第2章 38話 訪れたリゾート地で待つモノは、リーダーと勇者の武器 その2
「よ~っこらよ~い」
変な掛け声でニャンタはビーチベッドからのそ~っと起き上がった。
「食後だから、お腹痛めないよう気をつけてね~。じゃあどっからでもどうぞ~」
う~ん、どっからでもって、こいつどこ見てんだ?糸目でようわからん。というかなんか猫を思い出した。うん、名前もそうだが、猫っぽいな。じゃあまず小手調べだな。
俺は、セブンスイーグルを取り出しおもむろにニャンタに向けて電撃を撃った。
「あぶね」
ニャンタはポーンと、店の外に飛び降りた。
「おいお客さん!喧嘩は他所でしな!」
そういやここであまり大きな騒ぎを起こすと迷惑だな。やらかした。
「店には被害ださないでよ?ここの店結構気に入ってるんだから」
あ...ごめんなさい。
俺も飛び降りビーチに立った。ここの付近は人が少ない。ここなら戦える。
「ほい、ここなら大丈夫だよ~。じゃあ戦闘開始で」
ん~、なんか気合入らないなこの人。まぁいいか。俺はニャンタの足元に向けて電撃を撃った。ニャンタは軽々しくバク転して避ける。凄い身体能力だな。でも、今の攻撃は砂を巻き上げての目くらましだ。この隙に一気に近づいて攻撃を仕掛ける!あれ?
『ザー...』
急に俺の周辺に雨が少し降った。巻き上げた砂が一気に湿気り、地面に落ちた。
「あ~、いい作戦だけどさ、結構分かりやすいよ?だから逆手に取らせてもらった。あの砂煙の直前に上に水を噴射いておいた。砂埃の目くらましはきかないよ~」
あ...コレやべーやつだ。説明に聞き入ってた。俺の負けだ。目の前にニャンタの指先があるそして...
『ばしゃ!』
顔に水が浴びせられた。ニャンタの水の魔法で顔中びしょ濡れにされた。
「はい~、一人目脱落ね。とりあえず一発喰らわしたからね。じゃあ次はだれが闘う?めんどくさいから全員でもいいよ~」
この人、こんな感じだけど、実はめっちゃ強いだろ。相手はグレイシアもいるのに、それを相手に出来る程に余裕があるのか?
今度はみんな降りてきて、それぞれ構えた。零羅もだ。だが、あの時の様な闘争心は見えないな。
それにしてもこいつ囲まれているのに、ニャンタは大あくびをしてそこから動かない。
「では、行くでござる!!」
「はい!」
「あぁ」
みんな一斉にニャンタに襲い掛かった。
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「あ...」
全員、びしょ濡れにされた。つまり、みんな一撃喰らってしまったのだ。麗沢も零羅も睡蓮もシィズも、グレイシアですらだ。
「よそ見してた...」byグレイシア。
「はい~、みんな脱落ね~」
えっと、どうすればいいんだ?俺たち...負けた?え?ヤバくね!?
「はいっと、殺すのは面倒くさいし...あ~、だったら、明日もう一度やる?結局の所さ、こっちは君たちを進ませなければいいんだよね~。我としても、遊び相手がいなくてつまらなかったからさ、良い遊び相手にはなるし、陛下の命令も遂行できる。一石二鳥~。じゃ、そういう事で、明日ね~」
そうニャンタは延べ、さっきのビーチベッドにのそ~っと座った。
あ~、一日は無駄になるけど、やり直し利かせてくれるのね。よかった~...
「ぐ~」
ニャンタはベッドで寝てしまった。さてと、俺たちはどうしようか...そう考えていた時だ。
『パコーン!!』
子気味よく、何かを叩く音が聞こえた。
「こおるぅあああぁぁ!!ニャンタァァ!!お前は、何をサボってんだーー!!」
「うぇっ!?あ...サム先輩、どうも~~ヾ(^∇^)おはよー」
「ああ、おはよう...って違うだろうが!お前はここで何をしていた!見回りはどうした!?」
サムが突然現れ、ニャンタを叱りつけている。サム先輩って、あれ?
