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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 45話 海岸道路のウォーミングアップ

 南オーシャナを抜け、今はオーシャナ地区の海岸道路を走っている。南に進むのは終わった。今度は東に向かってひたすら車は走り続けた。


 ジョシュからの連絡で、次の目的地は理解している。そこまではまだかなり時間がかかるらしい。俺たちは車の中で楽しく過ごしていた。車の中ではラジオが流れていた。 


 『続いて速報です。本日午前十一時ごろより、アオシラビーチで「ジャン ゼラニウム」さんが行方不明となっており、警察は沖に流された可能性があるとして捜索を...』


 今日の午前?ちょうど俺たちがいた時間だな。沖に流されてるような人は見かけなかったぞ?


 「ニャンタの奴がしっかりと監視していないから...もし遺体で発見されたとなったら、減給処分じゃすまないぞ?あいつ!」


 サムが、本気で怒っていた。ちょっと怖い。少し車内が静まり返った。


 「そ...そんな怒らないでよサム。そ、そうだ。サクラ君!あなた岩場で海見てたんでしょ?誰か流されてたとか見た?」

 

 「いや、流されている人は見かけなかったスね。それに沖に流されてたんなら、シレンさんたちが気付きそうだけどなぁ」


 俺はボソッと思ったことを言った。ワダツミはともかく、シレンならまともそうだったし、優しい人物だって思ったし、何かあったなら気付いてるはずだろうしなぁ。


 「シレン?誰それ?」


 そういえば人魚の事話してなかったな。


 「あぁ、人魚の名前ッス。ちょうどあの岩場で知り合ったんスよ。ワダツミってちょっと変わった子と、その姉のシレンって人ッス。あの人たち沖に向かって泳いでいったから、何かあったのなら気付いてるはずなんス」


 俺はここで気が付いた。全員口を開けている。零羅や麗沢がそうするのは分かる。あのグレイシアが表情を出していた。驚きの表情を。


 突然隣から、エルメスが俺の額に手を当てた。


 「熱は...ないね...」


 何だよ、風邪は引いてないぞ?馬鹿は風邪を引かないんだぞ。というより引いてても気が付かないんだぞ。俺の取り柄は元気だけなんだぞ。


 「えっと...本当に人魚を見たの?」


 「そうッスよ?」


 周りの反応で、俺はちょっと気が付きだした。まさか、人魚ってこっちの世界でも...


 「サクラ君...人魚は架空の生き物だよ?もし見つけたのなら、それは世紀の大発見だよ」


 サムの言葉で、何故か俺は冷や汗が出た。マジで?


 車内が静まり返った。




 「あ!!」


 運転していたサムが急ブレーキをかけた。車は少しスリップした。俺は扉に体を押し付けられた。すぐに車は止まった。だが、


 『ゴン!』

 

 俺の頭に衝撃が加わった。


 急停車した衝撃で、エルメスの頭が俺の頭にクリーンヒットした。俺はエルメスの攻撃を受け続ける運命なのか?でも、今回は仕方ないな。俺とエルメスの位置が逆でも同じ状況になってただろうし。


 「あいててて...」


 エルメスが頭を押さえていた。


 「あ、大丈夫ッスか?」


 「一応ね...」


 また微妙に涙目になっていた。う~む、なんかエルメスの態度が急激に変わった気がする。この前までなら(なんでお前の頭がここにあるんだ!)とか言って怒りそうだったのに。流石にそこまではしないか?エルメスもよく分かんないぁ。


 「で?何があったの?」


 「『害獣』人的被害の恐れがある危険生物に指定されている動物たちだ。現れたら駆除しなくちゃいけない奴らだ」


 俺は外を見た。ハイエナの様な生き物がよだれを垂らしながら、俺たちの車を囲んでいた。数は見たところ十匹程だ。


 「全く、先を急いでいるのに、こんな奴に引っかかるなんてな。仕方ない、蹴散らしてくるから、待っててくれ」


 サムが車を降りようとした。


 『あ!待ってください』


 俺たち四人が同時に声をそろえた。


 「俺たちがやるッス。何事も経験ッスよ、この先の敵に備えて、この武器の力と、今俺たちがどこまで成長出来てるのか確かめたいんス」


 サムは「しかし...」とだけ言ったが、少し息をはいて俺たちにアドバイスした。


 「決して侮るなよ?個々は弱いがこいつらは結構狡猾だ。仲間をおとりにさせ、相手の後ろに回り込み襲う習性がある。そこに気を付けるんだ」


 『分かりました』「ッス」「でござる」


 俺たち四人は、同時に車から飛び降りた。


 「さてと、あいつ等様子をうかがってるみたいッスね、睡蓮さん、零羅、麗沢、まず俺が正面の一匹に攻撃をしかけるッス。サムのアドバイス通りなら、俺の後に回り込んで攻撃してくるはず。そこを頼めるッスか?」


