第91話 母親として、王族としての試練
───〈王宮・地下闘技場〉───
「あらあら、飲み込まれちゃったわね……」
まるで他人事のような口調。プリシアは腕を組み、魔法映像に映るアリシア達の光景を傍観する。城全体、あらゆる場所に空間の歪みを仕掛け、簡単には行かせない……。
さて、愛娘達はどこに空間転移されるか……ここで立ち止まるなら、その程度の成長だっただけだ。その様子に、宗平は視線を向ける。
「プリシアさん、さすがにコレは……」
プリシアの策略に、宗平は思わず困惑してしまう。自分も拘束されているが、実の娘にこんな事が……。彼女の立場が、やってる事が悪役である。すると、プリシアは口を開く。
「母親として……あえて娘に試練を与える……。王族として、国を導く者として、困難を超えなければ、先は無いでしょう……」
プリシアは真剣なセリフ。いつも母性的な性格であるプリシアさんとは正反対な表情だ。娘達に、若者に試練を与える為、彼女は心を鬼にしている。
「もし、戻って来られなかったら……」
宗平は質問を投げかける。
「その時は、私が女王陛下として復帰し、宗平さんと幸せな日々を送る事にします……」
プリシアはクスッと答えた。城全体を異形化させ、アリシアに試練を与えたのは、少しだけ、これが理由なのは言えない……。
勝負下着は、赤にしようか、黒にしようか……ここは際どいひも付きティーバッグにしようか……。
「ハハハハハ……」
プリシアさんの現実的な言葉に、宗平は苦笑いを浮かべる。そして願う、アリシア達には、早く来て欲しいと願うのである。
「アリシア、小さい頃は可愛かったのよ……。将来は、魔法使いにしようかと期待してたけど、魔法の素質が無くて主人に似た腕力自慢になって……」
プリシアは、少し残念な昔話をペラペラと語る。ちなみに、主人の国王陛下は腕力自慢、豪快な政治姿勢な性格。長男次男は魔法の素質はあり、知力と武力、政治知識は高い。
(親バカ……)
宗平はタメ息を吐き、心の中でツッコむ。
「自分でも思います。しかし、可愛い娘だからこそ、これからの為、あらゆる試練を乗り越える為、私はあえて壁になるのですから……」
宗平の心の声を察し、プリシアは物静かな雰囲気で伝える。
超能力者か………と、宗平はプリシアの勘の鋭さにビックリするのである。彼女の前では、考えている事が全てお見通しなのである。
───そして、魔法映像がアリシア達の状況を映し出す。
おやおや………と、プリシアは魔法映像に視線を向ける。




