第27話 ぜったいぜつめい
女の子の声に思わず振り向いたら……。
「へっ?……」
宗平は思わずマヌケな声を出す。いつの間に……背後にはトロールが立ち、威圧的にジロッと見下ろしている。宗平との身長差は、説明するまでもない。
───グルルルルッ!!
トロールは、グイッと太い両手を伸ばし、宗平の両肩を掴み、持ち上げる。
「うわっ!!待って、止めてくれッ!!」
宗平は必死に訴え、ジタバタと暴れる。しかし、トロールの腕力によりビクともしない。ガッチリと身体全体を掴まれ、動けない……。まるで、赤ちゃんの高い高いの状態である。
───グルルルル……。
トロールは宗平をジロジロと眺める……。そして数秒後、ガバッと大きな口を開かせ、宗平に定める。トロールの口の中は臭く、腐った野菜、腐った肉、腐った魚……ありとあらゆる食べ物などが混じり、そして脂っぽく、酸っぱい臭いが強烈に広がるのである。
クサッ……こんな奴に喰われて……。
「うわーーーーッ!!助けてくれ、止めてくれ、死にたくなーーーいッ!!」
宗平は、必死に抵抗する。言うまでもないが食べるつもりである……。宗平を見たトロールは、美味しそうだな……と、判断したらしい。やはり俺は死ぬのか?……。現実世界では不遇な人生で生涯を終え、次に知らない世界でクサくて気持ち悪い変な生物に捕食され、生涯を終えるのだろうか……。
「ニィーーッ!!」
女の子はトロールに駆け寄り、止めて、止めて。と、叩く。しかし……。
───ウォンッ!!
トロールはうるさいと言わんばかりに女の子をドンと、蹴り払う。トロールに蹴飛ばされた女の子は1回2回と地面に叩きつけられ、気絶してしまう。女の子の力ではトロールに痛くも痒くもない。
すまない、エイダ、リア、アリシア……俺には、この世界は……救えない。
───ッ!!
洞窟全体に爆破のような衝撃音が響き、パラパラと砂塵がこぼれ落ち、砂煙が充満する。
───ウォッウォッウォッ?
トロール達は衝撃の音にビックリし、宗平を食べようとするトロールも手を止め、辺りを眺める。
───ッ!!
それは宗平の所まで飛んできた。地面に転がり、それの正体はトロールの無残な死体………顔にはアザ。身体中の至るヶ所には無数に陥没した傷が残り、ピクピクしていた。
「待たせたの……」
そして洞窟内の広地全体に声が響き渡る。それは希望の声、奇跡の声、神様の声。例えたらキリがない。
この声は……。
(助かった……)
宗平は、向こう側の出口にいる正体を眺め、安堵の表情を浮かべるのである。