「び~ちの見回りちゅうで~す。ここからしっかり見てますって」
「ほぅ、ならばお前さっきいびきかいてただろ。それはどう説明する?あれは何だったんだ?」
「あ~...深呼吸で~す」
「貴様...警察を、なめるのも、いい加減にせんかー!」
『ボカン!!』
サムはニャンタの頭に強烈な一撃をかました。あれ...一撃、入った...の?これってあり?でも、勝負はもう終わって......
「痛たた~、もぅ~、手加減してくださいよ~。あ~そうだ。コレ、一撃でいいですわ。我の負けでいいですわ面倒だし...」
ん?今なんて言った?負けを、宣言した?
「ん?何を言っているニャンタ...負けとは、一体何のことだ?」
サムはなにも理解していないみたいだ。彼がリーダーだという事も。
「あれ~?情報行ってませんでした?我が一応、この地区のリーダーなんですよ~?それで今、この人達と勝負してたんです~」
ニャンタの言葉にサムは固まった。サムは情報を探しに行ったはずだったんだけどな。
ニャンタがサムに今までの経緯を教えている。どうしてリーダーをやっているのかもだ。話に聞くと、ニャンタは、幼馴染のワンコとポンサンに頼まれて渋々リーダーを受けたらしい。因みにニャンタの本業は王国軍ではなく警官らしい。そしてその上司がサムらしい。
「そんでもって、今、先輩から攻撃を受けたから我の負けという事なんです~」
「......はぁ。ニャンタお前、先に言えよ...」
サムはズ~ンと肩を落とした。サムさん。あなたの気持ち、分かる気がします。自分は頑張ったのに変なところで終わらせられる気持ち。
「じゃあ、私たちの勝ちという事でいいのか?」
「あ~はぃ。ほぃコレ、発信機」
ニャンタはポケットからあの発信機を取り出した。本当にいいのかよ...。サムはそれを受け取った。だがソレを見て眉を寄せた。
「おいニャンタ。これ、電源の灯りが点いていないが...コレって、どういう事だ?」
サムの言葉に、ニャンタはさっと目を逸らした。
「おい、まさか...自分で壊してしまったとか、言わないよな...正直に言え、なぜこうなっている」
サムの後ろに、なんだか鬼が見える。俺は、ちょっと後ろに下がっていようかな。
「いや...今朝、海にドボン...」
もしかしたら、こいつ。自分で壊したこと無かった事にする為に、この勝負をしたのか?そんでもってついでに時間稼ぎできればいいかって?あ~そういう事なのか~。俺はこいつに騙されたのか。ん?騙されたと言えるのか?コレ...
俺は、ふとサムを見た。肩が震えている。そして...
「ニャァンタアアァァァ!!貴様ぁ!自分で何をしたのか分かってるのか!この装置一つ一つが世界の命運を決める重要な要素だぞ!それを海に落として壊しただと!?お前は、もう少し、自分の、受けた、仕事に、責任を、持たんかーー!!!」
サムがすごい剣幕で怒っている。こえぇ。
「いや~...すいませ~ん!」
ニャンタが漫画の様に足をクルクルさせながら逃げた。
「待たんか!コラァ!!」
とりあえず、発信機は壊した。で、良いんだよな。
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ニャンタはどこかに逃げて行った。逃げ足はめちゃくちゃ速かった。サムは追いかけたが、どうやら見失って帰って来た。
「はぁ...あの野郎。いつか必ず...!?」
サムは、周りの視線をようやく理解したみたいだ。みんな固まっている。
「あ......済まない。取り乱した。とりあえず、ここの開放も終わった。で、いいな」
みんな頷いた。
「よ...よし!じゃ、じゃあ次行く?」
シィズが、そう提案したが、サムはそれを止めた。
「いや、待ってくれ。少し寄りたい所がある」
「え? どこに?」
サムが寄りたい場所?一体なんだろう。
「いや、ふと思ったことがあってな。私の考えだと、この先のリーダーは、今まで戦った奴らとは比べ物にならない実力の持ち主がいると考えていいと思っている。だから、装備を一度整えようと思ってな」
サムの言葉に、シィズが真っ先に反応した。
「あ!チュニアさんの!」
チュニア?誰だろう。
「あぁ、みんな来てくれ。あそこなら、これからの戦いに役に立つものがあるはずだ!!」