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風魔の里

 その少し前、風魔の里はちょっとした騒ぎになっていた。


 主水たちと掛川に居るはずの伊之助が、傷だらけになって一人きりで戻ってきたからである。

 里の集会所に伊之助は寝かせられていた。その横に黄金丸たち数人の風魔が座っている。


「このまま助からんかも知れん」


 里の西側、箱根の山裾で伊之助を発見したとき、全身至る所に小型のクナイが突き刺さっていたと言う。


『徳川が来る。姫は戻らん。小春さんが危ない』


それが、昏睡に陥る前に吐いた伊之助の最後の言葉だった。


「徳川が来る。と言ったそうだな」

「はい、黄金丸さん」


 風魔小太郎が小田原城に移って以来、黄金丸が里の取りまとめ的な立場になりつつある。


「黄金丸よ、年末に一度攻めてきたらしいが、近々また来るって事だな」

「恐らくそうだろう」

「武田に追われ、徳川に攻められ、踏んだり蹴ったりだな」

「今川の事か。そうだな。しかし姫が戻らんとは一体どういう事だ」


 皆首をひねっている。

 小田原に戻れば安全が保障される上、何不自由ないはずだ。

 なのになぜ。

 更に風魔たちに謎を与えたのは『小春さん』である。


「小春って、女の名前だよな」

「まさか伊之助の奴、浮気したんじゃ」


 伊之助には許嫁がいる。

 今回の仕事を完遂させた後、祝言を上げる事になっていたのだ。


「おいおい、そうだとしたら小百合の奴、激怒してこいつを殺しちまうかも知れないぞ」


 許嫁の名は小百合という。

 可愛らしいが顔に似合わず気性が激しい。


 ガラリと戸が開いた。


「伊之助!」


 小百合だった。


「お、噂をすればなんとやら」


 涙を流している。

 ダッと駆け寄り、横たわっている伊之助の元に駆け寄った。


「アンタ、小春ってどこの女よ!?」


 馬乗りになって伊之助の胸倉を掴んだ。


「お、おい小百合、落ち着け。瀕死の重体なんだぞ」


 男たちは慌てて小百合を引き離した。

 伊之助を看護していた女たちが隣室へ促した。


「小春さんというのは良く分からんが、いずれにせよ風魔の男が命を懸けて伝えた言葉だ。みんな良く覚えておくんだ」

「おう」


 黄金丸の言葉に皆一斉に応じた。

 更に続けて言った。


「小田原から返事はまだか」

「小太郎様が本丸へ報告に行ってるそうです。こちらへの指示は子安が伝えてくれるそうです」

「分かった。右近が何人か率いて、すでに掛川へ向かっている。一貫どのも一緒だ。子安が来たら事後報告で伝えてくれ」

「一貫どのまで?」

「そうだ。武田の暗殺者が今川氏真を狙っているという情報が入っていてな。おやじ殿の意向で、いずれ行く事になっていたのだ」


 伊之助は薄目を開けた。

 意識が戻った様だ。


 懐を探ったが炸裂玉は無かった。

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