1.5話
「女になってよかったなって思うことってある?」
燕はいきなり突拍子も無い質問をしてくるもんだから俺はすこし間を開けてしまい燕はいつものように笑ってはいるが目は笑っていない。絶対にエロい事考えたなと思われていそうだ。
ここは素直な反応をしたほうが怪しまれずに済むだろう。よし普通だ。普通。
「強いて言うなら……男の時よりもモテてるって実感が持てることかな」
「響は可愛いからね、私が男なら告白しちゃうね」
「でも困る事ばかりだよ」
「私も男のままの方が楽というかいろいろといい事が多いからね」
「そうか?」
そうだよと言われ俺は何故か肩を叩かれた。そういえば中学の時に何処かの学校でプリンスって呼ばれてた奴がいたな、もしかしてそれが燕だったり……流石に無いな。
「燕の方こそ男になってよかった事は無いのか?」
「私もモテモテだったよ、そのせいでか……」
すこし間が出来た。何を言葉に詰まっているのだろうか。まさかなにか修羅場があったのか。だとしたらこれは地雷だったかも。
「とにかく今女だからできる最大限の特権を私は生かしたほうがいいと思うの」
「例えば」
「例えば?」
「何も考えて無いのかよ」
「それは響が決める事じゃん」
女だからできることか……。何があるのだろうか。
その後他愛の無い話をして駅で別れを告げた。
今でこそすこし慣れたがやはり自分が女になったというのは少しばかり気持ちが悪いと思っていた。