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呼び出し

「主水、ごくろうさま。どうだった、手紙書いてもらえそう?」

「駄目だった。話にもならない」


 エンマは主水の顔を見ると嬉しそうに尻尾を振った。


「どういう事?」

「天下の今川様が、徳川ずれの為に、北条なんぞへ頼れるか。と言うことらしい」

「やっぱりね。姫様も同じこと言ってたよ」

「姫が?」

「うん、それでね、心配だから迎えに行けって」

「姫はどこに?」

「朝比奈の屋敷。城主様の母御のところ」

「そうか・・・・・・」


(姫を通じて一筆書いてもらおうか)と思ったが、先日の事を思い出して止めることにした。


 本丸の門兵に挨拶し、二の丸に出た。

 エンマが尻尾を振って、主水を見上げながら一緒に歩いている。

 寒い日がほんの少し減ったような気がする。梅がつぼみを膨らませている。


(手紙を持たせずに、小太郎のおやじの元へ報告だけしに、伊之助を走らせるか)


 二ノ丸の門兵が一人しかいない。


「おひとりでござるか」


「雨宮殿、あれですよ」


 指を差した。甲冑を着けた四騎の武者が息を荒げて、馬を曳いている。

 毎日浜松方面へ斥候に出ている部隊だ。

 外の情報を求める者たちが群がる風景はいつもと同じだが、今日は少し様子が違う。


「どうした、矢が立っておるではないか」

「徳川の斥候隊と鉢合わせたんだ」

「よく戦わずに戻った。馬は預かるから、報告を急げ」


 主水たちはその場にとどまり、城兵たちが交わす会話に耳を傾けた。


「浜松にまた兵が集結しとるらしい」

「出撃が近いらしいな」

「前回より人が多いらしいぞ」

「多いと言っても四千が関の山じゃろ。この城はたやすく落ちんわ」


 二人は時間をかけて長屋に戻った。城兵たちは親しみを込めて、長屋を『相模の家』と呼んでいる。


「主水さん、香鈴さん、お帰りなさい。本丸から主水さんに呼び出しがありましたよ」

「俺に。誰からだ?」

「朝比奈の城主様からって言ってましたよ」


 なんだろう、小倉が悪口でも吹き込んだか。


「他に何か言ってたか?」

「いえ、特には何も」


 主水はすぐに来た道を戻り、本丸へ急いだ。


 大広間へ来いって言ってたな。


 定期的に会議が行われている事は知っている。


 なぜ俺が呼ばれるんだろう?

 

 主水には心当たりがなかった。

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