───ある少女の昔話
───むかしむかし、1人の小さなお姫様がいた。
アルタニア王国の陛下である父、いつも豪快で民を思い、優しい父親であり、国民からも頼られ、隣には王妃の優しい母君がいて、いつも明るかった。
そして、2人の兄君の王子がいた……。
───待って、お兄ちゃん
城の庭にて小さなお姫様は、2人の兄達の背中を追いかける。
小さい頃は、いつも遊んでくれた兄達、姫様は大好きだった。兄達は父から国や民について、色々と学び、やがては次期国王になり、民を導いていくのであろうと、そう思っていた……。
───〈国王陛下の私室〉───
「何故、我の言う事が分からないッ!!」
国王陛下はテーブルをドンッと叩き、王妃に怒号を響かせる。
「今のアナタには納得出来ません、軍事力の強化による大幅な増税、徴兵、物資の摂取、このままでは民は疲弊してしまいますッ!!」
母の王妃は訴える。
「民は疲弊しておらぬ、むしろ納得しているッ!!この戦争は、国を守る為の戦争だッ!!ここで止めてしまえば、侵略され、多くの血が流れるのだッ!!」
国王陛下は、必死な様子で声を響かせる。始まりはまず、隣の蛮国シャール帝国が以前にも王国側の領地を越えた数々の軍事訓練、領域の浸入など実施していた。
王国側は、領域侵犯と警告はしたが、帝国側は軍事訓練を実施した領域は帝国東部だと正当化し、主張した。そして数日後……王国西部の村が帝国軍に襲撃され、戦争に発展したのだ。
(父上、母上……)
小さなお姫様は、ドアのスキ間からビクビクと眺めていた。いつも優しかった父上がとても怖かった……何の話をしているのか分からない……戦争がどうか……今の自分には、理解出来なかった。
───そんなある日……。
王国東部にて、男性が消える現象が起こった……現象は伝染し、1人から10人……100人。
そして5年後……。
───〈国王陛下の私室〉───
「父……上?」
小さなお姫様は、服だけ残した国王陛下の痕跡を眺めていた。大好きだった兄達も服だけ残し、消えていた。
世界から男性が消えた日である。
テーブルには、母上が甲高い声で泣いていた。原因は、分からない……これが、小さなお姫様の話である。
───〈アリシアの私室〉───
「父上、お兄ちゃん……ひっくひっく……」
夜の私室にて、アリシアはベッドの上で体育座りし、泣いていた。観衆からヤジを投げられ、激しく傷ついたのだ。心の中は暗闇、見えない何かにグサグサと刺されている精神状態。
アリシア……アリシア……
入り口のドアの外から、宗平の声。




