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3:家族

ボクこと前世の名前アザミは生まれ変わって性別が変わってしまった。


必ず前世と同じ性別になるとかその辺り確認していなかったから今更文句を言える状況じゃないが。

自由に生きる。うん、これだよ、性別が変わろうがボクはボクし今後のことは“力”が戻ってから考えよう!

まともに“力”が使えるようになれば大概のことはなんとかなる。


そんな訳で引き続き快適な赤ん坊ライフを送ろう。

無力な状態だと思えば粗相からお風呂にご飯のお世話されるのも恥ずかしくない、恥ずかしくないから。

いやね、ほら、性別が変わったってね、まざまざと分かる瞬間は未だに、ね!


「おや、ツバキ様起きてます?」


起きてぼーっと考えごとをしていたけど意識を戻す。

ツバキ、そうこの世界でのボクに名付けられた名前だ。

なんていうか馴染む、お母さんの名前もオウカだし。ちょっと出来過ぎな気もする、しない?


「おはようございます」


ボクを覗き込むのは黒を基調とした清潔な服、メイド服っていえばいいのかなそれをきちんと着こなしてい人だった。

家政婦のラライナさんだ。愛称はララさん!

ララさんはお母さんの昔馴染みでお母さんがこの国へ来た頃からの付き合いらしい。

更には結婚したお母さんにくっついてこの家の家政婦におさまった、と、おや?


ララさんお母さんのこと好き過ぎなのでは?

……うん、とりあえず思い至らなかったことにしよう。


「皆様の所へ行きます?」


「あう」


ボクとお母さんのやり取りを見ていたのかララさんは普通に話しかけてくる。

ベッドに寝たままでもやることないし頷く。


抱き上げられて部屋を出て向かうのは食堂。


「おや、ツバキ起きてたのかい」


「おはよ~う」


「ララさん、おはよう!」


「ええ、おはようございます」


「ん」


お父さんお母さんに姉さんと兄さん、そしてララさんとボクで一家勢揃い。


「オウカ、食べていないでさ」


ちらっとこっちを見ながらマイペースに食事を続けるお母さんに苦笑するお父さん。

頷いて口の中の物を飲み込んでいる、素直だなぁ。


「おはよう」


「あうっ」


「ふっ、今日も元気そうだな」


これが恒例になったボクとお母さんの朝のやり取り。

恒例になる前? 皆、なんとも言えない顔してた、慣れだよ慣れ!


「ラライナもごはんにしなよ」


「ありがとうございますクレイ様」


お父さんが自分の食器を片付けてララさんからボクを受け取る。

実はこの家でララさんの次に家事ができるのはお父さん。

お母さんはどうだって? とりあえずノーコメントでお願いします。


「よっとツバキはこっち」


赤ちゃんようの椅子に座らせられ、お父さんがご飯を持ってきてくれた。

そう離乳食です、母乳は卒業してます。

いやほんとお腹が空くのは仕方ないけど母乳ってのはしんどかった……。

産んでくれた人だからか、変な気持ちにはならなかったけど、ね?


