第2章 19.5話 戦いの裏側、ゲームの裏側、世界の裏側
夕方、ここは、西ボーダー地区から離れ、インダストリベルト地区に差し掛かった地区境の町。そこにある洞窟の中に、がたいのいい男が入った。
ポンサン・ミィ。彼は、勇者たちとの戦いの後、この町に来た。理由は一つだけだ。
「あれでよろしかったでしょうか、陛下...」
洞窟の暗がりの奥、ズタボロの長いコートを着た少年にポンサンは尋ねた。少年、三上 礼は、今ここにいる。
「うん、まずは小手調べ。桜蘭君、前に戦った時に比べてずいぶんと成長したみたいだ。だけどまだまだ足りない。次は、インダストリベルト地区のランディ。ちょっと、僕の不手際でヒヤッとしたけど、順調に向かっているみたいだ。とりあえず、君には礼を言わなくちゃね。トランシーバの故障なんてめったにないのに...よく彼らを見つけれたね」
「はい、我もほぼ偶然でした。英雄祭の準備であそこにいたのですが、何やら騒がしいと思っていたら、彼らがいたので驚きました。情報が流れてから来るまでに早すぎましたからね。まぁ、彼らも偶然、と言った感じでしたが...どうやら彼ら、虱潰しのようにリーダーの場所を探すつもりだったみたいですよ?」
「サムさんは、基本思慮深いけど変なところで、後先考えず行動するところがあるからね、ま、偶然に偶然が重なって一件落着だったからいいけど、この国、すごい広いからね、本当に虱潰しされたら、時間がいくらあっても足りないよ、トランシーバ、直ってよかったよ」
三上は、ほっと溜息をついた。
「そうですね、これで、ようやくレールに乗せれたというわけですね」
「うん、僕の説明の下手さが憎いよ、でも何とかグレイシアがフォローしてくれたみたいだ。裏切っておいてだけど、感謝しなきゃね」
「では、我のここでの役目は終わり、という事ですね」
「...そうだね、君はもう用済みになった。じゃあ、やるよ。ワンコが待ってる」
三上は、すぅっとポンサンの前に立った。その次の瞬間。
『ザシュゥッ!』ポンサンの左胸を、王の剣【流血光刃】で貫いた。
「グフッ...!必ず...成し遂げてくださいね」
「あぁ、任せろ。全ては平和の為に...だ」
「はい...全ては...平和の..為.に」ポンサンは、そこで力なく倒れた。
「そして...平和は...」三上は、動かないポンサンを担いでどこかへと去った。