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城門の罠

 どんより曇った朝、徳川は一斉攻撃を仕掛けてきた。


 風魔党は香鈴を残し、西門の守備に参加していた。

 美濃衆も一緒だ。


「ズシン!」

 攻城隊は巨大な丸太を城門に打ち付けていた。

 ひと当てする度に城門がきしむが、きわめて頑丈で中々破れそうにない。


「よろしいか各々方、今言った手順で願いたい」

 守兵達に指示しているのは主水だった。


「ズシン!」

 また城門を打ち付ける衝撃音が響く。


 虫丸はただ一人、城門の内側に居た。

 門越しに敵の息遣いが聞こえる。


 内側はやや広い空間になっている。

 四囲が野面に積まれた石垣で屹立した壁になっており、その奧左側に二ノ門が厳重に阻んでいた。


 この空間に誘い込んで敵を一網打尽にしようと言う事らしい。


「行くぞぉ、せいのぉ!」

 外から攻城兵の声が響いた。

 その声に合わせて虫丸は門のカンヌキを外した。


「ガーン!」

 西門が勢いよく開き、兵が城門の中へ殺到してきた。


 虫丸はそれに背を向け走った。ダッと跳ね上がり壁を垂直に登って行った。


「虫丸、掴まれ!」

 上から誰かが手を差し出した。八弥だ。


(助けが無くても登れる)

 だが虫丸は八弥の手を掴んだ。

 脇から頼斗と笹助が虫丸を引っ張り上げた。


 攻城兵たちは虫丸を追いかけ垂直の壁をよじ登ろうとするが、上手く登れない。

 虫丸の跳躍力にかなう者は風魔でもそういないのだ。


 空間が攻城兵で満たされた時だった。

 ずらり朝比奈の将兵が弓を構えて、石垣の上に姿をあらわした。


「は、図られた、退却だ!」

 敵の誰かが叫んだ。が次々押し寄せる後続が邪魔をして退却できない。

 彼らの頭上に矢の雨が降り注いだ。

 更に水が振りかけられた。いや水ではない、油だ。

 銅馬と才可、佐太郎が敵の頭上に油を振り撒いたのだ。

 油のにおいが充満する。


 主水が火のついた松明を持って城壁に現れた。

「南無阿弥陀仏」呟くと同時に松明を投げ入れた。


 城の外では徳川のいくさ目付が、遠江衆の戦いぶりを厳しく監視していた。

「服部様、あれをご覧ください」

 緊迫した声に目付の一人、服部半蔵はハッとした。


 城門から火だるまになった遠江兵が次々飛び出してくるのが見えたからだ。

 城門付近ではたじろぐ者たちと、火だるまの者たちとで激しく混乱している。


(これは忍びの戦い方だ。一体どこの忍び衆だ)

 伊賀や甲賀の連中は利のない仕事はしない。甲斐の素波衆ではもちろんない。


(とすれば相模の乱波衆か。厄介だな)

 半蔵はあの夜、自分を罵倒した老僧を思い出した。

 そしてひとつの考えに至った。


(北条が来る。徳川様へ報せねば)

 城内からは逆襲の兵たちが出撃してきた。

 逃げる遠江兵を追いかけている。


「一旦撤退だ。兵を引け!」

 服部半蔵は大声で叫んだ。

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