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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 21話 置き去りの狙撃手 その1

 朝になり、目が覚めた。目覚めたのは俺が一番最初みたいだ。空が青黒くほんのり黄色い。まず俺は顔を洗った。そして、俺は覚悟を決めなおした。鏡を見ていたら、いつの間にかグレイシアも起きて、空を眺めているのが目に映った。


 「おはよう。早いね。起きるの」グレイシアは、俺にそう呼びかけた。


 「おはようッス。グレイシアさん。あなたも起きるの早いッスね。いつもこんな時間に起きてるんスか?」俺は、他愛もない質問をした。


 「前は、レイが起こしてくれてた。でも、今はいない。それで仕方ないから一番最初に目覚めるようにしてる」


 俺は、前から気になることがあった。グレイシアは何故かよく、王の話をよくする気がする。そして、話しているときはいつも、よく分からない顔をしている。悲しんでいるのか、喜んでいるのか、はたまた怒っているのか。俺は、相手の心情を読み取ったりするのは得意じゃない。そのためか、よく空気を読めと言われることが多々ある。だけど、この顔は、敵意を向けるべき相手を考えた顔には到底思えない。


 何故グレイシアは、王を裏切っているのか、本当に裏切ったのか?王は変わってしまった。グレイシアは確かそう言っていた。何故変わったのか、何が変わったのか。俺には分からない。おそらく聞いてみても答えてはくれないだろう。昨日の事を思い出した。昨日、俺はこの地区の戦いに勝った。そして王は、「おめでとう」と言った。自分自身が一歩追い込まれたというのに。だけどその声は、まるで安心したかのような、安らいだ声だった。


 この世界は、分からないことだらけだ。だが、考えても無駄だ。今は戦おう。そして勝とう。答えはその先にあるのかもしれない。


 「大丈夫?」


 グレイシアが、俺に声をかけた。少し険しい顔していた気がする。俺は、笑顔を作った。


 「ん?全然元気ッスよ?さてと、今日から頑張りますか!」


 「だね」


 グレイシアは、ボソッと言って洗面所に向かった。その顔は、少し笑った気がする。そういえば、グレイシアが笑ったところは見たことないな。珍しいものが見れたかな?さてと、準備しますか。

 

 その後、続々と起きてきた。空には太陽が顔を出し始めている。麗沢の髪の毛が爆発していた。フライドチキンのような、あまりにすさまじい髪形になっていたので朝から笑った。おとなしそうな零羅も、笑いをこらえるのに必死になっていた。


 「腹筋が...壊れそう...です...!」零羅が


 「失礼だとは、思っているんだが...済まない...」サムが


 「あはははは!」シィズは、遠慮なしに笑った。そしてグレイシアは


 「すごい髪形だね」とだけ言って無表情だ。因みに俺は、遠慮はしなかった。


 「う~む、昨日のシャワーのシャンプー、拙者には合わなかったでござるかなぁ」


 麗沢は、洗面所の前で髪の毛を必死に直している。フライドチキンから、ブロッコリーにブロッコリーから何故かスーパー〇イヤ人のように逆立った。一旦頭洗いなおせば?と突っ込んでみたものの、麗沢は、


 「朝シャンは、嫌いなのでござる!」 


 とか言って、かたくなにやろうとしなかった。


 備え付けのくしが折れたのを代償に、ようやく髪型が直った。


 「よし!っと行きましょうか!目指すは、インダストリベルト地区。エンデン町、エンデン変電所!」


 俺たちはホテルを出た。どうやっていくのかと思ったら、八人乗りのワンボックスカーを、サムは手配してくれていた。聞くと、


 「もう乗らないからあげる」


 と、サムの友人からもらったそうだ。そして、サムはもらう代わりに、昨日、祭りの手伝いをしていたらしい。この人は用意周到な人だなぁ。ありがたい。

 

 俺たちは、出発した。車を走らせていたら、ちょっと遠くに五十人くらいの人だかりが見えた。そして、その人たちは大きな紙を広げてこちらに向けた。そこには


 『すべては平和の為に!勇者たちに、勝利を!』と書かれていた。


 「ジョナサンのやつ...」


 サムがボソッと言った。誰かなと思ったら、彼が見えた、居酒屋、というかバーの店主だ。どうやら彼の名前はジョナサンというらしい。そういえば、名前聞いてなかったな。そして、ジョナサンは何か叫んだみたいだ。声は聞こえなかったが、口元で


 「勝つんだぞ!」


 と言っているのが分かった。俺は窓を開けて。大声で言った。


 「負けないっスよ!」と言った。俺の声は届いたか分からないが、気持ちはより引き締まった。


 その後、俺たちは他愛もない会話をしながら三時間ほど車を走らせた。途中に『インダストリベルト地区』と書かれた看板が目に入った。そこからは、会話は、一気に減った。そして、


 『エンデン町』と書かれた、ボロイ看板を通り過ぎた。もう誰もしゃべらない。数百メートル先に変電所が見える。どうやらあそこに、ランディというやつがいるらしい。


 さて、ここからが、本番開始か。

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