第1章 4話 異世界の塵
区役所の中は、少し人が混雑していた。ビーンが窓口で何か話している。僕は、待合室の椅子にリュックを下して座った。しばらくしてビーンが戻ってきて隣に座った。
「すまん もうちょっと待ってくれだって。何せ最近、避難してくるような人がいなかったせいか、ゴタゴタしているらしいぜ。ところで あんたのそのでけぇ鞄なんだそりゃ」
僕は、鞄と聞かれて何のことかと思ったが、リュックの事だとすぐ気が付いた。
「あぁこれですか?リュックサックですよ。僕は仕事に行くとき急な災害にあった時用に常にこれの中に、ある程度のものを入れているんです、運動にもなりますしね」
僕は、リュックの中から携帯充電器や二ℓの水やらを出した。するとビーンが目を丸くして
「なんだ?この小さな箱」と言って携帯充電器を見ている。
「あっこれですか?これは、これ用の充電器ですよ」
と言ってポケットからスマホを取り出した。そうしたらビーンは、身を乗り出して、
「なんじゃこりゃ!」と叫んだ。周りが一瞬静かになったがまたさっきまでの感じに戻った。ビーンが小声で話してきた。
「ところで さっきからちと思ってたんだが、あんたの世界の技術ってどれぐらい進化してんだ?てかそれいったいなんだ?」
僕は、思っていたことを正直に話した。
「えーっとこれは、一応電話みたいなものですね。いろんな機能の付いた。技術については、さっき三輪トラックやら、二層式洗濯機があってまるで六十年代みたいでしたから、大体技術としては、五十年くらい進んでるんですかね」
ビーンは、口をあんぐりと開けている
「へ~ あんたの場合、魔法じゃなくて技術を持ってけばゼロ倒せんじゃねぇ?」
そうこうしているうちに、受付に呼ばれた。
「ミカミさーん。手続きのため区長がお待ちですのでこちらへ」
僕は呼ばれて、呼ばれた部屋に入った。
「初めまして。わたくしボーダー地区の区長をしています。アンドリューと申します。我々は、あなたを歓迎します」
部屋にいたのは、目がニコニコしている四十代前半くらいの初老の男だった。
「はい ありがとうございます。ミカミと申します。これからよろしくお願いします」
僕は、自分なりに一番礼儀正しくした。その後、住民登録や、住むアパートなど色々な事を決めていった。
「はい ではこれに名前を書いていただければ、手続きは、終了です」
アンドリューは、またニコニコした目をしながら僕に言った。
「はい いろいろありがとうございました」
僕は、とりあえずここの近くのアパートを貸してもらえることになった。仕事は、電気回路をいじくるのが得意と言ったら家電の修理業者を紹介された。家電の修理をするのは、国家公務員の専属の仕事らしい。まさかの工場作業員から国家公務員となったので少々驚いた。ビーンが、アパートの場所を教えるといったので、僕たちは、役所を出た。
僕たちは、アパートに向かって歩いている。僕は、ふと目をやると細い路地にまたあのロングコートを着た女の子がいてまた僕を睨むように見ている。僕は、気になってビーンに質問した。
「あの あの長いコートを着た女の子あれって誰なんですか?」
ビーンも路地に目をやって答えた。
「あー あの子ね。あの子の本名は知らないんだが、ゴミの中でも強く生きているって意味でみんなダストって呼んでる、あの子は、冷気を操るイツ族に生まれたんだが、冷気の魔法がとんでもなく強くてな、二歳の時誤って、両親を氷漬けにして殺しちまったんだ。それがショックらしくてな、言語障害的なやつになっちまって、しゃべれなくなっちまった。それから保護しようとしたんだが、なんでか反撃されてな 仕方なくそのままにしているんだ。だけどとりあえず今んとこ普通に生活しているらしいから何も言わないようにしている」
「へ~ そんなことがあったんですね。ですけどなんであの子は、こっちを見てるんですかね?」
僕は、なんとなく質問した。
「あぁ あいつ新しいやつが来るとそいつの事を一週間ぐらい見張るみたいでな、なぁに、すぐ止めるから気にすんな」
僕は、しばらく考えながら歩いていた(あの目つき、やっぱりどっかで)と思っていたら、僕は、ふと思い出した。(思い出した! あの目つきだ!)僕は、思わず女の子のいたほうへ走って戻っていった。