表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
91/137

第2章 57話 砂漠のバラ その3

 「じゃ、こいつをどう封じるぅ?」


 シャルロットが小型のダイナマイトを一斉に投げた。


 ここは俺に任せろ。全部凍らせればいい。俺は冷気をダイナマイトに向かって撃った。本当なら、グレイシアみたいに一気に凍らせれれば楽なんだけどなぁ。一本一本凍らせ、落としていく。今の俺の魔法はそれぐらいの威力しかない。


 「お見事でござる!」


 褒めてもなんもやんねぇぞ。


 「いいねぇ。ご褒美に爆弾を止めるヒントその一、粘土爆弾は匂いを付けてあるの。ヒントその二、粘土爆弾の時限装置は針を止めるだけでいいんだよぉ?つまり、凍らせればよしって事ね」


 「桜蘭!麗沢君!一旦別れるぞ!それぞれで爆弾を探すんだ!匂い付きで尚且つ針で動いている。ならば全員別れるのが賢明だ!そして今の発言、凍らせれば爆弾は止まる!」 


 そうだな、俺は目で探せる。そしてシャルロットは一人。やれる!行くぞ


 「いい判断!それが一番いいよね!手伝っちゃお!『スイッチ式爆弾!』点火!」


 シャルロットが爆弾のスイッチを入れた。小さな爆発と共に天井が崩れてきた。


 ちっ!俺は崩れる天井を避けた、見事に三人バラバラに分かれた。シャルロットは麗沢のいる場所か...うん、今やるべきことを冷静に考えよう。完全に俺たちを分ける。シャルロットの狙いは、麗沢一人だけという事か。俺たちが爆弾の解除をしても麗沢が解除できなければ意味がない。そして麗沢を狙った理由は、あいつは耳がいい。恐らく俺と睡蓮よりも爆弾の発見が早い。だからシャルロットは最初に麗沢を狙ったのか...我ながら冴えてるな。じゃあ俺のすることは、麗沢を信じて、早急に爆弾を探す事だ。


 



 俺はあたりを探す、まず一つ目を見つけた。意外と小さいな。四角い粘土に腕時計のような物が巻いてある。俺はそれを凍らせて止めた。


 「睡蓮!そっちは見つけたッスか!?」


 「あぁ!今二ヵ所目を発見した。あ!それとこれは俺の計算だが俺と君の所で恐らく三ヶ所づつ。合計六ケ所に爆弾があるはずだ。建物を崩す位置を考えると君の所には三ヶ所だ!」


 「了解ッス!麗沢は大丈夫ッスか!?」


 「一つ発見したでござるが、シャルロット殿が立ちはだかって進めないでござる」


 そうか、見つけてはいるんだな。じゃあ俺は後二ヶ所か。早く見つけて合流しよう。この戦い先に麗沢にたどり着ければ勝てる可能性がかなり上がる。


 .........見つかんねぇ!どこだよ!考えられるとしたら柱付近にあるはずなのに、どこにも無い!ばくだーん、でてこーい。


 「見つけた!桜蘭!最後の一つを見つけた!そっちは!」


 「ダメッス!どこ探してもないッス!!」


 どうやったら見つけられる、めっちゃ目を凝らしているのに...


 「桜蘭、慌てなくていい。こういう場合は相手の思想になって考えるんだ。ここにはシャルロットもいる。普通に爆破しただけでは彼女自身まで巻き込む事になる。どこをどう爆破すれば彼女に被害が出ず、俺たちのみ殺せるのか、よく考えるんだ。そして見て、読み取るんだ」


 そうか...柱を吹き飛ばせばいいって訳じゃないんだ。しまったな、とんだ早とちりだ。見るのは爆弾じゃない。シャルロットの思想を見るんだ。さっき天井を崩した、少し傾いている。あそこから、俺たちにのみ被害を出すには...壁だ。ここの壁を吹き飛ばせば多分綺麗に俺たちに落ちてくるはずだ!!


