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うさぎの里  作者: かに
6/8

だい6羽 ガソダーラ

挿絵(By みてみん)

「おはうー」

「おはうううううううううううううううううう!」

うさぎの里に朝がやってくると、うさぎたちは挨拶を交わします。

『おはうー』とは、人間で言う「おはようございます」にあたります。

うーがうさぎの兎であることは言うまでもありません。


「やーにやにやにやに」

「ん?」

「やーにやにやにやにやにー」

「セミの鳴き声にしては変ずらね」


どこからともなく聞こえてくる、なぞの鳴き声にうさぎたちは驚きました。

しかし、意外にも鳴き声の主は一羽のうさぎでした。


「ちゃばこちゃばこちゃばこー! ちゃばこを吸わねばー! うさうさうさ! ちんじゃうー!」

そのうさぎは叫びながら苦しそうにのたうちまわっていました。


ちなみにちゃばことは、火をつけて吸うと気持ちよくなれる巻物のことであり、いわゆる人間でいうこところのタバコです。

しかしながらうさぎの里にはちゃばこがありません。


「が、ガソダーラに行けば……」

ヤニ切れうさぎが呟きます。


ガソダーラとは、夏には冷房冬には暖房が効いていて、野菜から唐揚げ焼そばにアイスやスナック菓子まで置いてあり、さらには日用品から漫画まであるという二十四時間フルオープンの夢のような場所なのです。

ええと、人間でいうところのコンビニというものです。

もちろん、ガソダーラにはちゃばこも売っています。


うさぎがちゃばこを手に入れるには、時折人間が捨てていくものを回収するしかないのですが、中にはコンビニや自動販売機でこっそりちゃばこを買っているうさぎもいるとかいないとか。


「うー!! だんだんうー!!」

ヤニ切れうさぎはうさぎ伝統芸能のひとつである、怒りの音頭「だんだんう」を繰り出しました。『だんだんう』とは、うさぎ特有のうーという鳴き声と同時に、後ろ足を左右同時に地面にダンダンと二回叩きつけ、怒りを表現する仕草です。


「だんだんうが出始めたか、そろそろ限界だに」

その様子を見た周囲のうさぎが、小銭を持ち寄ってヤニ切れうさぎに渡しました。

禁断症状を抑えるには、もうちゃばこを買ってくるしかありません。

ヤニ切れうさぎは無言で小銭を受け取り

「行ってくる、哀の国ガソダーラへ」

決意を固めると、小銭を握りしめ、とっとことうさぎの里の外へ駆け出しました。


里の外にあるもっとも近いコンビニ。

人間界でいうところのド田舎にあり、ここの店舗は目の悪いおばあちゃんがほぼワンオペで働いているというということも、うさぎたちは知っていました。


「ちゃばこを手に入れるには、ここしかない!」

ヤニ切れうさぎは他に人の気配がないか注意深く確認すると、意を決したように

「うさぎも吠えるっちーーーー!!」

という掛け声とともにコンビニの自動ドアを開けました。


♪といれをかりーてすぐにでるー♪というメロディが流れたあと、店の奥から店主のおばあちゃんが姿を現しました。

「おや? だれかきたとおもったんじゃが」

おばあちゃんが店の中を見渡しても、人の気配はありません。

が、よく見るとレジの横に「83ばん」と書かれた紙とタバコ代の小銭が置かれていました。

「ああ、たばこね。えー、はちじゅうさんばん……と」

おばあちゃんが奥の棚から83番のタバコを出してきてカウンターに置くと、瞬きするようなスピードでヤニ切れうさぎはちゃばこを回収し、店の外へ駆け出しました。

「おやおや? なんだったのかねえ?」

おばあちゃんは首をかしげましたが、きちんと代金を受けとったため特に気にはしませんでした。


こういった人間界に起こる不可思議な現象についてうさぎ研究家に尋ねると、必ずお決まりのある言葉が返ってきます。


「それはね、うさぎたちの仕業ですよ」

と。

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