だい4羽 カエルの恩返し
うさぎの里にある湖の畔。
「うさぎもごもご、にもごもご。あわせてもごもご、むもごもご」
一羽のうさぎが早口言葉の練習をしていました。
その横を、蟹がシャカシャカシャカと歩いています。
蟹は時々立ちどまり、泡でシャボン玉を作って空に巻き上げて遊んでいるようでした。
「はあ、カニはのんきでいいうさね。なにも考えなくて、ぼーっと遊んで生きてるうさ」
うさぎは呆れながら、蟹を見つめました。
「ん? あれはなにうさ?」
ふと、視線を湖にやると、一匹のカエルが溺れかけているではありませんか!
「た、大変うさーー!!」
どうやらこのカエルは、カエルなのに泳ぎが得意ではないようでした。
その横を、素知らぬふりをして蟹が走り去っていきます。
うさぎがそれもみて ちっ と舌打ちをしました。
「なんてかにうさ! カエルが溺れているとうのに、さっさと逃げるなんて!」
うさぎはかにが頼りにならないと悟ると、急いでカエルを助けに湖に飛び込みました。
「い、いまたすけるうさーー!!」
うさぎが果たして泳げるのか? その疑問は尽きないですが、少なくともこのうさぎはカエルを助けたい一心で犬かきならぬうさカキで懸命に泳ぎました。
うさぎはなんとか湖から引き揚げたカエルを大事に抱えながら、家に連れて帰りました。
「カエルさんカエルさん大丈夫うさ?」
うさぎは懸命に虫の息のカエルを優しく看病しました。
しかし、翌朝カエルはうさぎの前から忽然と姿を消したのです。
「カエルさん、どこにいったうさ?」
うさぎは首をかしげなら、元気なったのならいいかと農作業に出かけました。
夕方、うさぎが仕事から帰ると、昨日助けたカエルが家の前に立っているではありませんか。
「わたし、昨日助けていただいたカエルです。お礼を申し上げたくて。これを受けとってください」
カエルは大きな風呂敷をうさぎの前に差し出しました。
「これは……!!」
なんと、風呂敷の中から黄金のシュレッダーが出てきました。
「あ、あなたは……なにものうさ?」
「わたしは、カエルの王子。たすけてくれて、本当にありがとう」
「カエルさん……」
そういうと、カエルはどこかに帰っていきました。
うさぎはしばらく呆然とカエルを見送ったあと、名前入りの伝票や支払い表などを貰いたての黄金のシュレッダーに次々と食べさせました。
シュレッダーはウインウインと働き、紙の伝票を次々とマイクロチップ片に変えていきます。
うさぎは満足気に粉砕された紙片を見ながら上機嫌で鼻息をぷーぷーと鳴らしました。