――――番外編・帰って来た後、叱咤激励の相談
宗平は、城下町から帰って来た後、エヴァンのアトリエに向かう……。
―――――〈evan.of.atelier〉――――
「なる程、陛下にならないかって……」
エヴァンは、魔法の大釜をグツグツと煮込ませ、混ぜ棒をかき混ぜ、魔法の大釜の中、虹色の液体がグツグツと泡を吹き、得体の知れない匂いが充満している。
「そうなんだ……俺は、何て……どうしようかと……」
宗平は真剣な表情。
昨日、大浴場を出た後、アリシアに呼び出され、陛下にならないか……と、打診されたのだ。
理由、自身と共に国や世界を立て直す為、導いて欲しいからだ……。
―――――しっかりと考え、答えを出して欲しい……なお、日時はいつでもよい。と、アリシアは昨日、言っていた。
しかし……肝心の宗平、自分は本当王様になるべき器なのか……と、迷っている。
何せ、自分は王様、ましてリーダー役なんて、やったことないし、責任の強い事は……出来るわけが……。
「やればいいんじゃないんですか?……」
エヴァンは、軽く答えた。
「軽いなっ……でも、俺が王様になったら、今の状況が良くなるか、悪くなるか……」
「宗平さんは、少し自分勝手に物事を考え過ぎだと思いますよ……。アリシアは、陛下に就任した時、毎日泣いていたって、エイダやリアが言っていたし、アナタはアリシアに言いましたよね?周りに相談しろって……」
宗平の優柔不断のセリフに、エヴァンは、珍しく真剣に答えた。
「だけど……俺には王様なんて……」
「ならどうします?断りますか?」
エヴァンは尋ねる。
「やっぱり、そうだな……」
宗平は辞退の意向。
やっぱり、俺には……王様は無理だ。これまで通り、アリシアが女王として……現状維持。
自分がまず、出来るようになってから……。
「貴様は、それで良いのか?」
「私も、宗平さんのセリフに憤りを覚えます……」
「ニィーッ!!」
―――――アトリエに入って来たのは、エヴァン、リア……そして、ニィー。
「みんな……」
宗平は思わず、気抜けた声。
「私は、貴様に失望する……貴様は、この何日間、何を見てきた?」
「宗平さん、私も、エイダちゃんと同じ意見です……」
―――――エイダ、リアは不満な様子で腕を組み、宗平を睨む。
「そりゃ……色々と見てきたよ、落ち込んだアリシアを励ましたり、トロールの退治に行って、その後、町の人から嫌われて……それから、地道に復旧作業の手伝いを……そして、溺れている女の子を助けに行ったり、次は火事になった家からキャサリンを助けに行ったりして……」
「普通の人には、出来ない事をやっている……貴様は気付かないか……町の人は皆、貴様を……」
「みんな、宗平さんに国王陛下になって欲しいって……アナタやアリシアが築く世界を見たいって……」
「けど……俺は頭が悪いし、リーダーシップ何て無いし……色々と失敗するかもしれないし、それに……」
エイダ、リアの言葉はありがたい……しかし、宗平は……。
「しっかりしろッ!!」
エイダは、宗平のお腹に拳を1発。
「私もです……」
リアも拳を1発。
「ニィーッ!!」
ニィーも拳を1発。
「ぐうっ……」
宗平は、3人の拳撃にもん絶……特に、ニィーの1発がかなり痛いし、食べた物が胃袋からゲロゲロしてしまいそう……。
「分からなかったら、私達がフォローしてやるッ!!貴様は、陛下と一緒に国政を務めていればいいッ!!良いではないか、分からなくって、失敗したりしてッ」
エイダはツンっと睨む。
「宗平さん、アナタがこれまで送って来た人生は知りません。けど、今は私やみんな、陛下がいます……」
リアは、手を差し伸べる。
「ニィーッ、宗平、大丈夫、わたし、いる……」と、ニィー。
「私もです……」
エヴァンは、みんなに視線を向き、メガネをクイッと直す。
「みんな……」
宗平の目頭から、大粒の涙がこぼれ落ち、そして拭い払う。
自分は、何て恵まれているんだ……。現実世界では、凄まじい人生だったが、今は皆と共に進み、行きたいと決心した……。
―――――エイダ、リア、エヴァン、ニィー、そしてアリシア……。
愛してる……みんな大好きだ……。




