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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 47話 愛する者の為に死を覚悟する二人 その2

 ベアトリーチェは、グレイシアに向けて猛攻した。対するグレイシアは氷の剣で全て弾いていた。攻撃し返さないのか?


 そして鍔迫り合いになった。


 「グレイシア先輩...あんた、ふざけてるの!?攻撃してきなさいよ!あなたの実力はこんなもんじゃないでしょ!?あたしはこの戦いに命を懸けてるの!すべてはレイ様の為に!!」


 「そう...あなたは本当に『命を賭けれる』のね、レイに...」


 グレイシアがそう呟いた瞬間だった。


 「へ?」


 俺は瞬きもしていない。にもかかわらず、周囲は凍って、ベアトリーチェの盾は砕けていた。グレイシアはベアトリーチェを壁に押し付け氷で身動きを取れなくし、更に、彼女の腕を掴み、口に指を突っ込んでいた。


 「あ、んが...あい、お?」


 多分、ベアトリーチェは「何を?」と言ったのだろう。


 俺はこの時全身の毛が逆立ったのを感じた。グレイシアの殺気、前に俺と戦った時とまるで違う。これが彼女の本気だ。俺に向けている訳でもないのにこの圧迫感、グレイシアは昔の友人だろうと殺せるんだ。その覚悟がある。


 「もう一度聞くよ?あなたは、本当にレイのために『命を賭ける』の?」


 「ん...ぐ...」


 「選んで?今私は、あなたの腕を掴んでる。一瞬であなたの腕を凍らせて腐らせ落とせれる。それをとる?それとも口から冷気を送って内臓を少しずつ凍らされていくのがいい?選ぶ答えは一つだけだよ」


 ベアトリーチェの顔から汗が噴き出した。グレイシア...何を考えているんだ?


 「ちょ!何もそこまで!」


 エルメスがハッと気づいて、グレイシアを止めに入ろうとした。


 「黙ってエルメス。これは闘い。同じ人を愛した者同士の」


 エルメスは、身動きが取れなくなった。そしてベアトリーチェは、必死にもがいている。


 「無駄、私は今既にあなたを凍らせ続けてる。腕を千切るか、内臓が凍るか、早くしないと全身が凍ってあなたは死ぬ。さぁどれを選ぶの?」


 グレイシアはベアトリーチェの足を踏んだ。そこから徐々に凍り始めている。


 「あ...!やえふぇ!!」


 「私は覚悟している。この戦いで自分が死ぬかもしれないという事を覚悟している。もし私があなたならこの状況どうすると思う?」


 ベアトリーチェは、恐怖で失禁し始めて涙目だ。本当に大丈夫か?マジで殺しそうだけど...俺は、どうすべきだ?


 「ふぇ...あ、い...を?」


 「私の答えは『死なない』 今のこの状況を見て、やろうと思えばあなたは私の指を噛み千切れたはず。だけどそれをしなかった。それはあなたが目の前の『死の恐怖』に既に負けているから。だから体が動かない。

 私は目的を遂げるまでは絶対に死なない。絶対に生き抜く。そう、この状況に答えはない。腕を無くそうが、内臓が使い物にならなくなろうが、生き抜いてレイの為に忠誠を尽くす。それがあなたの取るべき行動だった。是が非でも、私を殺すべきだった」


 グレイシアは氷を砕いた。ベアトリーチェはその場に倒れこんだ。呼吸が粗い。


 「レイを愛しているのなら、簡単に命を捨てるような事はしないで。レイは簡単に命を捨てる奴は嫌いだって言ってた」


 ベアトリーチェは、ハッと顔を上げた。グレイシアは彼女に手を差し伸べていた。

 

 ベアトリーチェの目から涙が大量に溢れ出た。


彼女は泣きながら、しばらく顔をうつむかせていた。


 そして顔を上げた。上げた顔は涙に溢れていながらも笑顔だった。全てにおいて納得した顔だ。


 「負けだわ、全然足りなかったんだ。覚悟も、愛も、あなたにあたしは遠く及んでいなかった」


 ベアトリーチェは、ポケットから発信機を取り出した。


 「ごめんなさい、レイ様。あなたがグレイシアを選ばれた理由がようやく分かりましたわ。あたしに最初からリーダーの務めなんて出来る訳が無かった。だけど、あなたはあたしにリーダーの務めを下さった。この弱いあたしに...あたしの役目は果たしました。後は、残った者に任せます」


 ベアトリーチェは、自分で装置を破壊した。


 「これで、終わりです。先輩、本当に強いですね。あたしもかなり修行をしたのに一瞬でやられちゃいました。今回はあなたたちの勝ちですね、でも、次 戦う事になったら、今度こそグレイシア先輩、あなたを超えて見せますよ、レイ様の心を掴んで見せる」


 そう言ってベアトリーチェは姿を消した。納得した顔してたのに、まだ三上と結婚したいと思ってるのか...というか、次はあるのか?三上は確か、俺たちが負ければ全員殺すみたいなことを言ってたんだよなぁ。


 俺は、ある事を思い出した。『原子爆弾』ポンサンから聞かされたそのワード。俺はこの世界に来て思ったことの一つに、この世界では軍事技術はあまり発展していないと感じていた。銃も西部時代に使われてたような感じのものだし...それなのに、原爆なんか造れるのか?三上自身もここの世界に来る前は一般人だったはずだ。どうやって開発した?まさかとは思うが、俺たちを脅すためのハッタリだったりしないよな?俺の疑問には誰も答えられないだろう。俺は考えるのをやめた。


 ・


 ・


 ・


 さて、ここでの闘いは終わった。ちょうどここで解放した地区は八ヶ所目、ちょうど半分か。あ~、まだ半分あるのかぁ。


 次に行く地区はヒュージキャニオン地区と呼ばれる場所で、この先はしばらく荒野が続くみたいだ。この街を抜けると水もろくにないらしいし、モーテルなども無いらしい。車中泊がメインになりそうだ。だからここで水などの食料を買う事にした。


 「見つけたぞ」


 俺は安心しきっていた。ここでの闘いは終わった。だが戦いは終わっていなかった。俺たちを狙う者がすぐそばまで来ている。


 


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