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F・F 異世界の神になった少年の話   作者: やませさん
パート2
35/153

第27話 ぜったいぜつめい




 女の子の声に思わず振り向いたら……。


「へっ?……」


 宗平そうへいは思わずマヌケな声を出す。いつの間に……背後にはトロールが立ち、威圧的にジロッと見下ろしている。宗平そうへいとの身長差は、説明するまでもない。


───グルルルルッ!!


 トロールは、グイッと太い両手を伸ばし、宗平そうへいの両肩を掴み、持ち上げる。


「うわっ!!待って、止めてくれッ!!」


 宗平そうへいは必死に訴え、ジタバタと暴れる。しかし、トロールの腕力によりビクともしない。ガッチリと身体全体を掴まれ、動けない……。まるで、赤ちゃんの高い高いの状態である。


───グルルルル……。


 トロールは宗平そうへいをジロジロと眺める……。そして数秒後、ガバッと大きな口を開かせ、宗平そうへいに定める。トロールの口の中は臭く、腐った野菜、腐った肉、腐った魚……ありとあらゆる食べ物などが混じり、そして脂っぽく、酸っぱい臭いが強烈に広がるのである。


 クサッ……こんな奴に喰われて……。


「うわーーーーッ!!助けてくれ、止めてくれ、死にたくなーーーいッ!!」


 宗平そうへいは、必死に抵抗する。言うまでもないが食べるつもりである……。宗平そうへいを見たトロールは、美味しそうだな……と、判断したらしい。やはり俺は死ぬのか?……。現実世界では不遇な人生で生涯を終え、次に知らない世界でクサくて気持ち悪い変な生物に捕食され、生涯を終えるのだろうか……。

 

「ニィーーッ!!」


 女の子はトロールに駆け寄り、止めて、止めて。と、叩く。しかし……。


───ウォンッ!!


 トロールはうるさいと言わんばかりに女の子をドンと、蹴り払う。トロールに蹴飛ばされた女の子は1回2回と地面に叩きつけられ、気絶してしまう。女の子の力ではトロールに痛くも痒くもない。


 すまない、エイダ、リア、アリシア……俺には、この世界は……救えない。

 

───ッ!!


 洞窟全体に爆破のような衝撃音が響き、パラパラと砂塵がこぼれ落ち、砂煙が充満する。


───ウォッウォッウォッ?


 トロール達は衝撃の音にビックリし、宗平そうへいを食べようとするトロールも手を止め、辺りを眺める。


───ッ!!


 それは宗平そうへいの所まで飛んできた。地面に転がり、それの正体はトロールの無残な死体………顔にはアザ。身体中の至るヶ所には無数に陥没した傷が残り、ピクピクしていた。


「待たせたの……」


 そして洞窟内の広地全体に声が響き渡る。それは希望の声、奇跡の声、神様の声。例えたらキリがない。


 この声は……。


(助かった……)


 宗平そうへいは、向こう側の出口にいる正体を眺め、安堵の表情を浮かべるのである。


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