表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
75/137

第2章 41話 海での出会いは、偶然ではなく必然

 さてと、俺は浪打際まで来てそこに座った。遠くで泳いでいるシィズが俺に声をかけてきた。


 「あれ?サクラ君は泳がないの?」


 「いや~、俺実はカナヅチなんスよ。泳げないんス。だから浅瀬にいるんスよ~、俺はいいッスから、シィズさんは遊んでていいッスよ~」


 シィズはグレイシアと共に零羅に泳ぎを教えているみたいだ。その零羅は、いつの間にか再び調達されていた浮輪にしがみついていた。


 「し...沈みます~!!」


 「問題ない。浮いてるから」


 あ~、零羅頑張ってね~。というかグレイシア、本当にコートのまま海に入ってるよ...


 「へぇ、サクラ。泳げないの、なら私が教えてあげようか?ん?」


 エルメスが不敵な笑みを浮かべて俺に言い寄って来た。これは嫌な予感がする。


 「遠慮します!!」


 俺は即答した。


 「え~、面白そうだったのに。てか、即答かい!仕方ない、次の手を...」


 エルメスはどこかに行った。


 そういや麗沢は?あれ?睡蓮とサムで何をやっているんだ?俺はそっちに向かった。


 「ここは確かこうだった...」 「確か、こっちに川があったのでござるな」 「へぇ、面白い作りだな」


 川?何の話だ?俺は後ろから覗き込んだ。俺は理解した、こいつら砂遊びしてやがる。というか砂で城。しかも日本の城を作って、麗沢がサムにその城の説明をしている。というか...


 「完成度たかっ!!」


 作ってあったのは、城だけじゃない。いや、城自体もかなりの完成度だが、城下町まで再現してやがる。


 「お?先輩、もう起きて大丈夫でござるのか?」


 「あぁ俺はもう大丈夫ッスけど、コレ何?」


 俺は麗沢に尋ねた。


 「犬山城。と、その城下町でござる」


 あ~、聞いたことあるな、その城。確か、今まで堕ちたことない城だっけ? ん?何でこんな話を知ってるんだ?あぁ、前に麗沢に聞いたんだわ。


 「今この城の生い立ちを...」 「遠慮する」


 俺はその場を後にした。また長ったらしい話を聞かなきゃいけなくなる。逃げよ。


 ・


 ・


 ・


 俺はそこまで離れていない岩場に腰かけた。ちょうど周りに誰も居ない。そうか、俺は一人になりたい気分だったんだ。たまには落ち着く。聞こえるのは波の音だけ。


 「あぁ、この感じ、すごくいい!」


 俺は、開放感に浸った。


 「あーもういっそのこと全裸になりたい!ま、やらないけど」


 ん?俺はふと岩の下を見下ろした。あれ?誰かいる。げっ...今の聞かれた?


 そこにいたのは海面から顔だけ出した少女だった。少女は俺をじーっと見た。そして俺を指さしてこう呼んだ。


 「人間!!」


 うん...どう反応すべきなんだ?


 「う...うん。そうッスね」


 これしか思いつかないや。でもこの場所結構流れがありそうなのによく動かずいられるなぁ。あれ?待てよ?ここは確か...


 俺は横を見た。そこには 


 『この先 遊泳禁止』と書かれた看板と、そこからロープが出ていた。この少女がいるのはそのロープの外側だ。


 「ちょっ!ここ遊泳禁止ッスよ!?」


 俺は、その少女に呼びかけたが当の本人は、なんのこっちゃと首を横に捻った。


 「君は人間。だけど、普通じゃない。人間だけど人間じゃない」


 「は...はぁ」


 何この子。電波?と言うやつなのか?


 「わたしは人魚。だけどわたしも普通の人魚と違う」


 はい?今なんて?次の瞬間、俺は理解した。その少女は海面から飛び上がった。確かに上半身は普通の女の子だった。だが下半身は違った。イルカの様な尾びれで下半身が出来ていた。おぉ!人魚だ!さすが異世界!こんなのもいるんだ!