 俺の作戦を簡単に説明した。みんな頷いた。


 「じゃあ...」


 俺はまず銃のみを取り出し、正面の野獣に電撃の弾を撃った。我ながらかなりの早撃ちだ。


 「キャイン!!」


 犬の様な叫び声を上げて、一匹その場に倒れこんだ。そして予想通りだ。後ろで構えていた残りが一気に襲ってきた。


 「みんな!行くッスよ!」


 麗沢はフライパンを取り出し、フライパンに炎を灯しながら思いっきり横に振りぬいた。


 「必殺!只之横薙ただのよこなぎでござる!」


 また変な技名を...というか技名になって無いぞ?それっぽく漢字を付けんな!野獣が数匹吹っ飛んだ。威力はすごいんだよなぁ。


 「ふん!」


 睡蓮は軽やかに、野獣の動きを交わし、すれ違いざまにナイフを突き立てた。今までこの人がまともに戦うのを見たことが無かったな。動きが滑らかだ。無駄なく避け、野獣の急所にナイフを突き立てている。かっけぇ。


 「はぁ!!」

 

 零羅は炎神を装備し、野獣の攻撃を受け流して、僅かに魔法を込めた一撃を野獣の後頭部に食らわせた。一撃で野獣は動かなくなっている。零羅はこの一連の動きを全く止まることなく次々に行い、野獣を蹴散らしていった。暴走してなくても相当強いなこの子。あ、蹴りにもムダがない。スマートに蹴りが野獣の頭にクリーンヒットしていた。


 俺はブレードを取り付け、そして構えた。えっと、どう構えるのがベストなんだろう。前に出して横向きに銃を?でもガスガンって横撃ちはあまりやらない方がいいって聞いたことあるし...じゃあ、縦か。俺は結局、八相の構えに近い形をとった。


 「さぁ、来いッス!」


 俺の周りは三匹の野獣で囲まれている。まずは正面のこいつからだ!


 俺はそいつに切りかかった。


 『ぶぅん!』


 空振った。挙動が大きすぎたんだ。それにこいつ、めちゃくちゃ重たい。もしかしてコレ、銃との重心のバランスをとるためにブレード自身もかなり重たいのか?空振ったブレードは、地面に食い込んだ。あ、ヤベ。


 チャンスとばかりに野獣は、同時に俺に襲い掛かった。


 「なんてね!」


 俺は引き金を引いた。風の魔法を地面に向けて発射したんだ。俺の体はポーンと上に打ちあがった。野獣は急に俺が視界から消えたことに理解が追い付かず三匹同時に頭を思いっきりぶつけた。そして俺は着地ついでにその三匹にブレードで頭に一撃加えた。野獣は動かなくなった。


 「よし!まずはこんなもんか...」


 俺はこの瞬間にほんのちょっと気を緩めてしまっていた。俺は一瞬気が付かなかった。後ろにもう一匹いた。気を付けていたのに、コレはマジでヤバイ!振り向く前にやられる!


 俺が振り返ろうとした瞬間、俺の顔の横を何かが横切った。


 今のは、ナイフだ...


 俺は振り向ききった。そこには襲い掛かる野獣はいなかった。一匹、そこに倒れていただけだ。ちょうど心臓部分に持ち手が無くなったナイフが刺さっていた。


 「今のは危なかったね。大丈夫だった?桜蘭君」


 睡蓮だ。俺を助けてくれたのは、俺の後ろの奴に気が付いてくれてナイフの刀身を飛ばしてたんだ。


 「あ...ありがとうッス...あ!」


 俺は反射的に撃っていた。睡蓮の後ろにも更にもう一匹いたんだ、俺の撃った電撃の弾は睡蓮の顔をかすめ後ろの野獣に命中した。

 

 「あ...気を付けてたのに...ありがとう、助かったよ」


 「こっちこそッス」


 俺たちは互いに礼を言い合った。


 「これで、片付いたでござるな」


 「そうですね。でもゴメンね、あなたたちも生きようとしてただけなのに...出来れば殺したくありませんでした、まだ、私の力不足ですね」


 零羅...俺たちを襲おうとした奴らでも、お前は哀しみを向けるんだな。俺は少し罪悪感が出てきた。こいつらは害のある存在。だから殺しても問題はない存在って思ってたけど、それは俺たち人間の勝手な都合なんだよなぁ。


 仕方ない、俺は地面に向かって撃った。土の魔法で地面に穴を開けた。俺はそこに野獣の遺骸を入れ、埋めた。


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