リゼルーナ
少し短いですがキリがいい場所だったので。
「っ!!」
はは、ドラゴンに喰われるとかどんだけ痛いのか知らないが出来れば即死したいもんだなと思って目を瞑る。
『グギャアァァァァッ!?』
なんだ?なんか痛そうに叫んでやがる?
不思議に思い目を開けると目の前に居たのは完全に壊れた剣を片手に持つ小柄な女いやリゼルーナと自分の口を抑えて暴れるドラゴンだった。
「まさか……お前の仕業か?すまない。助かっ「ユウ!!!」うぉっ!?」
助かったと言おうとして被せるように前を向いたまま叫ぶ音量の大きさにビックリして声が漏れる。
「何が好きにしろ、だよ!しかも、いい女が死ぬのが我慢ならねぇだけだってカッコつけすぎじゃないかな?」
「やめろぉぉぉぉぉぉっ!わざわざ蒸し返すな!」
「クスッ、まぁでもホントカッコ良かったよ。うん。アレは惚れたね」
そう言ってチラリと振り返った顔は笑顔だった。
「……」
思わず見惚れるくらい魅力的な笑顔に固まっていると。
『グオォォォォォォッ!!』
明らかに怒髪天なドラゴンが標的をリゼルーナに絞り、その巨大な爪で八つ裂きにしようと振り上げていた。
「リゼルーナ!逃げろ!」
壊れた剣では戦えないと判断した俺がそう叫ぶ。
「逃げないよ。だって、好きにしろって言ったじゃないか。だから、好きにするよ!」
バッと身を屈めて爪を避けたリゼルーナは持っていた剣を捨てて何か拾い地面を蹴って跳躍し、ソレを両手でドラゴンに向かって振り下ろす。
「落ちていたから返すね!」
ザシュッ!
『グォオオ……ォォ……』
リゼルーナにへし折られた牙を額に深々と突き刺されたドラゴンはドスンと倒れた。
「……や、やった……のか?」
しかし、バタンとリゼルーナが地面に倒れる。
「リゼルーナ!?おい!しっかりしろ!どこをやられた!?」
慌てて駆け寄り抱き起こす。
ぐーきゅるるる
「……おなか……すいた……」
「紛らわしいわ!!!」
忘れてた!そういや、絶食中だったな!
俺は慌てて食べれる果物や木の実がないかを探しに森に入って行く。
「ふぅー、生き返ったー」
野苺みたいな果物とりんごみたいな果物を見つけた俺はソレをリゼルーナに渡すと一心不乱に食い尽くした。
「お、おう、もう大丈夫なのか?」
生憎、狩りの経験なんてないから野生の兎や鹿などを狩ることもできなかったからな。まったく何も出来なくて悔しいな……。
「ーーそんな事ないよ」
「え?」
思わず下を向いていた俺は顔を上げると笑っているリゼルーナが俺を見ていた。
「言わなくても何を考えている分かるよ。どうせ何も出来ないとか考えていたでしょ?」
「……そんな分かり易いか?」
ペタペタと自分の顔を触る。
「ユウが居なかったらボクはとっくに死んでいたし、こうやって自由にもなれなかったんだよ?だから、誇っていいんだよ」
「あ、あぁ、その……ありがと、な」
見ていられなくなり、顔を背けながら礼を言う。
「……アレはどうするかな」
アレとはドラゴンの死体である。リゼルーナによれば、なかなか貴重な素材になるらしいが持ち運ぶなんて論外だぞ。
「あ、それなら任せてよ!ストレージ!」
リゼルーナが手を翳すとドラゴンの死体が光出して消えた。
「なっ!?き、消えた、だと!?」
「ふふーん!ボクはアイテムボックスのスキル持ちなんだよ!凄いでしょ?」
たゆんと一部を強調するように胸を張るリゼルーナ。
……いやいや、マジで何者だコイツ?
少なくともドラゴンを倒せる実力に恐らく貴重なアイテムボックスのスキル持ちなんてただの奴隷な訳はないよな?
「くんくん……あっちから水の匂いがするから行ってみようよ。水浴びしたかったんだよね!ほらほら!」
「ちょ!?引っ張んな!分かった!分かったから!」
転けそうになり叫びながら、俺はひとまず疑問を仕舞い込み歩き出す。