第2章 53話 国民的アイドルは、爆弾魔 その2
「まず、こいつでっと。ホイ!名付けて、『葡萄爆弾』!」
何かを上に放り投げ、ソレは上空で爆発した。爆発したところから何か落ちてきた。あれは...あれも爆弾だ!爆弾を爆破させて小さい爆弾をバラまいたんだ!!
くそ!落ちてくる前に撃ち落とす!俺は自分に降りかかる爆弾を電撃で撃ち空中で爆破させ続けた。俺に降ってくる分しか対応出来ねぇ。多すぎる!!あ...!
一つ落ちて隣で爆発した。他の箇所でも一気に爆発し土煙で何も見えなくなった。
「みんな~!大丈夫か!」
サムの声だ。安否確認。みんな返事を返したな。俺も返した。
「サクラ君たち!ちょっと手伝ってくれ!風の魔法でこの土煙を吹き飛ばす。やれるかい?」
「オッケーッス!」
俺は銃に風の魔法を溜め込んだ。そしてせーのの掛け声で一気に土煙を吹き飛ばした。
俺はまず、シャルロットのいた場所を見た。いなくなっている。どこかに隠れたのか?考えられるのは、あそこの廃墟郡だな。
「今の攻撃、恐らくただの目くらましだ。自分が避難するための...そして目の前にある廃墟か...誘っているんだな?自分が最も戦いやすい場所に」
睡蓮がトーンを低くしている。なんかかっけぇっス。
「うかつに入るのは危険ッスか...でも、やるしかないッス!虎穴に入らずんば虎子を得ず!って言うでしょ?」
「これは珍しい事が、先輩がことわざを間違えなかったでござる」
うるせぇ、大学に入る為に一応は勉強したんじゃい!得意科目を伸ばせって言われたから国語を勉強したんじゃい!それしかやってねぇけどな!
「そうだな。だったら、分かれて行動したらどうだい?そうだなぁ。二人一組あたりで」
睡蓮の提案で俺たちは廃墟に向かってバラバラに入る事にした。つまりは四つのグループに分け中心に向かって侵入する。簡易的な包囲網だ。
俺と睡蓮。麗沢とシィズ。サムとエルメス。グレイシアと零羅で組んだ。
「じゃあ、みんな気を付けるッスよ!!」そして俺たちは別れた。
俺は正面からのルートだ。廃墟郡の入り口近くに着いた。俺は目を凝らし建物の中を見る。これと言って何かある訳じゃなさそうだ。俺は恐る恐る一歩踏み出そうとした。その直前で睡蓮に肩を引っ張られた。
「待て、これは...」
足元、そこには見えにくい細いワイヤーが張ってあった。気付かなかった。危ねぇ危ねぇ。
俺たちは少し後ろの岩に隠れ、ワイヤーに向かって石を投げた。睡蓮の正確なコントロールで見事に命中。そこが爆発した。
俺は爆発で、シャルロットが動かないか?と思って周囲に目をやったが、誰も動いた気配はない。
『今爆発音が聞こえたが、大丈夫だったか!?』
サムから無線が入った。みんなと別れる前サムが念のために用意しておいた予備のトランシーバを一グループごとに一つ持たせていた。親機はサムのやつで俺のは子機。半径数キロは使えるらしい。
「問題ないッス。ちょっとトラップを使ってみただけッス。でも誰か動いた気配は無いっスね」
『トラップか...それがあるという事はここにシャルロットがいるという事になるな。分かった。引き続き頼んだよ』
「了解ッス」
無線を切った。俺たちは今度こそ廃墟郡に入っていった。昔は賑わってたんだろうなぁ。なんだか西部劇の街並みみたいだ。ゴーストタウンになってるけど。
「桜蘭君、前から思ってたんだけど、君視力いくつ?」
睡蓮の唐突な質問に俺はキョトンとした。何で視力?
「え?右が0.9で左が1,0ッスね。この間の健康診断ッス」
俺は普通に答えた。まぁ眼鏡は必要のないぐらいだ。
「そうなのか、だったらあの文字は見えるか?」
睡蓮はある看板を指さした。
「え?うーんと、『居酒屋 砂漠のオアシス』ッスね」
俺はそれをすんなりと読んだ。それがどうしたんだろうなぁ?
「やっぱり読めるんだ。あそこまでの距離...えっと...」
睡蓮が腕を伸ばし親指を立てて片眼を瞑っている。あ、簡易的な距離の測るやつだ。えっとどうゆう計算式だっけ?麗沢に教えてもらったんだよなぁ。確か、片眼で物体に親指を合わせて今度は目を入れ替えて、そうすると親指が物体からズレるから、その物体からズレた個数分を物体の大きさに掛けて更に十掛けるんだっけ?だから、あの看板は一メートル位だから、えっと、一、二、三...1×30×10?あれ?三百メートル?
「うん。やはり俺の目が変な訳じゃないな。あそこまでは約三百メートル、君はあの一メートル位しかない看板をこの距離から普通に読んだんだよ?」
今初めて気が付いた。俺、この世界に来てやたらと目がよくなってる気がする。ランディと戦ってた時とか、そういえば普通に弾丸が見えてた。すげぇな俺。ん?待てよ?俺は目がよくなってた。麗沢は...確か地獄耳レベルになってた!そんでもって零羅と睡蓮は匂いだけで青薔薇を見つけた!
「これってけっこう使えるんじゃないッスか?」
俺の顔から笑みがこぼれた。
「あぁ!俺は匂いにかなり敏感になっているみたいなんだ。粘土爆弾からは少し甘い香水のような匂いがしていて硝煙の匂いがしなかった。だがさっきの爆発とあの葡萄爆弾とか言うやつ。あれからはきつい硝煙の匂いがした。火薬を使った爆弾。つまり、シャルロットは粘土爆弾以外にもいろんな爆弾を持っているという事になる。
そして、あの甘いの香りはシャルロット自身からも匂っていたんだ」
そうか!その匂いをたどればシャルロットにたどり着けるって訳だ!睡蓮が匂いで探す。俺がその匂いのする場所を見つける。そこに遠くから攻撃。爆弾だったら爆発するし、もし誰かがいれば必ず動くはずだ。ナ~イス。睡蓮、頭良い!