 人魚の少女は俺の隣に座った。そういえば、人魚ってどこで呼吸してるんだ?口?まぁ、ツッコまないでおこう。知ったら夢が壊れそうだ。


 「君は、この世界にいなかった。現れた不安定要素」


 うん、間違ってはいない。しかし、この子、なんか...分からん。


 「君は世界をどうするの?守る?壊す?」


 ゲームの事を言ってるのか?だったら答えは一つだ。


 「守るッスよ。あいつの好きなようにはさせないッス」


 「そうなの...君は始める者。あなたはゼロを壱にする存在、礼は無からゼロへと導いた。君は壱を創らなくちゃいけない。だけど壱を創った先に待つのは苦悩だけ。幸福が待つ保証もない。君はそれでも闘う?」


 ムカラゼロデイチヲツクル?なんのこっちゃ?全く理解できぬ...だけど、まぁ


 「あいつを倒してからが大変なんだろうなとは思うッスね。だけど俺は考えるのが余り得意じゃないッス。だから俺は闘うんスよ。みんなが幸せになってくれるのなら、俺はこの先でも闘い続けるッス」


 今なんか、良い事言ったぽいな。俺はちょっと自画自賛した。


 「わたしはワダツミ、君は桜蘭サクラ、君は知ってる?サクラランの花ことば、それは『人生の門出』だって。君はこの世界に来て新たな出発点にいる。君は君の人生を君自身で選ばなくちゃいけない。だから.........


 もう少し考えて行動しなさい」


 最後の言葉に俺はズッコケた。つまりは説教したかったんかい!!また難しい事を言いそうだって思って身構えた俺が馬鹿らしいよ!!


 って、あれ?この子、俺の名前を?というかこの子の名前、ワダツミって言うのか...


 「あーー!いた!!」

 

 なんで俺の名前をワダツミが知っていたのか考えようとしたら、海の向こうから誰かを呼ぶ声が聞こえた。


 もう一人?匹?の人魚がこっちに来た。


 「あ...姉さん。ご機嫌よう」


 「ご機嫌よくない!姫様またこんなとこまで一人で!!お父様カンカンに怒っているんですよ!」


 「ふ~ん」


 そっけねぇ態度だな、姉だろ?...と言うか 姫!?


 「それに人間に見つかったらどうする...の...で..す か?」


 姉さんの方はようやく俺が隣にいたことに気付いたみたいだ。


 「え?あの...姫様?それは?」


 「坂神 桜蘭 今知り合った。姉さんが心配するようなことは起きない、大丈夫。問題ない」


 「ど...どうもッス」


 「はぁ...どうも」


 俺とこの人魚の間にしばらく沈黙が流れた。


 「あの...」「あのぉ...」


 二人同時に喋ろうとした。


 「あ...そちらからどうぞッス」


 俺は姉さんと呼ばれた人魚に振った。


 「あ...どうも、あの、私たちの声を聴いて結構普通にしてましたけど...大丈夫なんですか?というか驚かないんですか?」


 声?どういう事?別にどうという事は無いけど、それにここは異世界だし、ユニコーンもいたし、驚くこともないだろ。


 「いや、特に何も無いッスよ?全然大丈夫ッス。ってか、声がどうかしたんスか?」


 「あ、いやこっちの話です.........アーヨカッタ...」


 「だから言った、問題ないって」


 ワダツミは、やれやれと言った感じで話に入って来た。


 「今回はまぁ良かったですけど...それより!早く帰りますよ!早くしないと、お父様に叱られるのは私なんですからね!?勝手に勉強抜け出して!」


 「やらなければならなかった。桜蘭に、伝えなくてはいけなかったから。だから抜けた」


 姉は、なが~い溜息をついた。


 「仕方ない、戻ろ。桜蘭、今、君にあえて良かった」


 そう言ってワダツミは海に飛び込んだ。


 「姫様がほんと迷惑かけました。サクラさんでしたね。ありがとうございます。あ、自己紹介遅れました。私はシレンって言います。それよりもサクラさん、本当に大丈夫ですか?」


 「何がッスか?」


 質問の意図が分からない。さっきから何を心配しているのだろうか


 「人魚の声は催眠の効果がある。君には効かないけどね」


 あ、そういやなんかそんな話薄っすらと聞いたことがある。成程、そういう事か。


 「俺は全然大丈夫ッス!」


 俺は特に何か変わった様子は無かった。


 「なら良かったです。では、私たちはこれで」

 

 シレンはワダツミを連れて沖に向かった。だが途中でワダツミが止まって俺の方に振り返った。


 「あ、一つ言い忘れてた。あなたに『幸福が訪れますように』 わたしからも願っておく」


 そう言って、二人は水中に消えた。




 「はぁ~、人魚と知り合いになれるなんて、夢にも思わなかったなぁ」


 そろそろ戻るか、俺はみんなの待っている場所に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