第2章 29話 懐かしさは、全ての元に繋がる因果
間違いない、そっくりだ。エリザベート アダムス、アダムス...どういう事だ?
「何で? こんなところに?」
俺は、エリザベートに聞いてみた。
「何のことだぃ?最近はずっとここにいるのですよ?」
人違い?まぁ、そうだろうな。
しばらくして、アレックスが現れた。
「あ、エリザベート。またここにいたのか。編み物、順調かい?」
アレックスは、エリザベートにやさしく問いかける。
「えぇ、もうすぐ出来そうですよ」
アレックスは俺に気が付いた。
「ん?サクラ君どうしたんだい?」
俺は、思った事を話した。
「いや、エリザベートさん、ッスか?なんだか俺のおばぁちゃんにそっくりで。ウーネア アダムス、俺のおばぁちゃんの名前なんス」
「えっ?アダムス?君の苗字はサカガミじゃなかったのかい?」
アレックスは驚いている。まぁでもアダムスって苗字はそこまでマイナーじゃないから被ることもあるんじゃないか?
「そうッス。アダムスってのは、おばぁちゃんの苗字ッス。おとんの苗字が坂神なんス」
俺は、家族構成をアレックスに話した。母、父の事、じぃちゃんは死んで、ばぁちゃんはまだ元気だと話した。
「そういう事なのか。アダムスと言う苗字は、初代の国王の直系の一族に与えられる苗字なんだ。初代アダムス王国国王、ニヒル アダムス。それがこの国を作った人の名前だ。私もアダムスだが私は直系じゃないんだ。このエリザベートが直系の家系なんだよ」
まさか...そんなことが。ありえない。俺は今そんな心境だ。ニヒル アダムス。この名前を俺は知っている。
「ニヒル...アダムス?ニヒルさんは、俺のばぁちゃんの姉の名前なんス」
俺の言葉に、アレックスは固まった。
「まさか...!えっと、レイ君の言う事が正しいのならば...サクラ君!」
突然アレックスが、表情を変え俺に聞いてきた。
「もしかして、君の世界では、二年前にその人の遺体が出たって事になっていないかい!?」
俺も固まった。
「そうッス。ニヒルさんは五十二年か、それくらいに行方不明になって、それが二年前に発見されたんス。奇妙なことに、あまり老けずに行方不明になった当初のままでっていう変な事件なんスよ。だけどその事件は迷宮入りしてるらしいんスよね」
「レイ君の予想はやはり正解だ...魔法は、彼らの世界からもたらされた。バケモノもそうなるという事になる...」
アレックスはブツブツ何か言っている。
俺はふと後ろを見た。全員何故か集まっていた。エルメスは、見当たらないが。
「こんなことが、コレは何かの因果か何かか?」
サムも驚いている。まぁ、無理もない。
「『世界は狭いな先生?』って言葉が当てはまるでござるなぁ」
麗沢は、相変わらず変なこと言っている。元ネタはなんだ?
グレイシアは、へ~と言う反応だ。
シィズも、ふ~んと言った感じだ。
睡蓮は、特にこれといった反応はしなかった。まぁこの人は色んなことがあったみたいだからな、そっとしておこう。
「という事は、桜蘭さんは、この国の王族になられるって事になりますよね?」
!?
零羅の言葉で全員、ハッとした、グレイシアもビクっと動いた。
「そ、そうなっちゃうね。ハハハ」
アレックスが苦笑いした。俺は...どう反応すればいいんだ?
「あ...はは...」
俺も、少し笑った。
しばらく沈黙してしまった。零羅はしまったとばかりに口元を手で押さえた。
「ご ごめんなさい!! また余計な事言ってしまいました!」
零羅は謝った。うーん、まぁ彼女は彼女なりにコミュニケーションを取ろうとしているのかなぁ。
俺がそんなことを考えていると、みんなの視線がこっちに向いた。(また悲しませた)と言うような視線だ。いや、俺特に何もしてなくね?どうして麗沢がその目をするんだ!ぶっ飛ばすぞこの野郎!
こんなやり取りをした後、みんな解散した。残ったのは、俺、グレイシア、アレックス、そして、エリザベートだ。彼女はずっと編み物をしていた。
「すいませんッス、少々騒がしくしてしまって」
俺はとりあえず、エリザベートに謝った。
「いいのですよ、楽しそうで何より、若い証拠です。それにしてもサクラさん。あなたを見ているとなんだか懐かしい気分になっていたのは、気のせいではなかったようですねぇ」
「本当にそこには驚いたッス」
俺は話を合わせる。そしてふと思い出した。
「そういえばグレイシアさん。俺に用って何なんスか?」
俺の言葉に、ピクっと反応した。
「そうだった。どうにもレイはサクラに執着している気がしたから、ちょっと忠告しようと思って」
なんだ、そんな事か。それに関しちゃ俺もそう思っていたところだ。ん?俺に三上が執着?なんでだ? う~ん考えるのめんどくせぇ。
「そうだ、コレ 持っていきなさい。ここで会ったのは何かの縁、どうぞ。夏には暑くて着れないかもしれませんが、今ならちょうどいい感じで着れる薄手のセーターです。差し上げますよ」
俺は、さっきまで編んでいたセーターを受け取った。
「済まないが、受け取ってくれないか?エリザベートは編み物が得意でね、作っては誰かにあげるというのが趣味なんだ」
「そうッスか、じゃあ遠慮なく受け取るッス。ありがとうございます。大事にするッス」
そう言って、俺は部屋に戻った。
その後、夕食という事でアレックスが俺の部屋に来た。俺は食堂に向かった。
食堂では、豪華な料理が大量に用意されていた。
「いっぱい食べてくれて構わない。マナーとかは気にしなくていいですよ」
ブッフェスタイルの食事、俺は適当に食べた。やべぇ、滅茶苦茶美味い。麗沢は...どんだけ食うんだよ。
俺は腹が膨れるほど食べ、部屋に戻った。俺はシャワーを浴びた、ほんとホテルだなこの部屋、各部屋にそれぞれあるみたいだ。俺は備え付けのバスローブに着替えた。
眠くなってきたな、そろそろ寝るか。
俺は眠りについた。