 あった!壁の隅と隅に一個づつ!俺は素早く見つけた爆弾を凍らせた。後は麗沢だ。瓦礫をどかさなくちゃ!俺は、風の弾を撃ち瓦礫を除去していく。たまには手でよっこらせと大きい瓦礫をどかしていった。


 「麗沢!無事か!」


 「麗沢君!」


 二人同時に麗沢の元にたどり着いた。


 「ふぅ 接近戦はやっぱやりにくいね。案外君が強くてまいっちゃうよぉ」


 「それはこっちのセリフでござる。接近戦ならばこちらに有利と踏んでいたのでござるが、その素早い身のこなしに無駄のない爆弾の攻撃、正直感服したでござる」


 シャルロットは無傷だが、麗沢はあちこち怪我をしているみたいだ。服も結構汚れている。


 「でも、こっちは三人になった。この状況はシャルロット、お前の負けだ」


 「そうッスよ、爆弾の場所ももうなんとなく分かってるッス。観念するッス、シャルロット」


 俺はシャルロットに発信機を渡すように言った。だが彼女は、首を縦には振らなかった。

 

 「う~ん、負けるにはまだ早いかな?だって、もう時間だもん!」


 しまった!俺は睡蓮が発見していた爆弾を解除しに走った。だが、最後の一個は爆発してしまった。


 「崩れゆく天井!君たちはどう防ぐ!? 私は、こう!『ダイナマイト』!」


 シャルロットは自分の真上にダイナマイトを一斉にバラまいた。爆風で瓦礫を吹っ飛ばして自分に落ちてこないようにしてるのか。そしてあの余裕、全て計算してやってるのか。


 「桜蘭!手伝ってくれ!」


 感心している場合じゃない。睡蓮がやろうとしてることは分かった。土の魔法で防ぐ気だ。二人なら、絶対防げるはずだ!


 「ふぅおおおぉぉぉぉぉ!」


 麗沢はフライパンに風を纏わせはじめている。自分に落ちてくる分を吹っ飛ばす気だ。今までのあいつを見てれば、自分に降りかかる分は何とかなるだろう。これを乗り切れば、今度こそ勝てる!


 「行くぞおおおぉぉぉ!!」


 ・


 ・


 ・


 屋根は崩れ去った。俺と睡蓮はひょっこり屋根から顔を出した。無事防げたみたいだ。遠くでサムがこっちを見ている。


 「おぉ、危なかったでござる」


 麗沢も無事か...勝った。後はシャルロットだ。どこに...いた。


 「おー、みんな無傷かぁ」


 「さぁて、今度こそお前の負けだなシャルロット?」


 シャルロットはしばらく考えたが、俺たちが完全に取り囲んでいるこの状況、どうやら諦めたらしい。これで...


 「あーあ、全員は倒せなかったかぁ。ま、いいか」


 今なんて言った?『全員は』? 周囲に風が吹いた。


 「はっ!?麗沢君!避けろ!!」


 「遅いよ!『粘土爆弾』点火!」


 「ぶぅん!」


 麗沢の足元が大爆発を起こした。あたりに轟音が響き煙が上がった。そうか、ダイナマイトを上に放り投げたのも、天井を崩したのも、俺たちから足元の注意を逸らさせるためだったのか。だからやたらと上からの攻撃をしていたのか。俺は、冷静に分析していた。


 「君の事は忘れないよ、レイサワちゃん」


 シャルロットは満足そうに煙に背を向けた。


 「れいさ...!」


 睡蓮は固まった。


 「一人脱落ぅ!でも、これ以上は無理だから、私の負けだね」


 負けを宣言した割には、ずいぶんと勝ち誇った顔をしているな。


 「本当に負けたと思うッスか?」


 俺はシャルロットに質問した。お前は確かに凄いよ。今まで戦った奴の中で一番苦戦した。でも、条件は整った。俺の予想通りだ。勝ちだ。


 「どゆこと?」


 「この世の中、全部計算で出せる程、簡単には出来てないって事ッス」


 シャルロットは俺が何を言いたいのか理解できない。ま、ムリもない、この現象は俺にも到底理解できない。


 「今までの展開、かなり憂鬱で、シリアスだったと思わないッスか?」


 「だから...どゆことなの?」


 「今の爆弾、破片手榴弾にするべきだったッスね。それがあんたの負けの原因ッス」


 シャルロットはすぐさま後ろを振り返った。そして口をポカンと開けて固まった。


 「いや~、危なかったでござるなぁ」


 煙の中から、麗沢のいつものふざけた声が聞こえてきた。


 「...!?うそぉ、いったいどうやって?もろに喰らったはず...な、のに?...


