらいに強く、容姿も間違いなく人生で出会った中でトップクラスだ。
……正直に言えばめちゃくちゃタイプだ。
好意が分からない訳じゃないから、正直一緒の水浴びは迷った。だが、それをしたら理性が保つ気がしなかったからな。
「さて、それはさておきこれからどうするか」
目を閉じて今後の計画を考える。
幸いリゼルーナがいるから元奴隷だとしてもある程度は知識はあるだろうから助かるな。
街に行ってドラゴンの素材を換金して身の回り品を揃える所まではしたいな。リゼルーナに関しては本人にどうしたいか聞くとするか。
「湖なら魚くらいいるかもーーん?」
目を開けると目の目と合いお互いにパチパチと瞬きをする。
つぶらな瞳の大きな熊だな。はは、異世界でも熊っているんだな?
「熊っ!?うぉっ!!?」
慌てて熊に背中を見せずに巨石を背に移動するが、湖の端から足を踏み外して盛大に湖に落ちた。
バシャン!
「ん?ユウ、どうかしたの?」
「どうかしたの、じゃねぇ!アレだ!アレ!」
水面に顔を出した俺を見て何故かのんびりした口調のリゼルーナに俺は熊を指差しする。
「ん?あぁ、サイレントベアーのこと?確かに気配は掴みにくい魔物だけど人に危害を加えない安全な魔物だよ?最初からいるの気づいてたし」
「知ってたのかよ!?先に言……」
背後に振り返り、言えよ!?と叫ぼうとした俺は言葉を失う。
当たり前だが、水浴びをするのに服を着たままする訳はなくリゼルーナは産まれたままの姿で水浴びしていた。
銀色の月明かりが、その上半身を照らし出してい血や泥で固まっていて色さえよく分からなかった短い髪が今はサラサラの水色の毛先から水が滴り、そのせいでよく見えてなかった切長の紫の瞳が優しく俺を見ていて、水を弾く健康的な白い肌に、時より強調されていた豊かな胸部が先端まで露わになっていて、あの自称女神よりも美しい光景に目が釘付けになる。
「フフ、そんなに見たかったの?なら、最初から一緒に入ったら良かったのに」
「……あ、す、すまん!悪かった!の、覗くつもりはなかったんだ!」
まったく身体を隠さずに前髪を払いながら笑うリゼルーナの言葉に我に返った俺は謝罪しながら後ろを向く。
「あ、今の可愛い顔好きだったのに。じっくり見させてよ」
「ちょ!?馬鹿!やめろ!くっつくな!」
俺の顔を覗きこもうとリゼルーナが背中に抱き付くと柔らかい感触が形を変えて伝わる。
「えー、何でなの?」
コイツ!明らかに分かってやってるな!?
挑発するように更に身体を密着させてくるリゼルーナに振り返った俺はリゼルーナの両肩を掴んだ。
「おい。俺は男だから我慢しないぞ」
「……うん……ボクだって11歳なんだからそれくらい分かるよ……ユウなら……いいよ?」
顔を近づける俺にリゼルーナは察してそう言いながら目を閉じた。
…………ちょっと待て。
吐息を感じる距離でギリギリ顔を止める。
「……聞き間違いか?何歳って言った?」
「へ?11歳って言ったけど?」
「はい。アウトォォォォォォォォォォォォッ!!」
俺が社会的にな!!
11歳に欲情するとか俺はロリコンだったのか!?
いや、俺はロリコンじゃねぇ!!