「ツバキの分お願いね」


「ああ」


自分の分を片付けたお母さんが食べさせてくれるのが基本なのだけれど。


「母さんわたしがツバキにご飯をあげる!」


「ふむ、気を付けるんだぞ?」


「うん!」


元気よく返事をするボクらきょうだいの一番上であるキキョウ姉さん。

外見はお母さんをそのまま小さくしたと言えるほどそっくりな容姿。

目の色は青でそこはお父さんと一緒だ。


「ツバキ、あーんだよ~」


言われた通りに口を開けると匙を入れてもらう。

たまに姉さんが食べさせてくれるのだけれど嬉しそうな表情はお父さんのデレデレしている姿と被る。

うん、外見はお母さん似だけど中身はお父さん似だ。


「えへへ~」


こっちが食べさせて貰っているのに至福の笑みを浮かべている。

悪い気はしないけれど、何がそこまでさせるのかも分からない……。

ちょっと視線をそらして兄さんの方を見る。


「父さん、お代わりおねがい!」


「お、カイルはよく食べるなぁ」


お母さんにそっくりなキキョウ姉さんに対して、カイル兄さんはお父さん似である。

ただ目もとはつり気味でキリっとしてるのでそこはお母さんの雰囲気がある。

要は姉さんも兄さんも美形遺伝子をしっかりと継いでいるのだ。


「強くなるためには食べることも大事だからっ。ねっララさん!」


「ええ、カイル坊ちゃまよく食べることこそ体づくりの基本ですからね」


屈託のない笑顔でララさん見上げてる兄さん。

最近ララさんに稽古をつけてもらっているらしい。

先生として優秀なのか兄さんは彼女のことを信頼しているようだ。


「ほほーじゃあ、ベーコンを多めにつけてあげよう」


「やった!」


そして我が子に甘いお父さんがついつい量を盛る、割ときつそうな顔をして食べきる兄さんを見ながら朝食の時間が過ぎていくのだった。


「カイル~無理して食べる必要はないと思うよ」


「む、無理してないし、これくらい、っぷ、余裕だもんね!」


「二人ともそろそろ出ないと遅刻しちゃうぞー」


「は~い、カイル行くよ~」


「分かってるよ、行ってきます!」


「行ってきま~す」


「行ってらっしゃ~い」


姉弟揃って鞄を掴み玄関から飛び出していく。

この国の方針で5歳くらいから10歳までの子どもがいろんな基礎を学べる学舎に通えるようになっている。

義務教育ではないけれど、希望すれば誰でも通うことができるらしい。

らしいというのも意識がある時にお母さんが暇つぶし程度に語ってくれたことだからだ。

なので詳細は追々調べてみようと思っているのでまた今度ね。


「さーて僕も出勤しなきゃなっと」


朝食の後片付けを終えると身支度を整えるお父さん。

職場の制服らしいジャケットを着ている姿を見るとカッコいいなと思う。

まだ詳しくは知らないけれど役人的な仕事をしているみたい。


「オウカ」


「うむ」


出かける間際の恒例なのだけれどお母さんがお父さんにキス!


「ツバキも」


ついでにボクの額にお父さんが軽くキス!


「よし行ってきます!」


満面の笑顔で出かけるお父さん。我が家の大黒柱が元気いっぱいで安心です。


「ふふ、お熱いですねぇ」


「当然だ」


ララさんのイジリに余裕の笑みで返すお母さん。


「あーあ、私もそろそろいい人作ろっかなぁ」


「今までチャンスはあったと思うが」


「誰かさんの面倒を見るので手一杯だったの忘れたとは言わせないわよっ」


「ははは」


じゃれ合っているこの二人も大概仲良しなのである。

ここから昼間の間はお母さんやララさんに構ってもらったりしつつ一日を過ごす。

何だかんだで姉さんも兄さんも手が空いている時はボクの面倒を見てくれるし、お父さんは言わずもがな。


まだ長くは意識を保っていられないのもあるけれど、もうしばらくこの快適な赤ん坊ライフを満喫したいと思う。

家族にも恵まれているし、割と裕福っぽいので、この転生人生の滑り出しは順調なのでは?


未だに家族ことで知らないことも多いけれど、変な裏もなさそうだし、いや、時折お母さんの視線が怖いこともあるけど。

うん、ちゃんと家族の一員として成長できればいいなっ。


「何かやる気に満ちた顔をしているな」


はっ、ララさんとじゃれ合ってたはずのお母さんが何時の間にかこっちを見てる。


「おや、どうされました?」


お母さんにつられてララさんもボクを見る。

そんな見詰められても困っちゃうなぁ!


「今は気付かれたのに驚いている感じだな」


「ほうほう、オウカ様の眼って便利ですねぇ」


「いや、これくらは何となくで分かるぞ?」


えぇ、何となくで感情を読まれているのっ。


「何となくでって」


ララさんも苦笑いである。


「ツバキの表情は分かりやすいしな」


微笑みながらボクのほっぺをむにむにとしてくる。


「あふぁー」


くっ、お母さんに弄られると変な声がっ。


「そういえばオウカ様今日は道場へ行くのでは」


よし、ララさんナイス!


「おっと、そうだったな、昼時には戻るからツバキを頼んだ」


「ええ、任せてください」


ボクを弄るのやめたお母さんは軽く身支度をすませると玄関へ向かう。

そしてボクはララさんにだっこされてお母さんの後を追う。


「行ってくる」


ぎこちなく腕を振っているボクをみて、お母さんは微笑み軽く手を振り返し颯爽と出かけていく。


「カッコいいですねぇ」


しみじみと呟くララさんにボクは同意するほかなかった。


そんな訳で慌ただしく我が家の朝が過ぎていくのであった。

大分間が空いてしまいましたが細々続けていければと思っています。

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