第70話 エイダと宗平(そうへい)
───〈王宮大露天風呂〉──
「……少し、身体が痛いが、徐々に引いてきたな……」
宗平はグイッと背伸びをしてストレッチし、大浴場の風呂に入浴する。時間帯は深夜、途中で起きて目が冴えてしまった為、皆が寝静まった後にこっそりと足を運んだのだ。思わず声を漏らしてしまう程の良い湯加減だ……全身の痛みが徐々に融解されていくように癒されていく。
みんなには、心配をさせてしまったな……現実世界では、あんなにがむしゃらになれなかった。あの頃の自身はもっと気弱で、臆病者で、何も出来ない自分だった。けど、今は……。宗平は頭の中、色々と考え事をするのである。確かに自分の行動で状況を悪くしてしまったり、時には復旧作業、今日は命の危機すらある救出活動もした。自分の行動力が実った結果だが、それを作ったのはアリシア、エイダ、リア、ニィーの皆と関わった事により、自分は変わったのかもしれない。
「宗平か?……」
湯気の向こう側から、声が聞こえる。その声に聞き覚えがあり、宗平は察した様子で声の方に視線を向ける。
「その声、エイダか?」
宗平は尋ねる。
「この時間帯に……身体は大丈夫か?」
全身タオル姿のエイダは、宗平の隣に寄り沿う。
「何とかね……この通り……」
宗平はグイッと腕を上げ、元気をアピールする。あまり休み過ぎると身体が鈍ってしまう為、早く働きたい気持ちもある。
少し間を開き、エイダは口を開く……。
「自分も、たまには一人で大浴場に入りたくなるのでな……お前はアレか、もしかして、誰かが入って来ることを予想して……」
エイダは途中でムッと険しい表情を浮かべる。いつものおっかない表情のエイダに宗平は困惑しながら。
「いや、それは違う……寝てばかりで疲れたから、その……」
宗平は頭をボリボリと掻き、口下手なセリフで答える。彼女の事は嫌いではないが、エイダに対しては変に緊張感があり、思わず口下手になってしまう。クスっと笑みを浮かべ、エイダは口を開く。
「……お前、口下手は相変わらずだな……」
エイダは、少し呆れた様子でダメ出しの言葉。そこだけは変わらないのは、宗平の良い所かもしれない。
「それは、すいませんね」
宗平は頭をポリポリと掻いてタメ息を吐く。しかし、口下手なのは生まれ付きなのでそれは仕方ない。
「けどな………私はそんな貴様も、好きだぞ」
「えっ?」
エイダの言葉に、宗平はおもわビックリしてしまう。
「勘違いするな、異性としてではなく、人間としてだな………」




