第2章 37話 訪れたリゾート地で待つモノは、リーダーと勇者の武器 その1
「ふぅ、ようやく着くな。あと五分位で南オーシャナ地区のリーダーが待つと言われる町、アオシラ市だ」
今の運転はサムが行っている。朝っぱらから、中々衝撃的なものを見たせいで、その後眠れずにいた。そして、長時間車に乗っていたせいで、かなり腰が痛い。やっと着くのか...
「見えてきた、あれがアオシラだ。この国有数の観光名所...はぁ、少しはゆっくりしたいものだ」
あれは...
「海だーー!!」
そう、そこには海があった。
車は街に入っていく。なかなかに発展している街だ。真っ白な壁の家が立ち並び、大通りでは屋台というか、マルシェ的な店が並んでいる。俺たちの車は、海岸付近の駐車場に車を止めた。俺は車を降りた。
「私は、情報が無いか探してくる。それまでここでゆっくりしていってくれ、アオシラビーチ。ここなら大きな騒ぎはまず起きないだろう。ここにくる奴らは基本的にバカンス目的の奴らしかいない。ゲームなんて興味のない連中だけだ。長旅だったからな、少しは休めるだろう」
サムはそう言って、どこかへ去った。心遣い、感謝します。
俺たちはビーチに向かった。既に大勢の人が海水浴に来ていた。みんなのびのびと遊んでいる。この世界、結構呑気だな。まるで今までの旅が嘘みたいだ。
俺は波打ち際に向かった、そして海を見た、透明だ。それ以外に言葉が出ない。遠くを見ると青い海に見えるのに近くを見ると、海は透明だった。俺の言える感想は『めっちゃ綺麗』だ。それ以外にはない。
零羅が、隣で波打ち際に立ってじーっと引いては押し出されてくる波を見つめていた。
「なにしてるんスか?」
俺は、零羅に聞いてみた。
「いえ...海を見るの、初めてなんです。これが、海なんですね...きゃ!」
少々大きめの波が、俺たちに流れてきた。零羅は驚いて飛び跳ね、しりもちをついた。
「だ、大丈夫ッスか?」
「は...はいぃ。すみません...でも、海、良いですね」
零羅は立ち上がり、ついた砂を払った。
「お~い、先輩~~~!!シィズ殿が、そこの海の家に来てくれとの事でござる~!拙者達、朝食はまだでござるからな、そこで取ろうとの事でござる!」
麗沢が俺達を呼んだ。というか、みんないつの間にあそこに行ったんだ?あれか?俺たちはテンション上がりすぎて、みんなの行動から外れたのか?...まいっか。零羅も同じみたいなもんだし。
俺は、麗沢たちの元に向かった。既に料理が出ている。
「小エビのフリッターでござる。軽いものと言ったらこれを出されたのでござる。あと、クロックムッシュでござる」
クロックムッシュは一人一皿で、小エビのフリッターはみんなでシェアして食べた。サムさんの分残さないでいいのか?でも、美味しいな。もうちょっと食べよ、なくなった。
最近は、ガソリンスタンドに併設してあるダイナーのようなところでジャンクフードばっかりだったからな。一緒に付いたサラダがすごい新鮮に感じる。
俺たちは食べ終わり、サムが来るのを待つことにした。だが、
「やぁ勇者さんたち初めまして」
隣でのんびりとビーチベッドに横たわっていた男性が俺達に声をかけた。
「我はニャンタ・フゥです。ここのリーダーを一応やってるものですね、はい」
すごいのんびりとしたその男、こいつがリーダーか。俺は身構えた。しかし
「そんな警戒せんでも...我もうな~んにもしたくないだよね~」
ニャンタは、ぐで~っとベッドからずり落ちて行った。
「は~あ~、ワンコは死ぬし、ポンサンは行方不明だし。暇だ~、リーダー引き受けるんじゃなかった、でもな~、とりあえずなんかしないと陛下に怒られるし...あ゛~~~めんどくさい~~」
こんな感じでずっと愚痴をこぼすニャンタであった。
「と、いう訳で、どう勝負するぅ?」
どうって言われても...どうすんべ?
「ん~?何も思いつかないなら、我に一発攻撃を当てたら勝ちでいいんじゃない?逆に我が一発でも攻撃を当てたら我の勝ちって事で」
まぁ、それしかないか。よしっと、闘うか。