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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 16話 第一の解放作戦 その2

 俺たちは店の中に入った。中の雰囲気は荒っぽいバーのような店だ。大きな笑い声やらが飛び交っている。


 「なぁグレイシア様どう思うよ」「あぁ、いいよな~踏まれて罵られて、あの涼しい顔で見下されたいぜ」「お前...そんな趣味が...あ、そうじゃなくて行方不明らしいぜ?グレイシア様」「マジで?」なんか変な会話が聞こえてきた。


 なんか映画の世界に入った気分だ。俺たちはカウンター席に座った。


 「お客さん。何にする?」


 座った途端、店長、というかマスターのような人が話しかけてきた。


 「えっと、じゃあ」


 「コーラ二つ、ある?」


 俺が考えている間にグレイシアがすぐさま注文した。店長が少し驚いた顔をして、ニヤッと笑った。


 「お客さん、いい目してるね。新発売のコーラってやつは人気商品だからね、普通の店に行ってもまず手に入らないぐらい品薄だ。でも、灯台下暗しってやつだ。今、この店で酒をコーラで割る商品を開発中でな、ちょうど入荷してんのよ。あんたはそこに目を付けたわけか、やるねぇ、裏をかくとはねぇ」


 店長が奥に行って瓶に入ったコーラ二本と、栓抜きを渡してきた。


 「はいよ、コーラ二本、冷えてるぜ、他にはなんか注文あるか?」


 店長の問いかけに、グレイシアはコーラの栓を抜いてから質問した。 


 「あなたは、どっちに付きます?」


 グレイシアの言葉に、店長はすごく真剣な顔になった。


 「例のゲームについてか...悪いが、答えられないな。下手なことをして店の評判を下げたくねぇ。もしあんたたちが評判を下げる為に来たんなら帰んな」


 店長は俺の隣のテーブルを拭き始めた。俺はコーラの栓を抜こうとしたが、栓抜きの使い方がいまいちわからない。えっとどうやるんだ?


 「言い方が変だった。実は王が何をしたのか見ていないし聞いてない、一体あの人は何をした?」


 グレイシアは質問を変えた。栓が抜けた。やった。


 「そういう事か、観てないのか。周りの奴らが気を悪くする、小声で話すぞ」


 店長がカウンターに身を乗り出し小声で話し始めた。俺は飲みながら聞いた。


 「爆弾だ、陛下は自分の体の中に爆弾を突っ込んだんだ。陛下は昨日駅前に来てたんだ、そこで俺は見た。技術者を呼んで、爆弾を作らせそれを陛下は自分で腹に穴をあけてそこにねじ込んだ。陛下の話では爆発する条件は二つ。各地区のリーダーが持つ発信機の反応が消えた時と言っていた。そして発信機の反応が消えた地区ではその瞬間から、戦闘と名の付く行為を禁止すると言った...」


 「もう一つの条件は?」


 グレイシアが続けて質問している。俺は飲み終えた。


 「指名手配のあの三人の生命反応が消えること」


 店長がここで目が少し泳ぎ始めた。


 「ありがとう、コーラ、美味しいね」


 「だろ?」


 「ねぇ、聞いてもいい?」


 グレイシアは何か別の質問をするみたいだ。


 「なんだ?」


 「少し汗ばんでる?」


 「昨日の出来事を思い出しちまってな。生々しくて恐ろしいぜ、あれはもう二度と見たくないな」


 「そ...ここ、静かになったね」


 グレイシアがこう言った瞬間に俺はグレイシアに突き飛ばされた。何があったんだ?


 『パァン!』


 直後に近くで乾いた音がした。耳が痛い。そしてちょっとしたら変なにおいがしてきた。何の匂いだ?焦げ臭い?あ、花火のにおいっぽい。


 俺は立ち上がった。というかグレイシアが俺を引っ張り上げた。前を見たら店長が震えていた。なんだと思ったが、手を見たら俺は状況を理解せざるを得なかった。店長の手元にはシングルアクションのリボルバーが握られていた。ヤバいと思って後ろを見たらこの店にいた全員が、ナイフやら包丁やらを俺たちに向けていた。


 「最初の質問、答えは王側という事だね。しかも、ここは全員、敵」グレイシアは構えた。


 「許してくれ、いくら考えても、これが一番なんだ。三人を殺せばすべて終えれる。三人さえ殺せれば王は消えるんだ。済まない。俺は家族を守りたいんだ...」


 店長は震えている。手も体も全身が震えている。


 「すまん!」


 店長がハンマーを起こし、引き金に指をかけた。俺は思わずさっき開けたコーラの栓を店長に投げつけた。


 『バチィン!』


 俺の予想をはるかに超えるスピードで栓が飛んでいった。栓が店長の手元の拳銃に当たった。拳銃が店長の手元から離れ後ろのほうに飛んでった。俺は今何をしたかよくわからない。だが今ので俺たちを囲っていた人たちが俺達から視線を逸らした。その瞬間グレイシアはあっという間に部屋を丸ごと凍らせ周囲の人達の足元を凍らせ、身動きを封じた。すげぇ。


