第2章 52話 国民的アイドルは、爆弾魔 その1
車は渓谷を抜けた。その先には再び荒野が広がっていた。
「そう言えば気になってたんスけど、この国の人『全ては平和の為に』って言葉よく使うッスよね。なんなんスかそれ?」
前々から気になっていた事だ。今質問したのは、特に会話が無かったからだ。シィズが答えてくれた。
「あぁ、それね。『全ては平和の為に』って言うのはこの国の国歌の名前よ。作曲者は不明なんだけど、この国の平和の為に闘った人たちを称える歌なのね。たとえ小さなことでも、その全てが平和へと繋がっているって言う感じの曲よ。だからみんないろんな場面でこの言葉を結構使うのよね」
「へぇ~」
成程ねぇ。全てが平和に繋がる...か。いい言葉だな。
「さてと、もうすぐ着くよ」
と、シィズが言った時だった。
『ボォン!!』
突如目の前で爆発が起こった。車はハンドルを切って爆発を辛うじて避けたが、横転。衝撃が俺たちに走った。
「だ...大丈夫ッスか?」
俺は今どんな体勢だ?横?逆さ?どんなだろう、よく分からない。
「拙者は無事でござる。今外に出たでござるよ」
うん、麗沢は大丈夫だな。というか、よく出られたな。真っ暗でよく見えないのに。それに息苦しい。ん?息苦しい?
ようやく状況を理解した。頭の上に誰かのしかかってる。だから、何も見えないんだな。そして大体誰が乗ってるのか理解できて来たぞ。何故かいつもぶつかるエルメスに違いない!
「おーい、サクラ。大丈夫か~」
あれ?おかしいな。外からエルメスの声が...じゃあ乗ってるのは誰だ?というかのそのそ動かないでくれないか?頭が地面に押し付けられて痛いねん。あれ?何か今上から柔らかい感触が...なんだ?
「んごぉ!!」
そして俺の顔が蹴飛ばされた。
「あ、ごめん。下にいたの...?」
グレイシアだったんかい!俺の上にいたの!てか気付けよ!
って、あれ?グレイシアって事は、じゃあさっきの柔らかい感触は...まさか。
俺は直後にエルメスとグレイシアに引っ張り出された。
「よっしゃ、これで全員無事だな。ってあれ?サクラどうしたの?顔が赤いけど...」
エルメスが俺の異変に気付いた。
「あ!グレイシアが蹴ったからか!」
勘違いしてもらえた。
「にしても、何があったんだ?爆発?」
「つまりは、お出ましみたいね」
来たか、俺は周囲を見渡した。だが、誰もいない。遠くに人が住んでそうな街が見える。直線だと...十キロ先ぐらいか..近くには...百メートルぐらい先に廃墟の集落がある。
「う~む、近くに誰かいるはずなのでござるが...」
麗沢は耳を澄ませている。ならば俺は目を凝らそう。俺は一歩踏み出した。
『カチ』
「!?先輩!避けろでござる!」
俺も反応は出来た、何か地面が盛り上がるのを感じた。俺が避けた直後に俺のいた場所が爆発した。
だが、俺が避けた先、そこでも同じ事になった。俺は何とか避けた。くそ、続け様に避けたところが爆発していく。
地雷か?いや、なんか違うぞ?目を凝らせ俺、俺の落ちる位置はあそこだ。あそこに電撃だ。
俺は俺の着地地点に電撃を放った。地面が爆発した。爆風で俺は顔を隠したが、やはりそうだ。一瞬だが見えた。地面に何か埋まっててそれが爆発している。少しだけ色が違う土の様なものだ。それが爆発した。これは地雷じゃないな。スイッチ式の爆弾だ。
俺は爆発した場所に着地した。
「先輩!大丈夫でござるか!?」
「あぁ、麗沢!あんたの無駄な知識を貸してくれ!今、爆発したのは白っぽい土みたいなやつだった。そんな爆弾ってあるのか?」
コイツはこういった事に詳しかったはず。
「お?プラスチック爆弾でござるか?う~む、だとしたら。あ、先輩!そこの地面に信管はあるでござるか?」
信管?俺は地面をよく見た。何も見えないぞ?