 ぶふぉっ!クスクス...ちょ、まっ...」


 シャルロットが麗沢の姿を確認した瞬間、噴き出した。


 「こ...これ...が、麗沢のwww奥の手wwwッスwwwwww」


 駄目だ。草生えるわコレ。睡蓮も顔を下に向けて口を手で押さえている。


 そこにいたのは、頭が凄まじい芸術的なボンバーヘッドになっただけの麗沢がいた。これ見よがしに親指立てている。


 「残念でござったな、シャルロット殿。だがソレでは拙者は倒せぬ。我が麗沢家、最大の奥義『ギャグ補正』の前にはな!キリィッ!!」


 「ふぇっ!?この作品ってシリアスメインの作品じゃないのぉ!?いくら何でもなしっしょそれぇ!ってかどうやったらそんなん出来んのぉ?ってその髪型!プクク...ごめっ」

 

 残念だったな。この第二章はほんのりとギャグもあるんだよ。


 「ふぅ、ここは俺が説明するッス。麗沢は、目に見えないギャグ補正ゲージというものを持っている。それを溜めるには、鬱、シリアスな状況を続ける事なんス。それが最大まで溜まった時それは発動する。一度発動すれば、麗沢は不滅の存在になるのさ!!どんな攻撃もギャグ補正で乗り切る、それが麗沢の真の力!!」


 そぅ、これは俺が高校の時、麗沢と大喧嘩した時だった。珍しく麗沢も本気でブチ切れていた。喧嘩の理由は些細な、アニメと原作の展開の違いについてだ。俺はどうして原作通りに作らないか、そのことで麗沢と喧嘩していた。その口喧嘩は下校しながらも続いた。一歩も引き下がれない。その時だった。俺の目の前で麗沢がトラックに跳ね飛ばされた。俺たちは喧嘩に集中するあまり、いつの間にか道路に出ていたんだ。 その時だ。麗沢は十メートル以上吹っ飛ばされていた。だが、麗沢の負った怪我は『眼鏡にひびが入った』それだけだった。俺は大丈夫かと尋ねた。そして麗沢は言った。


 『交通ルールは守ろうね!』と、俺は大爆笑。トラックの運転士もまた大爆笑、俺たちは警察に連絡せずその場を後にしたのだった。


 その後俺は、麗沢から、この一応奥義の事を聞かされた。最初は冗談かと思っていたが、その時の目は本気で言っていた。


 「そんな阿保なぁ」


 シャルロットが目を真ん丸にしている。今がチャンスだ。行け、麗沢。


 「そしてぇ!これで決めるでござる!前先輩が、アンリエッタ殿にぶつけた技のオマージュというかもろパクリ!名付けて『風の一撃』!!」 


 シャルロットは完全に出遅れた。再び真面目なテンションに戻って放った一撃。あのフライパンに風の魔法を纏わせ、一気に振る。


 「しまっ!!」


 風はシャルロットにクリーンヒット。シャルロットの体は吹き飛ばされた。


 「きゃああああぁぁぁっ!!」


 そして、あ、俺に向かって飛んできた。えっとキャッチしろってか!?先に言えよ!!頷くな!心の準備がまだ、ってぎゃぁ!


 俺は吹き飛ばされてきたシャルロットを受け止めはしたが、飛んでくる人間をキャッチするのは至難の業だ。思いっきりしりもちをついた。


 「あいたたたたぁ。って、ありゃりゃぁ、やられちゃったみたいだね。

いや~参ったよぉ、私が誰も倒せないなんてねぇ、降参降参!」

 

 あの...降参を宣言する前に俺を椅子にするのやめてくれません?ぐぇぇ...




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