第40話 女性の名前はプリシア
「あらあら……」
女性は涙を流す宗平に親身に駆け寄る。
「すいません、これには……」
宗平は、涙を払う。しかし、様々な感情が溢れ、辛い過去、この世界に来て、そして自分のせいで町の人から嫌われ、やり場の無い感情が爆発したのだ。しかし、何度も涙を払っても流れて来て止まらない。
何か勘違いをしたのかエヴァンは申し訳ない様子を浮かべる。
「あの、横取りしようとしてごめんね……ア、アップルパイ、食べますか?」
エヴァンは泣いている宗平を心配事し、アップルパイをカタッと差し出す。泣きたくなる程、美味しかったのか……と、思っている。
宗平はゴシゴシと涙を払い、爆発した感情を少しづつ、押さえようとする。
「え……どうすれば?」
エヴァンは困惑する。もしかしてアップルパイが嫌いなのかな……。
───そして、数十分後………。
「落ち着きましたか?」
女性は尋ねる。
「はい、迷惑かけてすみません。その実は……」
宗平は頭を下げ、エヴァンと女性には自身がこの世界に来た事、次に失態、町の人達からの評判を正直に説明した。もしかしたら町の人のように嫌われるかも知れない……けど、嘘はつきたくない。女性は宗平の説明を真摯に受け止め、頷く。
「そんな事が……」
女性は納得。城下町が騒がしかったのは、それが原因だったのね……。
「ここは大丈夫ですか?見たところ、襲撃された跡は無さそうですし……」
宗平は家中を眺め、尋ねる。
「心配はいりませんよ………ここの土地全体にはモンスターが侵入出来ないように、結界魔法を展開しているので、入って来られませんから……」
女性は説明する。するとエヴァンは………。
「師匠は、賢者クラスの魔法使いなんですよ。私に魔法のイロハ、魔法だけではなく、色々な事を教えてくれたんですよ……」
エヴァンは笑って説明する。師匠は魔法使いの中でも最高位のレベル、賢者である。
「ちょっと陽気で疲れる所はありますけど、エヴァンちゃんはとても優秀な魔法使いよ、これからも仲良くしてちょうだい……そう言えば、あなたの名前を聞いてませんでしたわ……」
女性は言う。そして尋ねる。
「自分の名前は、山下宗平です」
宗平は自己紹介する。
「私はプリシア………宗平さんがもし、よろしければ、お母様と呼んで頂いてよろしいですことよ……」
プリシアは冗談半分で言った。プリシアの言葉に宗平は………。
「いや、さすがにそれは……」
と、思わず宗平は困惑しましまう。初めて会った人にお母様と呼ぶのは、正直……。




