第9話 読書会
───〈王宮図書室〉───
「何でこんな夜遅くに、貴様だったのか?」
図書テーブルに座り、眼鏡を着用したエイダは1冊の書物を持ち、宗平に視線を向ける。テーブルには1・2・3・4冊の書物を積み上げられている。
図書室内には10メートル位の大型の本棚が数十ヶ所に設置され、天井にはシャンデリア。宗教学、王国史学、文化学、軍事学、国中の多種多様な書物が並び、圧倒的な規模である。
「明かりが気になって、誰かいるかなと……何か調べ物を?」
宗平は尋ねる。
「そうだ……せっかくだから貴様に教えてやる。アリシア陛下の事だ……」
「アリシアの事?」
宗平は、分からない様子。
「陛下はあー見えて、あまり人に頼らない所があるのでな……何と言うか、国の女王としての責任感で、何でも一人で背負い込んでしまうのだ。だから自分も色々と助言が出来るように、負担を減らしたい為だ……」
「しっかりしてるんだな……」
宗平は微笑む。
「陛下は今は元気だが、貴様が来る前は毎日、泣いていたんだ。いずれ訪れる人類滅亡の現実にな……」
エイダは悲哀な表情で腕を組む。
「そうなのか、あのアリシアが?」
宗平は、意外に驚く。
「ま、貴様が来てくれたおかげで、陛下は元気を取り戻した、もちろん私もな……」
「どうもいたしまして……」
宗平は頭をポリポリ。
「誰にも言うなよ……」
エイダは恥ずかしそうに睨んでくる。
「言いません」
宗平は言う。
「お前は本は読むか?」
エイダは尋ねる。
「人並みにはな……俺も付き合っていいか?。2人でいた方が君やアリシアの助言にもなるし、俺もこの世界の事を知りたいし……」
宗平は答えた。図書館は、現実世界にいた頃、家庭内暴力の避難所として、閉館寸前まで滞在したモノだ。もう、目が冴えてしまったから、いくらでも付き合える。
「良いぞ、一緒に読むか?」
エイダは親切な笑みを浮かべ、隣のイスを引いて宗平の席を用意。
エイダの笑顔にドキッとなり、思わず宗平は……
「えっエイダって、笑うの?」
宗平は驚く。
「失礼な、私だって笑うぞッ!!貴様は私に対して何のイメージを持っているッ!!」
ムスッとするエイダ、思わず立ち上がる。
「イメージって……初めはキツそうな感じで、ちょっと怖いなって……」
宗平は頭をポリポリと掻き、エイダから目を反らし、正直に伝える。
「貴様、第一印象でそれは失礼ではないかッ!!私は騎士を仕える身としてだなッ!!」
エイダは宗平に指をビシッと差す。ただ、本人は表情が堅くて、近寄りがたい雰囲気を漂わせる事があると、リアやアリシアから指摘されている為、気にしている。
「あと……」
「何だ?」
「君の眼鏡姿、何か変……」
「貴様ッ!!」
エイダはムキーッと激昂。
フフフ……エイダちゃん、楽しそうね……。
図書室の出入り口前にはリア。宗平さんが来てから、楽しそうね……と、ジャマしてはダメだと思い、静かな足音で立ち去る……。




