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暗殺者

 才可は東門へ到着した。


 人馬で騒然としている。

 香鈴はエンマを引き連れ仲間たちへ連絡に廻っている。


「あ、いた! 八弥、笹助っ」


 二人は複数の僧侶と一緒だった。

 才可は僧侶たちの顔を見知っている。

 風魔の男たちだ。

 四天王の一人、湧谷右近もいる。

 老人だけは誰なのか分からない。


 外ではまだ激しい戦闘が続いている。

 才可は彼らを『相模の家』に案内した。

 すぐに本営から主水が来た。

 香鈴以外の全員が揃った。


「おう主水、久々じゃな。相変わらずええ男じゃのう。おう鼻足れどもも元気そうでなによりじゃ。香鈴ちゃんはどうしておる?」


「は、今は姫と一緒でござる」

「ござる。侍みたいな口を聞きよる。ハッハッハ」


 人懐こそうな笑顔で、明るい老人だ。

 誰とでもすぐ仲良くなれるだろう。

 八弥と笹助は小さくなっている。

 さっき大音声で甲冑武者を罵倒した姿が脳裏に焼き付いているからだ。


「そうじゃ、忘れるとこじゃった。鼻足れども。おぬしらに土産じゃ」

 背中の荷物を八弥に押し付けた。ずしりと重い。数種類の暗器が入っていた。


「本丸への届け出は明日以降に致そう。我らは一旦持ち場へ戻る。右近、ゆっくり休んでいてくれ。八弥と笹助もここで休んでおれ。一貫どの、何かあればこの二人に申しつけて下され」


 主水たちはすぐに建物を出た。


「主水さん、あのバカ明るいおじいさん、一体誰ですか」

「お前らは知らんかったな。もう引退しておるからな。風魔で一番の暗殺者だ」

「えっ、暗殺者ってもっと陰気で怖そうな人なんじゃ」

「馬鹿だな、そんなんじゃ相手に警戒されるだろ。相手を安心させて仲良くなり、警戒心が完全に解けたところをそっと始末する。 それが最高の暗殺術というものだ」

「なんか怖いっすね」

「怖がることはない。俺達にとってはただの気の良い老人だ。名前は一貫どのだ」

「才可、お前暗殺者をバカと言ったな」


 頼斗だった。


「言ってないぞ」

「言った。バカ明るいってな」

「あ、おれ暗殺されるのかな」


 どっと笑いが起こった。老人の明るさが乗り移ったようだ、


「才可安心しろ。そのときは俺たちが一緒に謝ってやるから」


 銅馬が笑いながら言った。


 その時辺りに歓声が起こった。

 朝比奈俊永が帰還したのだ。

 討ち取った敵の首をいくつか提げている。

 歓声と裏腹に元気がない。


 俊永は叫んだ。

「敵を追い払ったが・・・・・・。六左衛門を失った!」


 歓声が止んだ。


 空が白み始めていた。

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