「なんもないッス!いや、なんだコレ?」
俺は小さな欠片を見つけた。薬のカプセルの様な、なんだコレ。
「変な薬のカプセルみたいのなら落ちてたッスよ!」
これがどうかしたのか?
「そんなに小さいのでござる?う~む、そう言えばこの世界の通信技術は拙者達の世界より進んでいる。信管を超小型化して更に無線で起爆しているのでござろうか...ならばやはり」
何をごちゃごちゃ言っているんだ?全く理解できない。
「先輩!やはり地雷ではなさそうでござるな。恐らくそれはプラスチック爆弾!粘土の様な爆弾でござる!多分今、ここには地面に紛れて大量にそれが埋まっているのでござる!」
粘土?土...そうだ!
「零羅!炎神は...付けてるな!地面に向けてここら辺周辺ぶっ飛ばせるか?数メートルでいいからクレーターが出来るぐらいで頼む!」
「え?あ、はい!やれる筈です!」
零羅は、拳に力を溜め始めた。
「みんな!零羅が吹っ飛ばしたら零羅に向かってジャンプしてくれ!」
全員頷いた。俺の作戦分かったみたいだな。
「行きます!!」
零羅は全力で地面に炎神で叩きつけた。零羅を中心に地面が抉れた。俺は飛び上がった。
深さ二メートル、幅五メートルほどのクレーターが出来た。相変わらずスゲーな。だけどこれで。
全員、零羅の近くに着地した。俺はクレーターの壁を見た。
「やはりそうでござるな。この白い粘土の様なもの。プラスチック爆弾でござる。一つ一つに小型の信管が埋まっている。一体どれだけあるのでござるか?」
「五百個だよ!」
『カチ』
突如、上から声をかけられた。そして周囲の爆弾が全部爆破された。ヤベ!!
だが、
「危なかったー」
グレイシアが氷で俺たちを覆い全部防いでくれた。結構な爆発の威力だった...ていうか!半径五十メートルくらい吹き飛んでるんだけど!どんだけ埋まってたんだよ!それにそれを防いだのもすげぇよ!
「あ~、やっぱね。一気にに爆発させてもこれはグレイシア様が防いじゃうよね~。一人一人確実に爆破させないとね!」
「くっ!お前が!」
俺は上を見上げた。こいつが!シャルロッ...ト?
そこにいたのは、フリフリのスカートを履いてツインテールで手にはマイク?の様なものが...どっからどう見てもアイドルと言った感じの女性が立っていた。服はなんか軍服っぽいが...
「やほー!情熱のアイドル!『爆破部隊』隊長!シャルロット レッドローズちゃん十七歳!ここに参上!みんな!今の爆破!見てくれたかな!」
ほへ...?
「うぉーーーーー!!」
何やってんの麗沢?てかその光る棒何?そのダンス何?
「おー!そこのぷよちゃん!いいノリしてる~!ほら!みんなも盛り上がっていこー!!」
「イエー」
グレイシアも何やってん?
「じゃっ!前フリはここで終わりね!こっからはメインイベント開始ぃ!」
シャルロットはあの発信機を取り出した。
「あなたたちはこれを壊したら勝ち!私はあなたたちを殺せば勝ちの簡単ルール!勝った人にはご褒美あげちゃうよぉ!」
は、はぁ...
「うん~?そこのイケメン君~乗り悪いよ~。じゃ、まずは君からかな?君の作戦、中々のものだったからね。先に潰した方がいいよね!」
マジか~。ま、いいや。もういい加減ぶっ飛んだノリに慣れた。
「いいッスよ!かかってこいッス!!」