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奇襲部隊

 八弥と笹助は天王山にいた。


 鉄砲という、当時最新の兵器を持ち込んだ二人は、朝比奈衆から大いに歓迎された。

 朝比奈軍にも小規模ながら鉄砲隊はある。

 二人は鉄砲隊の一員として鉄砲奉行の指揮下に入っていた。

 鉄砲隊とはすぐに打ち解け、射撃方法などを話し合っていた。


「なるほどな。おぬしらはいつも屈んで撃つのか」

「飛距離は落ちるけど、命中率が上がるだろ。無駄玉撃ったら火薬がもったいねえからな」

「もう一度火薬を見せてくれないか」

「いいぜ、ほら」

「みんな見てみろ。きれいな粉状だ。ここまで丁寧に仕上げるんだ、相模では」

「いやいや、これは才可のこだわりでさ」

「調合にもこだわりが有るみたいだ。俺たちにも教えてくれよ」

「いや、これも才可のこだわりなんだ。俺たちは細かい事まで分からないんだ」

「おい、お前たち静かにしろ、霧が晴れてきたぞ」


 鉄砲奉行だった。


「いいかもう一度言うぞ。俺たちの役目は、突撃時の一斉射撃。それと引き揚げ時の一斉射撃だ。いいな」

「お奉行、どっちへ引き揚げるんですか」

「こっちだ。味方が敵の先方を痛めつけてから引き揚げる。俺たちはしんがりだ」

「敵は何人くらい来るんでしょうね」


 人の良い奉行だ。いちいち答えている。


「さあ、相手の都合だからな。多くて五千くらいじゃないかって話しだ」

「五千って言ったら相当ですよ」

「まあ大丈夫だ。そんなに来るとは思えん」


 鉄砲奉行は何の根拠もなくそう言った。

 八弥たち鉄砲隊は部隊の前衛集団にいる。

 見張りの声が聞こえた。


「見えました。すごい大軍です」

「どれくらいだ」

「霧で一部見えませんが五千は軽く超えてます」

「なに。もう一度よく見てみろ」


 部隊はざわめき始めた。


「笹助、五千超えだってよ」

「ああ、徳川に寝返った連中が全部来たんだろう」

「遠江はほとんど徳川に寝返ったって話しだ。侍の連中は何考えてるか分からねえ」

「まあな。なあ八弥、もしかすると五千どころじゃないかも知れないぞ」

「え、なんでさ」

「良く計算してみろ。三河と遠江の全兵力からここの人数を引けばどうなる」

「俺、計算苦手なんだよな」

「いつも商いでやってるだろ。およそでいい」

「およそか。そうすると、ざっと、一万超えか。ん、それって、めちゃくちゃヤバくねぇか」

「ヤバいな」


 笹助のあごから汗が一滴落ちた。


 全員出撃準備せよ、の命令が出た。

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