第47話 名前はニィー
───ガチャ……と、出入り口の扉が開いた……。入って来たのは、紫の貴族ドレスを着用した女の子。褐色の肌、ボサボサから艶やかに理髪された茶髪、正体はトロールの巣窟から保護した女の子である。隣には、世話係の穏和なメイド。
「ほぅ……」
エイダは腕を組み、貴族ドレスを着用した女の子の姿に感心した声。
「あらあら……」
リアは、女の子の姿に惚れた声。
「アレ、君は?」
宗平は、女の子の正体が分からない様子。高等技術でメイクアップされていて、もはや別人である……。ちなみに世話係のメイドは、陛下直属のメイドであり、男性が存在していた頃は、国王陛下の世話係をしていた。
「お兄ちゃんッ!!」
女の子はダッシュし、宗平に抱きついた。
「うわっ!!」
女の子に抱きつかれ、思わず宗平はビックリして声を張り上げる。
「お兄ちゃんッ!!お兄ちゃんッ!!」と、女の子は元気に喜ぶのである。
「君か?外見が大きく変わっていたから、分からなかったよ……」
宗平は正体に気付き、女の子の後頭部をヨシヨシと撫でる。妹みたいで、何か可愛い……これが、妹萌えって奴か……。
「お兄ちゃんッ!!」
「凄いな………言葉まで覚えるようになったのか?」
宗平は、女の子の成長に感心する。
「お兄ちゃんッ!!」
(ん……アレ?)
宗平は、少女の可愛らしい発言に何か違和感を感じた。
「お兄ちゃんッ!!お兄ちゃんッ!!」
女の子は同じセリフを吐き出している。
「あの………もしかしてリア?」
宗平は、リアに怪しい視線を向ける。確か、女の子の教育はリアがしていたのだが……。
「何でしょう?」
リアは何気ない様子で応じる。
「何か同じセリフしか言わないのだが?」と、宗平は聞いてみる。
「だって、お兄ちゃんって言うセリフ、宗平さんが喜ぶと思いまして……」
リアはクスクスと、イタズラな様子で言った。
「次は、違う言葉も教えてあげて下さい」
宗平は頼む。何度もお兄ちゃんと呼ばれたら、何か嫌になるから、そして怖い。
「ニィーッ!!」
女の子は、宗平を呼ぶように視線に向き、声を上げる。
「どうした?」
宗平は見つめる。
「ワタシ、ニィーッ!!」
女の子は天真爛漫な声を上げ、言った。
「その子の名前は、私が考えました……」
リアは言った。名前が無いのは可哀想だから、ニィーと言う名前が呼びやすく、可愛い名前だからだ。
「そうか……よろしくなニィー」
宗平は、ニィーの頭を撫でる。
「ニィ~~~~………ニシシシ」
宗平に撫でられて嬉しかったのか………ニィーは笑みを浮かべている。




