宗平(そうへい)が異世界に来る3時間前
王宮会議室にて。
(………)
エイダは苦い表情を浮かべ、会議テーブルに5枚の書類をバサッと投げ置いた……。自分、いや、全ての人間にはどうする事も出来ない状況だった。
「また、人が死んだのね……」
リアは悲しい表情を浮かべ、重い声を上げる。
「そうだ……これが死亡者リスト、今日1日でこの人数だ。この世界から男がいなくなって、戦う者がいなくなって、女だけになってから、モンスターによる襲撃による死亡事故がほとんどだ……。それだけではない、男がなくなった今、子孫繁栄すら、出来ない……」
エイダは会議テーブルにドンッと両手を置き、うつ向く。
「エイダちゃん……」
リアは悲しく眺める。
「王国医学協会に連絡して医療用の男性遺伝子があるか調べさせたが……」
「まさか……」
リアは最悪な予感。冷や汗を流し、息を飲む。
「無くなってたよっ!!盗まれたりではなく、腐ったではなく、消えていたッ!!綺麗さっぱりになッ!!」
エイダは恐れ、怒鳴り、そして会議テーブルに座って頭を抱え、そして……アルタニア王国だけではない、世界中同じ状況である。男性が世界から消滅したのは10年前、最初はとある国から1人、10人、そして消滅活動は流行し、世界から男性は消滅。
「この事を王女に伝えるのは?」
リアは尋ねる。
「そんな事……アリシア女王陛下は15歳だ。世界の滅亡を受け止められる年齢ではない。こうなったら、他の動物の遺伝子をつかって、それを交配して……」
「何を考えてるのッ!!そんな禁忌を許す事を市民に公表したら、暴動が起きるわよッ!!」
「ならどうすれば、良いんだッ!!」
エイダは立ち上がり、どうしようもない現実にやり場の無い恐怖に怒鳴り声をリアに浴びせる。人間と動物の遺伝子の交配による子孫繁栄、冷静であったら、まず思い付かない。
1分……2分……3分……。
沈黙が会議室を支配する。互いの額から汗をポタポタと滴らせ、緊迫な様子が広がり、もはや自分達ではどうする事も出来ない。このまま、人類の滅亡を待つのみである……。
───衝撃音が城内に響き渡る……。 場所は城の大広間、天井、壁からは細かいホコリがパラパラと充満し、何が起こっているのか分からない……。何者か、モンスターによる襲撃か……。
場所は王宮大広間。
「何ごとじゃ?」
大広間の2階からは、アリシア王女が駆けつける。大広間の中央、床には衝突跡が残り、そこには学生服を着用した男性が気絶していた。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
息をしている……まだ、学生服を着た男性は生きている。