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仲間

 負傷兵を支えたお佳代は、よろめきながら必死に本丸へ向かっていた。


 その後ろを抜刀した徳川の兵が追っていた。

 獲物を狙うギラついた獣の目をしている。


「ここからでは、矢が届かん! しかし・・・・・・」


 無駄と知りながら、佐太郎は弓を引き絞った。

 風向きによっては驚くほど遠くまで届く事が有る。

 敵を脅かすくらいならできるかも知れない。


 その時、誰かが徳川兵を突き伏せるのが見えた。

(新野甚五郎殿だ!)


「お佳代殿、早く逃げなされっ!」

 遠くに居る佐太郎にもそう聞こえた。


(む?)

 佐太郎は気付いた。

 なぜか三ノ丸に北条旗を掲げた一軍がいる。


 新野はそれに合流し、侵入した敵を追い散らし始めている。


 しかし何人かの徳川兵が、再びお佳代たちを追いかけた。


「とにかく誰でもいいからぶっ殺したい!」

 戦場の狂気が彼らをそういう衝動に駆り立てている。


(どうする、今から飛び出せば、間に合うかもしれん。しかし!)


「ああっ!!」

 佐太郎の下で、香鈴の悲鳴が上がった。


「誰か、お佳代さんを助けてあげて!」

 足の傷が癒えていたら香鈴は真っ先に飛び出して行ったに違いない。


「香鈴さん、主水さんの指示が必要だ!」

 佐太郎は地上の香鈴に向かって言った。


 その時、隣に立っていた頼斗が助走をつけて屋根を飛び降りた。

 そしてそのまま三ノ丸へ続く崖を駆け下りて行った。


「あっ、おい頼斗、勝手に行くな! お前は才可かっ」

 佐太郎の叫びは頼斗に届かない。


「今日の俺は冷静だぞ」

 地上にいた才可が上に向かって声を掛けた。


「あ、才可、いたのか」


「ちょっと俺、頼斗を助けに行ってくる」

 才可は頼斗を追い、崖を飛び降りた。


「あいつら、本ッ当に! そこまでして・・・・・・、おなごにモテたいのかっ!」


 佐太郎は弓をガラリと投げ、二人の後を追って飛び降りた。


「俺だって本当は・・・・・・、モテたいっ!」

 二人を追って猛然と駆け下りた。

 中程まで駆け下りた時、頼斗は甲冑武者の前に立ち塞がっていた。


 鎖鎌を持っているが、構えない。

(これで母者の元に行ける)

 頼斗は無防備に両手を広げた。


「む、頼斗の奴、死ぬ気だ」

 佐太郎は斜面を跳ね、才可を追い抜いた。


 刀が頼斗に振り下ろされる瞬間が目に入った。

「ああっ、間に合わない。頼斗ッ」


 キン!

 高い音を立て、刃が止まった。

 十手が刀を受け止めている。


 キィン!

 もう一本の十手が刀を叩き折った。


 伊之助だった。

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