第8話 夜の散歩
「ハァ……ハァ……ハァ……」
宗平はベッドから解放されるように飛び起き、目を覚ました。それはかなり嫌な夢、家庭内暴力で気が病み、その後は母が自殺し、挙げ句の最後には灰皿で父親を何度も殴り、殺害した……。寝間着のシャツは冷や汗でぐっしょりと塗れ、気分は悪夢のせいで冴えてしまった。
ちなみに宗平の部屋は地下牢屋から客室に移された。
床全体は高級感なカーペット、華やかな装飾品が使われた気品な大型タンス、鏡台、そして自身が使っている優雅なベッド。まるで、外国の高級ホテルみたいである。泊まった事ないけど……。そして辺りを眺め、考える。
散歩でもするか…………と。
宗平は部屋を脱け出し、散歩。
とりあえず、適当に歩き回る………。万が一道に迷えば、エイダ、リア、アリシア達に聞けばよい。それに思い出したくない過去の話を忘れたい。悔しくて苦しくて、悲しくて……何も出来なかった自分が、あまりにも恥ずかしく情けない。
───〈2階・王宮外廊下〉───
「異世界に来てしまうなんて、信じられないな……」
宗平は腕を組み、王宮内の夜の廊下を散歩。現実世界から異世界に来てしまうなんて、未だに信じられない気持ちである。これは夢、眠ってしまえば元の世界に……と、ならなかった。もし、戻れたとしても、事故死の後になるので考えたら恐ろしい……。
───壁中にはランタンが設置され、廊下中をポツポツと、薄暗く照らしている。お化け屋敷みたい………前から足音が聞こえたら、不気味だ。外廊下にはカーテンが夜風に揺られ、バサバサと音を響かせる。
前、後方の廊下には暗闇が広がり、まるで異世界の入口……異世界にいるのに、暗闇の奥を異世界の入口に例えるのはどうかと……。
しばらく、歩いていた……。
「あれ、明かりが……誰かいるのか?」
宗平は、立ち止まる。
(王宮図書室)の前、出入口の扉のすき間から光がポツンと差し、漏れていた。
誰かいるのだろうか?……。
宗平は図書室のドアの前に歩み寄り、ドキドキと心臓に鼓動を鳴らしながらスキ間から覗こうとする。こんな時間帯、普通なら寝ている時間である……幽霊は、勘弁して欲しい。小さい頃、心霊番組を見て眠れなくなった事を思い出した。
すると、宗平の気配を察したかのように。
「誰だ?」
図書室の中から声。察したかのような声に思わずビクリとしながらも。
「この声は……」
聞き覚えのあるような声に宗平は少し安心感が生まれるのである。そして軽くなった気持ちを胸に、図書室に入る。




