第2章 42話 完成せし、勇者たちの武器 その1
「あ!サクラ!どこ行ってたの!?」
俺が戻るとエルメスが、なんか怒ってきた。みんな既に戻って着替えていた。あ、ちょっと遅くなったパターン?
「あ~、そこの岩場にいたッスよ?」
俺は正直に答えた。
「あ...そんなとこにいたのね......じゃないや。サムが武器が仕上がったから、チュニアさんのとこまで来いってさ」
はいはい、もうそんな時間か。人魚たちと意外と話し込んでたのかなぁ...俺は着替えに向かった。そして着替えて戻って来た。
そして俺は、ある事に気が付いた。
「あれ?睡蓮さんは?」
睡蓮がいない。俺と同様にどこかに一人で行ったのか?
「スイレン君もどっか行っちゃって、まだ戻ってないのよね」
シィズがそう説明した。一人で...まさか沖に流されたとか言うパターンじゃないよな?よく聞く水難事故の...
俺がほんのちょっぴり心配したが、すぐに安心した。
「あ...済まない。遅くなったしまったみたいだね。すぐ着替えてくるよ」
ちゃんと戻って来た。五分後くらいに睡蓮も着替えて更衣室から出てきた。どこ行ってたんだろ?
「よし!みんな揃ったね、じゃあ行くよ!」
俺たちは、再びチュニアのボロイ小屋に向かった。
「あ、みんな来たみたいだね。こっちだ」
サムの案内で、俺たちは小屋の奥に入った。
小屋をよく見るとあちこちに色んな武器が置いてある。
「えっと、『はりゅうちぎり』?なんて読むんスか?コレ」
俺は小屋に飾ってあった槍の名前をサムに聞いた。ほんとになんて読むのか分からない。
「あぁ、それは破琉血斬だ。かつてビーン隊長が使ってた武器と同じものだよ。因みにこれは火威斗 ワンコが使ってた籠手の様な武器だ」
あ~、当て字なのね。そういえばこの世界、普通に言葉が通じてるな。結構西洋な感じだけど、ところどころ日本的というか、あまり英語的な発音は無い感じだ。まぁ、全く無い訳じゃないけど。
「お こっちじゃ」
小屋の裏口付近でチュニアが手招きをしていた。武器か、ちょっとどんなのがあるのか気になるなぁ。
俺たちはチュニアの所に向かった。チュニアの手にはセブンスイーグルが握られていた。見たところ渡したときと特に何かが変わった印象は無い。どっか変わったのか?
「サクラ君、まずは君の武器じゃ。名付けて、『魔装剣銃セブンスイーグル』じゃ」
チュニアは俺にセブンスイーグルを渡した。で、結局何が変わったの?変わったのは、マガジンが長くなったな、それだけだ。
「え...これって、特に何も...」
俺がツッコもうとしたら、チュニアが俺の口元に指を当てて塞いだ。
「そうじゃ、それは特に何も触っておらんよ。そいつ自体は既に大分改造したからのぉ。因みにこの持ち手の鷲も儂が掘ったんじゃぞ?」
「え?じゃあ、このフロントサイト部分の翼も...」
「儂の趣味じゃ、ええじゃろ?」
いや、どちらかと言えば悪趣味に分類されるぞ?撃つのは魔法だからサイトの必要性はあまり無いとは思ってるけど、コレじゃ装飾拳銃だよ。しかも悪趣味な。
「で、コレの何が変わったんスか?」
めんどくさい、俺はド直球に質問した。
「コレじゃよ」
チュニアは、持ち手のない片刃のブレードを取り出した。どないせいゆうねん。
「聞いた話、それ実際は玩具に入る代物らしいの、本物は自動式の拳銃で『ぶろーばっく』という機能で銃弾の連射を可能にしてるとか、じゃが魔法を撃つこの武器にはその機能は必要ない。じゃから考えたんじゃ。ここの部分に何か付けれないかとな。それで思いついたのがこれじゃ。サクラ君よ、そいつの『すらいど』を最後まで引いてみてくれ。止まるまでじゃ」
俺は言われた通り、スライドをスライドストップがかかるまで引いた。そういえばこいつ撃つ時、ブローバックしてなかったなぁ。
「そこにこいつをセットじゃ!!」
チュニアが、ちょうど実銃で言うところのエジェクターに当たる部分にブレードを押し付けた。見事にくっついた。
「ぶろーばっくの必要が無いのならこうしてしまえばいいんじゃ。銃と剣、両方の機能を同時に併せ持つ武器じゃ、我ながらすごい発明をしたもんじゃな」
チュニアは、ハッハッハと笑った。確かに、ちょっと持ちにくいけど接近戦の時にはいいかもしれないな。マガジンが長くなったのは両手で対応するためか...
「お?確かこのような武器、1920年ほどに日本陸軍で開発されかけてたやつに似てるでござるな、確か『試製拳銃付軍刀』とか言う、当時の小学生発案かなんかの武器でござる」
チュニアは一瞬にして黙った。小学生の発想力と同じって言い方に聞こえただろうからなぁ、今の言い方。
それにしても空気読めよ麗沢、俺も感心してたんだから、なんか恥ずかしだろうが。
「と...とりあえず、コレが君の武器じゃ。外すときはこの鞘に強く押し付けると外れるようになっとる。付けるときも同じじゃ」
へぇ~、俺は一緒に渡された鞘に、ブレードを収め強く押し付けた。外れた。もう一度やってみる。今度は付いた。俺はしばらくそれを続けた。一体どういう機能なんだろう。結構すごいぞコレ...