孤立
香鈴は姫たちと共に室内にいた。
戦闘の騒々しさが中まで伝わってくる。
「姫様、あたしちょっと見てくる」
香鈴は今川居館を飛び出した。
本営から二ノ丸にかけて、将兵の動きが慌ただしい。
佐太郎の姿を見つけた。
「佐太郎っ、どうなの!?」
「香鈴さん、大変だ。味方の一部が天王山へ取り残されたらしい」
「そうじゃなくて、八弥と笹助が帰って来ないじゃない」
「銅馬と頼斗が西門と東門へ様子を見に行ってるんだが、まだ連絡がないんだ」
「主水は?」
「本営に居ます」
「二人を助けに行ってあげないと!」
「その話し合いですよ。もう手を打ってありますから」
主水は本営の隅にいた。武装姿の朝比奈の重臣たちが集まっていた。
「それがしの責任でござる!」
福島六左衛門だった。
「いや爺、お主はよくやった。敵の前衛に損害を与え、味方も半分以上取り戻した」
「しかし殿、目の前の天王山に取り残された者がっ!」
「六左衛門、後はこの俊永に任せよ。必ず仲間を取り戻す。皆の者、今夜半再び出撃するぞ!」
「おうっ!」
「雨宮殿、敵の気を逸らす為、空で火薬を爆発させると申されておったの」
「は、どの程度効果があるか分かりませぬが」
「味方が気を逸らされぬよう、皆末端まで伝達致せ。良いか、敵は烏合の衆、注意すべきは徳川本隊のみじゃ。我らの底力、充分に思い知らせてやるのじゃ!」
才可は『相模の家』に居て作業をしていた。
「後は星を詰めて、合わせれば完成だな」
二種類の火薬をいくつかに分けて、和紙に丸く包んでいる。
それを星と呼ぶらしい。
二つの陶器の椀にそれぞれ丁寧に入れ、重ね合わせた。
更に糸と米糊を使って、固定した。
握り拳より少し大きい玉がこれで三つできた。
「才可、どうだい?」
「あ、佐太郎、香鈴さんも。今完成したところだ。竹筒はあったかい?」
「ああ、頑丈そうなのがいくつかな。虫丸が全部しっかり固定しているはずだ。どれを使うかは才可が選んでくれ」
(才可って、もしかして、あれをやるつもりなのかしら。)
三人は今川居館の前に移動して来た。
「虫丸ごめんね。一人にさせて」
「いいっすよ。あ、才可、導火線も準備したからいつでも打てるよ」
「さすが虫丸、ありがとう」
小春が居館の外へ様子を見に出てきていた。