 「逃げるよ」


 ちょっとポカンとしていた俺の襟をつかんでグレイシアは、俺を引きずるようにして外に走り出した。苦しい。


 何とか俺は体勢を立て直して、俺たちは走った。他の人達が心配だ。


 しばらく走ると、サムと麗沢君が正面から走ってきた。追われていたかのように走ってきたが後ろには誰も居ない。上手く撒けたというわけか。


 「大丈夫か?どうにもここの住人は王に付いているみたいだな。しまった、住人たちが私たちを探す。王国軍は別に警戒する必要なく祭りの準備にかかれる。そういう算段だったみたいだ。考えが甘かった」


 サムもある程度同じ事を聞いたようだ。


 「サーム!ちょっとまずいことになった!」


 シィズが後ろから来た。その更に後ろから声が聞こえてきた。

 

 「あいつだ!殺れ!」「全員いるぞ!」「今がチャンスだ!」


 数え切れない追手がシィズたちを追ってきた。


 「あ~、これは...どうするんスか?」俺はとりあえず聞いた。


 「逃げようか」サムは流れるように答えた。


 「ッスね」俺も流れるように同時に誰も居ない方へ走り出した。

 

 「くそ!どうすればいい?彼らは仕方なく王に付いているだけだ。グレイシアさん!足止めできますか?」サムはグレイシアに問いかけた。


 「あの人数は無理、殺しちゃう」


 俺としては、相手はできない事もないグレイシアがすごいと思っていた。

 

 俺たちは走ったが次第に追い込まれ、ついには行き止まりまで追い込まれた。人数が多すぎる。ここまでの数を王は味方につけたのか、なんて奴だ。みんな恐怖におびえている。仕方なく王に付いていると言った感じだ。恐怖の支配は、正義感も消え失せるんだな。なんかムカツク。


 「追い込んだぞ、済まないが死んでもらう。悪く思うな、恨むなら王を恨んでくれ、君たちをこんな目に合わせる王を...」


 話を聞けば聞くほど、人間って愚かで悲しい生き物なんだな。悪いと思っていても、何かに理由をつけて逃げようとする。


 「ほんとに悲しいッスね...」


 俺はボソッと言った。聞こえているのはどうやらグレイシアだけみたいだ。彼女だけが反応した。


 「俺は何のために覚悟を決めたんスかね。俺達には元の世界に戻る方法が無い。ましてやなんでここに来たかも理解していない。だけどこの世界は恐怖で支配されている。みんなは怖がっている。俺にその恐怖を晴らす力があるかどうかは分からないッスけど、俺の心は晴らせって言っているんスよ。王を、三上 礼を倒せって言っているんス!俺はこのゲームをクリアして、せめて、今、目の前で怯えている人たちを救いたいだけなんス!俺は俺の正義を、善を貫くために覚悟を決めた!だからここに来た!お前ら!もう一度自分の心に聞いてみろ!何が正しいと思うのか、俺たちを殺す覚悟があるのなら、逃げるな!自分の思う正義を貫け!俺はここのリーダーを倒しに来た!俺たちに協力して、そのリーダーについての情報を教えるか、それでも王に付いて俺たちと戦うか!俺は覚悟を決めた。お前らが俺たちの覚悟を潰すのなら、俺は、お前らの覚悟を潰す!覚悟はいいか!」


 俺はいつの間にか大声で話していた。ムカついてキレていた。住人たちに銃口を向けていた。住人たちは固まっている。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・

 「やはり...俺にはできない!敵はミカミ国王!全部あいつが原因じゃないか。こんな手であいつを倒すことが出来ても、俺の心は多分晴れない。あいつのせいで父さんも親友も亡くした。やっぱり直接怒りをぶつけなきゃ収まる気がしねぇ!なぁあんたたち、あんたたちが誰なのか、なんで王はあんたたちに入れ込むのか分からないけど、協力するよ。俺は協力する...それが俺の覚悟だ」


 住民の中の一人が持っていたナイフを投げ捨てた。


 「私も協力するわ」「怖いのは確かじゃ。だが儂の心は王と戦えと言っておる」「怖いのがなんぼのもんじゃーい!」


 住人たちが次々と武器を下げた。そんな中に変わった音が聞こえた。


 『パチパチパチパチ...』


 一人が拍手している音だ。今の俺の言葉への拍手か?だとしたら恥ずかしいな。違うぞ。拍手しているのは一人だけ、住人たちが固まった。そんな中に動いてゆっくり拍手しながら歩いてくる奴が一人いた。


 「中々、いい演説をするじゃないか少年。我も中々に聞き入ってしまったよ。少年、リーダーの場所を知りたがっている様だね。ならば教えようか?」


 話してきたのは、少々体格の良いおっさんだった。ん?『我』っていう一人称の奴って確か...


 「ポンサン・ミィ?」


 シィズがポソッと言い放った。ポンサンって今度は狸みたいな名前だな。俺は今ちょっとのんきだった。


 「そうだ、我の名前はポンサン・ミィ。ミカミ陛下の命によりここ、西ボーダーのリーダーを仰せつかった。我はお前たちと戦うためにここに来た。正直な話、少年、君の言葉で我も少し考えたよ、我は王の命令だからここに来たのではないのだと、我は友の為にここに来た。わが最大の友ワンコ・ヒィ。ワンコの無念を晴らすために我はここに来た。お前を倒すために...さぁ、覚悟を決めたまえ、少年!」

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