第2章 43話 完成せし、勇者たちの武器 その2
「次にスイレン君よ、即興で作ったモノになるんじゃが、コレじゃ。おぬし、ナイフが得意みたいじゃからの」
チュニアは一本、ナイフを出した。そしてその後、持ち手部分が無いナイフを更に数本出した。
「え...これってどういう...」
睡蓮は困惑していた。俺もコレ、どうやって使うのか分からん。
「これはな、こう使うんじゃよ」
チュニアはナイフを持ち、刃を前に出した。そしてグリップにあった出っ張りの様なものを押し込んだ。
ナイフが前方へ勢いよく飛んでいった。飛び出したナイフは壁に突き刺さった。お!なんかかっこいい。スパイ映画に出てきそう!
「こんなもんなんじゃが、どうだろうかの?儂としてはもうちょっと弄りたかったんじゃが、さすがに時間がのぉ」
チュニアがこれに関してはう~んという表情をしていた。
「いいじゃないですかコレ!スペツナズナイフみたいで!十分です!ありがとうございます!」
睡蓮がすごく嬉しそうにソレを受け取った。凄い良い笑顔するなぁ。
「ほうか、なら良かったわい。いや~、ほんと、即興で作ったからのぉ。すまんなスイレン君よ」
「いえいえ」
チュニアは今度は麗沢の武器を取りに少し小屋の奥に行った。あれ?そっちは台所じゃないか?なんでそんなところにまで武器があるんだ?
「レイサワ君じゃったな。お前さんにはこれをやろうと思ってな」
麗沢に渡されたのは...
どこからどう見ても、少し底の深い、只の、フライパンだ。
「名づけ...る前から付いとる名前じゃが、その名も『鋼鉄製のフライパン』じゃ!!」
チュニアは、力んでフライパンをかざして麗沢に渡した。
「ど...どうもで...ござる」
さすがのあいつもポカーンとしている。俺もだ。( ゜д゜)って顔になってる。
「いやの、お前さん、ロングソード持っとるじゃろ。それを使って結構派手な戦い方をするとサムに聞いたんじゃ。じゃが、ロングソードじゃと相手に怪我をさせるだけじゃすまんからのぉ。だから変に抑制をかけて戦っておるらしいからの。だからこその打撃に特化した武器がお前さんにピッタリじゃと思ったんじゃ。それにそのまま料理に使えるし、取っ手も取り外し可能なんじゃ」
ティ〇ァールか!!
「ふむ、確かに。拙者、この剣で戦おうとしてもどっかで力を加減せねばと感じていつもコケるのでござるよなぁ。それならばこれは拙者に最もふさわしい武器と言えるでござるな」
麗沢はフライパンを受け取り、ロングソードをチュニアに渡した。
「それにコレには鋼も混ぜて作ってあるからの、少々重いじゃろうが、魔法を纏わせることも可能なんじゃよ」
へぇ~、鋼って魔法を纏わせれるんだ。俺のコレも出来るのかな?後でやってみよ。
「あ、ついでに。このフライパン。くっつにくい特殊加工もしておるからの、油を引かずに目玉焼きが作れるほどじゃ。凄いじゃろ」
それは確かにすごいけども、別に要らなくないか?そんな機能。
「ほぅ!それは真でござるか!それは中々に便利な!あ、でも油引かないとあまり美味しくならないのでござるよなぁ」
そこの食いつきすごいなお前。
「まぁ、別に油を引かなくてもくっつかないほどのフライパンの性能って事なだけじゃ。使い方はお前さん次第じゃよ」
「それもそうでござるな!HAHAHAでござる!」
「さて、今日ご紹介しましたのはこちら!いざという時の護身武器でありながら、普段は調理の頼もしい味方!使い方はあなた次第の『鋼鉄製フライパン』くっつか無い加工済み。を紹介しました!」byチュニア
チュニアと麗沢は何故か通販的なやり取りをして、嬉しそうに麗沢がフライパンを受け取った。チュニアさん、ノリいいな。
「さてと、まぁ悪ノリはここまでにしといてと...最後にレイラちゃん。お前さんには儂のとっておきを渡そうと思う。心して受け取るんじゃぞ」
急に真剣な雰囲気にあたりが呑み込まれた。零羅の武器。しかもチュニアのとっておきか。俺は少し迷っていた。零羅に、武器なんて渡していいものかと、零羅は暴走する自分を止める為に、俺たちと旅を共にしている。それでいなくても、零羅自身が普段から争いを嫌う人物だ。
だけど、この旅自体はかなり危険だ。自分の身を守れるものがあるに越したことはない。はてさて、どうしたもんか。決めるのは零羅か...