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風魔のくのいち

 城内に次々物資が運ばれてくる。

 米などの食料、それと材木などだ。

 人夫が次々と連なる。


 香鈴は姫への報告帰りだった。

 ドン! と人夫の一人にぶつかった。


(あたしが人とぶつかるなんて)


 そういえば、ぶつかるまで気配を感じなかった。

 香鈴はハッとして相手を見て驚いた。相手も驚いた顔をしている。


「あんた助作じゃないの! なんでここにいるのさ!?」

「ふっふ、また会ったな風魔のくのいち。そして俺は助作ではない」

「くのいちって何よ」

「知らんのか、女忍者をくのいちと呼ぶのだ」

「あんた歩く時くらい、気配消すの止めなさい」

「それはこっちの台詞だ。これを見ろ」


 助作は、いや甲州素波の男は永楽通宝を取り出した。

 穴に紐が通っている。男はそれを下げ左右に振り始めた。


「お前はだんだん眠くなる」

(はぁ?)


 香鈴はあきれつつも、(面白そうだから、ちょっと付き合ってやろう)と思った。


「どんどん瞼が重くなってきた。お前は秘密を話したくなる」


 香鈴はわざと目をとろんとさせ、適当なことを言い始めた。


「駿河では・・・・・・」

「うむ、駿河では?」

 男は顔をにやりとさせた。


「駿河では、今川への忠義を捨てずに武田へ逆らい続けている者がまだ大勢いる」

「なるほど。それから?」

 男はさらに顔を得意げにさせた。


「今川氏真がいなくなれば、それらの者も抵抗をやめるでしょう」

「ほう、それで。」

 男の顔が少し固くなった。


「そのため、武田信玄は暗殺者を掛川城へ送り込んだ」

「・・・・・・続けろ。」

 男の顔に脂汗が滲んでいる。


「暗殺者は人夫に紛れて、機会をうかがっている。」

 香鈴は薄目を開けて男を見ながらそう言った。

(あれ、助作の顔色が悪いような)


「な、なぜそれを知っている!?」

(あれ、ホントにそうなの?)


「なぜそれを知っているのだ? どこから情報を手に入れたのだ? 言うのだ!」

「相州の乱波は全てを知っている・・・・・・」


 男の体が小さくなったような気がした。

 香鈴は目を開けた。男はすっと後方へ移動したようだ。さっきより距離がある。


「恐ろしい者たちだ、相州乱波。今回は出直すことにする。また会おう、風魔のくのいち!」


 見張り櫓の上から若い兵が怒声をあげた。


「こらっ、そこの人夫、城の女性にちょっかい出すな! 用が済んだらさっさと退城せんか! ぶった切るぞ!!」

「へい、急いで」


 男はそそくさと城門に向かった。


「香鈴さーん、追っ払いましたよー」

 朝比奈の若い兵は矢倉の上で手を振っている。


「香鈴さーん」

 他の兵も手を振っている。


 香鈴は愛嬌よく、手を振り返した。

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