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裏切り

 翌日、徳川の主力が消えていた。


 反徳川の勢力を鎮圧しに行ったのだろう。


 残った部隊は絶えずこちらを監視していたが、なぜか包囲が緩くなっていた。

 城の内外へ一斉に人の出入りが行われた。


 北条の使者が来城した。

 大軍が救援に向かっているので、それまで持ちこたえるよう言い、去って行った。


 城内からは、周囲の情報を集めるために、斥候隊が馬を駆って飛び出して行った。


 次に、武器を持った遠江の一団がいくつか現れ、籠城戦への参加を申し出た。


 そして、上杉との同盟を締結させるために、使者が再び北へ向かった。


 更に、南から北条水軍の使いが部隊を率いて、情勢を伝えに来た。 

 その中に舎利奈の配下もいた。

 主水は重大な伝言を託し、使いを見送った。


 そんな中、北条の旗を掲げた騎馬武者が城門を訪れた。

 徒歩の従者を五人連れている。


「おい、また北条だぜ、今日はこれで三回目だ。どうする?」

「どうするって、北条は味方だろう。とりあえず入ってもらおう」


 城兵は門を開いて一行を通した。

 騎馬武者は小倉且久との面会を求めた。


 虫丸が、それをじっと見ていた。


 人々の争いに関係なく、百舌が上空でさえずり続けている。



 虫丸は今川居館の床下に潜り込んでいた。

 上から話し声が聞こえてくる。


「今川家に並ぶ者なき大黒柱、小倉且久殿を、我らが主君、武田信玄様はいたく気に掛けておいでだ」

(やっぱり! 怪しいと思ったんっすよね)


「貴公ほどの侍を、むざむざ徳川の手に掛けさせるのは余りに惜しい。と、信玄様は繰り返し仰られている」


(それで?)

 虫丸は聞き耳を立てた。


「我らと一緒に働きませぬか。お味方下されば、駿河一国を進呈する。と信玄様は仰せだ」

(よくそんな嘘八百言えるよな。誰も信じないって)


「ま、まことか!?」

 小倉の声だった。少し声が震えている。

 床下で虫丸は卒倒しかけた。


「氏真様はどうなる?」

「まことに気の毒だが・・・・・・」


 長い沈黙が続いた。


「いかが致した? 床を見つめて」

 小倉の声だった。


(まずい、気付かれたかな?)

 虫丸は虫鳴きの術を使った。


「チロチロチロ・・・・・・」

「虫でござったか。ネズミがいるのかと思いましてな」


 虫丸はホッと胸をなで下ろした。


「協力下さるなら、貴公も出陣下され。氏真公の身辺が手薄になった所を・・・・・・」


(殺るんだな)


「では信玄公によろしくお伝え下され。必ずや出陣致そう」


(ひどい話だな。急いで主水さんに報せなきゃ)

 虫丸は床下から這い出した。


 小倉は城門で騎乗の使者を見送った。

 ニヤつく笑顔を繰り返し抑えようとしていた。


 従者を従え、使者は去って行った。

 来た時、確か従者は五人いたはずだが、何故か四人しか従えていない。

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