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マリアの旅  作者: Daisuke
2/2

受容するということ。

第一話:生きていくためには


マリアは、今日もそのきれいな金髪をはためかせながら白狼に乗り、移動していた。


「ジャック、そこの水辺でおりましょう。」


ジャックは、マリアが指をさした周辺の地面に着地すると、マリアはさっそうとジャックの背から降りると、水を汲みにその水辺へと近寄った。

そして、マリアが腰をかがめて水を救おうとしていると、一匹の虎がやってきた。

 そのトラは、最初こそマリアの存在に気づいていなかった。マリアは、気づかれる前にその場を静かに立ち去ろうとした。しかし、その足元にあった小枝を踏んでしまい少し音を立ててしまった。

 その音にトラが気付く。トラは、すぐに襲い掛かってくるかとも思われたが、こちらをずっと見ているだけであった。

 マリアは、ジャックが怪我をする可能性を考慮してジャックに助けを求めるか、その場で剣を『作り』戦うかの二つの選択肢を持っていた。

 しかし、トラは動かない。

 マリアは、自分を作った男の言葉を思い出す。『相手がどうであれ、受け入れることが大事である。』の言葉だ。きっとその言葉をこういう場面に当てはめるならば、私は、そのトラが私を襲ってきても来なくても、本来の目的である水汲みをするべきだということだ。

 マリアは、意を決したようにまたかがんで水を汲み始めた。水袋を水につけて、水袋の中の空気と交換に、水袋の中に水が入るタプンタプンという音がその場に静かに響く。

 トラはその音を少し気にしているよウだったが、終始、襲ってくることはなかった。

 トラが来たら、逃げる。それは、襲われるから、いや、襲ってこない可能性があったとしても、万が一襲ってきた場合に殺されてしまうからだ。

 私は、殺されてしまうかもしれないリスクを負って、あのトラは襲ってこないということを理解した。

 受容するということは、そういうことなのかもしれない。

 マリアは、水袋から音がしなくなり、水を補給するという何もしない時間が終わりを告げたことを知ると、その場を立ち去るためにジャックの元へと歩みを進めた。

 その時だった。

 いままで、見ていただけだったトラは、マリアが自身に背を向けたところを狙っていたのか、猛烈な勢いで襲い掛かってきた。

 それは、まさに自然界のスピードというものであり、既にトラの猛威はマリアの背中に届きそうになっていた。

 しかし、その爪がマリアに届くことはなかった。

 トラは、マリアの隣を通り過ぎるとそのまま地面に倒れ伏した。

 マリアの右手には金色の剣、そしてその剣先には血が滴っていた。

 

 「トラは、背を向けるまでは襲ってこず、背を向けた瞬間に襲ってくる。私は、あなたから逃げないというリスクを受容して、そうあなたを理解しました。しかし、あなたの爪は受け入れることはできません。しかし、これは生きるもの同士の結末ならば、私は、私自身をあなたを鏡として理解できるかもしれません。」


 アリアは、びくともしないトラにそう告げると、右手に持った金色の剣を左手につけた。

 そう、彼女は自由自在の液体金属の体でできているため、体の一部を武器として使用することにしているのだった。

 彼女が、武器を持たないのは、自身が武器になりえるからだった。

 自分という意思の存在と武器という一つの目的に沿った存在、その二つが一つなのも彼女が、人を理解しようとするゆえんなのかもしれない。


 「ジャック、食べる?」

 

 マリアがそういうと、ジャックはトラの死体を食べ始めた。


「たとえどんな命であろうとも無駄になることのないように、これもあなたの死を受け入れるということなのでしょうか。」


 マリアは、ジャックが食事をしている間にそうレコーダーに吹き込んだ。


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