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春色玉手箱  作者: つゆり
一章
3/6

日課


楓は振り切っていた。

もうなにが何でもあの話題には触れない。


多分。優しい妹、柚香のことだからこちらから触れなければそっとしておいてくれるだろう。


「今日、なにか予定ある?」


降りてきた柚香に対し即効で話題を振る。

話をずらす。



「今日は晩御飯の買い物に行くよー」


「わー…それは残念だー…」



私はわざとらしく、大げさに落ち込んだ。

別に予定がなかったところで何なにがあるわけではないが。


「ふふっ。お姉ちゃん可愛い」



―――これはとりあえずスルー。




「それじゃ、買い物よろしくね!私はコロッケが食べたい!」



伝えることだけ伝えた楓はいつの間にか食事を終え、階段を上っていった。




部屋に戻ると忘れていた現実が目の前に叩きつけられるが、制服に着替えるためには何がなんでも部屋に戻らなければならない。


実を言うと怖い。

とてつもなく怖い。



この期に及んでばれていないとは思わない。

けれど、どういった対処をされているのかも物凄く気になる。



部屋に入る瞬間、思わず数歩後ずさってしまう。


「こ…怖いです!勇気をください神様仏様!」



いくら渋ったところでこちらは時間がない。

せっかく起こしてもらっているのに遅刻するわけにはいかない。


時間に追われる現代人は嫌だねぇ。と暢気なことを楓は思った。



「よしっ。いざっ!」



覚悟を決めて部屋に入ると、僅か1秒で現実が理解できた。


布団カバーを剥がされ、ベランダに干されている布団たち。

ベッドからは消臭剤であろうか。

爽やかな香りが漂っている。



そう、完璧に処理されていた。

可愛いと言われた柚香の一言が遅れて胸に突き刺さる。



よくできた妹だー。

素直に思った。


でも私はもうこの話題には触れないと決めたんだ。

なにがあっても。



柚香は決して嫌味を言う子ではない。

ということは柚香もこれ以上触れてこないつもりなのだ。

それなら今日のコロッケは少し分けてあげよう。そう思った。



楓は今度こそこの話に終止符を打ち、登校する為に制服へ着替えていく。



軽いもこもこボーダーのパジャマを脱ぎ、シャツ、ワイシャツの順番で着ていくと次はスカートだ。

根元から一つ、二つと折って着用する。


女子は制服のスカートを折っている人がそこそこいると思うが決して見た目だけのためというわけではない。


純粋に邪魔なのだ。



可愛く見えるという部分も確かに大きいが、他人に中身を見られるリスクや盗撮や痴漢の危険性を犯してまで可愛く見せたいわけではなく。


走ったり、風に吹かれたりするときにバッサバッサとなってしまって非常に邪魔くさい。

その為、一度イラッとした時に友達からお勧めされた折り方を実行している。



最後にカーディガンをリボンを着け、着用が完了した。



鏡の前で一回転。

立ち姿を確認すると、軽く飛び跳ねて更に全身をチェックする。



「よしっ!完璧!」



朝の日課を全てこなした楓は学校へ向かうことにした。



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