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月とガラクタ兎の旅  作者: 葛黐
2/2

つき日げつ曜日多分昼


浅い眠りで案外すぐに目が覚めた。

変な夢を見た気がするが、覚えていない。

体を起こし、布団を片付けると早速散歩に出かけた。

歩いても歩いても殺風景。

辺りは土色の石ころだらけ。

足に装着されたジェット機で適当に飛び回るか。

ここに来てまともに体を動かしてない。

せっかく自由だし機能をフル活動しようか。

そう考えながら私は足をジェット機に変形させた。

するとモチウサが慌てた様子で煙を吹いた。


『姫、闘ウノデハアリマセン。散歩ハ歩クノデス。』


「えー暇なんだもん」


『デハ走ルノデス。ワタシト追イカケッ子スルノデス。』


モチウサはそう言ってぴょんぴょんと跳ねる。

まぁ無駄に力を使うのも勿体無いしな。

私は仕方なく跳ねやすいバネの足に変える。

モチウサに合わせてぴょんぴょんと飛び跳ねる。


私に備わってるパーツの種類はどれほどか正直知らない。

基本使うのは普通の足かバネかジェット機ぐらい。

私のお気に入りはジェット機だ。

空を高く飛ぶことも出来る。

火力が操作出来るし、相手に向けると火炎放射器になる。

ちなみに手にはマシンガンとロケット爆弾が備わっている。

こちらは今のところ使い道はない。

敵が現れなければ、使えない仕様になっている。

正直早く戦闘がしたい。

体が何か興奮を求めている。

私の敵は全てこの手で消すのだ。

久々だな、この感覚。

やはり体を動かすと意欲が上がる。


[生命体感知 生命体感知 5km先 直進 ]


『生命体デス?』


この星に生命体がいる?

突然鳴り響くアラームにドキドキと鼓動が高鳴る。

まずはそいつが敵か味方か、判断せねばならない。

足をジェット機に変えてすぐさまそこに向かう。

高く飛び上がり、周囲を見渡した。

すると何かいるのが見えた。

ニンゲンの形をしているが、そうではないようだ。

今まで見たことがない生物だ。

全身灰色で、つるつるとした頭。

目が大きく、ニンゲンとは違う顔をしている。

何だこいつ。

こいつの他に誰もいない。

恐る恐る近づいてみる。

向こうは私に気づいたのか、手を広げた。


[ 対象 分析結果 敵意45% 好意55% 参照不明 ]


どうやら敵ではなさそうだ。

しかしまだ安心は出来ない。


「ワ-ンヤンワ-ンヲユン-ン-ヲン-?」


「何だって?」


私の翻訳機能を介しても全く分からない。

相手は言葉が通じないと理解したらしく、体を動かした。

必死に何かを伝えてるようだ。

手を叩いて頭を振って、両手を広げる。

もしかして挨拶をしてるつもりなのか。

握手のようなものらしい。

とりあえず私も同じ動きをしてみた。

相手は喜んだ様子で手をパタパタ動かした。

滑稽なダンスを踊っているようにしか見えない。

遠くの方から機械音が聞こえてきた。


『姫ー置イテイクナンテ酷イデス〜!』


あ、モチウサ忘れてきた。


『ゴメンナサイスルノデース!』


「ごめんなさいー」


やっと追いついた様子で私に抱きついてきた。

ビービーと言いながら体をすり寄せる。

私は抱き締め返しつつ、生命体を見た。

相変わらず踊っている。

奇声を上げて何か訴えている。


『オヤ…アナタモ捨テラレタノデスカ?』


「ヲワ-ンンワヲ-ンワ-ンヲンユ-オンユ-…」


『ソレハ可哀想デスネ…』


おいモチウサ何故分かる。

翻訳機能も私より遥かに優れてるから当たり前か。

しかし見たことも無い生命体と会話する様子は何とも奇妙だ。


『姫、コチラユーワン惑星カラ来タユヨーンサンデス』


こいつに名前あったんだ。

ユヨーンというらしいその生命体は手を振って頭を下げた。

目が何となく歪み、微笑んでいるように見える。

良い奴なのかもしれない。


『コノ方モ惑星カラ追放サレタラシイデス…遠イ遠イ所カラココニ飛バサレタヨウデス』


私達と同じか…

こいつもガラクタで捨てられたのか。

仲間と認めていいのだろうか。

向こうはどうやらこちらの言葉は理解しているらしい。


『ワタシモチウサト申シマス』


「私はクズ。よろしく」


そう名乗ったのは初めてかもしれない。

何となく、手を差し出した。

仲間の証だ。

ユヨーンはそっと握り返してくる。

なんとも言えない感触がした。

仲間が一人増えた。

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