第2章 15話 第一の解放作戦 その1
『ガタタン ガタタン...』
グレイシアが、貨物のコンテナの扉を壊して中に入った。中には牧草が大量に入っていた。
「あっ、これって、某アルプスのアニメに出てくる奴じゃないッスか?一回これのベッドで寝て見たかったんスよ」俺は、ノリノリで牧草の山にダイブした。
「あっ先輩、それは...」
麗沢が何か言おうとしたが、時は遅かった。
「あっ!いたたったた!!」
それは予想外に硬く、俺を突き刺してきた。あれ、変な体制で埋もれた。抜け出せない。
「それやってもアニメみたいにはいかないでござるよ?大丈夫でござるか?」麗沢が助けてくれた。
「というかこれは、麦でござるよ?」
麗沢にツッコまれ俺は滅茶苦茶恥ずかしくなった。周りを見ると、何をやっているのだろうというような、哀れみのような視線を送られた。
「すんません。変なことはしないッス...」
俺は謝った。馬鹿が馬鹿な真似したら馬鹿にしかならないな。
「そ...そういえば、スイスには干し草を使ったベッド、実際にあるみたいですよ?寝心地はそこまでという評判ですが...」
零羅は、話を変えて俺をフォローしてくれている、泣こうかな。
「スイス?なんだそれは、地名か?」
サムがそこの部分に触れてくれた。ありがとうございます。零羅さん。
「スイスは、日本から約九千七百キロ離れた国でござる。この国には、様々な国際機関の本部があり...」
麗沢がなぜか説明しだした。こいつは語りだすと長い。俺は暇になったから麦の山にもたれかかった。少し痛い。でも、意外と寝れそうだな。現に今、眠い。寝よう。俺は寝た。
ふと目を覚ました。まだ麗沢が何か語っている。サムだけが真剣に聞いており、他は俺と同じように寝ていた。
「そうか、君たちの世界はすごくたくさんの国に分かれて、成り立っているのか。てっきりニホンが中心となる国と思っていたがそうではないんだな...」
サムは、しっかり話を聞いている様だ。俺は周りを見た。外の景色が分からない。今は夜か?背中がかゆい、虫にでも刺されたかな。まぁ、小さい虫は多分大量にコンテナの中にいるだろうからな。なんか気持ち悪いな、そう考えると。でも、仕方ないか。俺は再び目を閉じた。今度はあまり眠れない。しばらくして、ようやく麗沢もサムも寝たようだ。さっきまでこの車両の揺れが心地よかったのに、今はそうでもなくなってしまった。眠れそうにないが、目を閉じてじっとしていよう。出来るだけ休息を取ろう。
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『ガッタン!!』
かなり大きい衝撃と音で俺は目が覚めた。周りを見ると最後に起きたのは俺みたいだ。みんな起きている。ちゃっかり寝ていたんだな。だけど、あんまり眠った気がしない。
グレイシアがドアを少し開けて外を見ている。
「レイサワ、変装道具持ってきて正解かも...」
グレイシアが呟いた。何か神妙な顔をしている。
「どういう事ッスか?」
俺は反射的に呟いた。グレイシアは俺を見た。
「敵は、予想以上に多かっただけの事。反対の扉には誰も居なかった。そこから行く」
グレイシアが車両の反対まで行き、音を立てないように開けた。俺たちは、グレイシアにとりあえずついて行く事にした。俺たちはこっそり貨物ターミナルを抜けた。その抜ける途中で、グレイシアの言っていることの意味が理解できた。反対側から会話が聞こえてきた。
「なぁ、あんたはどうする?」
「俺も迷ってるよ。でも、あそこまでするのなら、あの三人たちには悪いけど、王に付くしか俺達全員が助かる道はないだろ」
「だよな、だけどミカミ国王、いったい何がしたいんだ?おかしいぜあの人は、まさか自分に...なんてな」肝心な部分がよく聞こえなかった。
俺たちは倉庫のような建物の裏に着いた。
「あの様子だと、民間人も敵の人がいるってことだな。王が何かしたみたいだが、よく分からない。聞き込み調査だな。変装するか」
サムの提案で、俺たちは変装した。ウィッグをつけてサングラスやら眼鏡をかけただけだが。
「よし、ここなら誰も来ないみたいだし一時間後またここに集まるってことでいい?」
シィズの提案に全員納得した。
「そうだな、ならば二人一組で行動しよう。あまり大人数で行動するとこの変装では怪しい。私とレイサワ君。シィズとレイラさん。グレイシアさんとサクラ君でそれぞれ行動しよう。それで大丈夫かい?」
サムの提案に納得した。つまりは二人で動いて情報を知るところからか。なんか確かにゲームみたいになってきたな。
「では、一時間後にここで」サムは麗沢を連れてどこかへ向かった。
「私たちも行こうかしら」シィズも零羅を連れて、歩き出した。
「まずどこから行くんスか?」俺は質問した。
「居酒屋...」グレイシアがそう呟いて歩き出した。
「分かりました。ん?え?」
ツッコむ前に足早にグレイシアが歩き出してしまった。おいて行かないでくれ。
倉庫の裏から、人通りの多い道に出た。フランスみたいだと思った。ところどころに『英雄祭』と書かれたのぼりや、垂れ幕があった。結構きれいな街だな。そんな感想を他所にグレイシアは少し速足で歩き続けた、ついて行くのに必死だった。数分歩いたところでグレイシアが建物の前に止まった。バーのような店だったが店の名前に『居酒屋 西ぼ~だ~』というのれんがかかっていた。
「こういう店に情報はよく入る。でもここの客、飲んだくれとか多くて血気盛んだから気を付けて」
グレイシアの忠告で冷や汗が出た。
「え?グレイシアさん?ここによく来るんですか?」
俺が質問しようとしたら、すでにグレイシアはドアを開けていた。
「ちょ!待ってくださいッスよ!」
俺は追いかけた。どうにもグレイシアは少し読みずらい。クールな感じだけどちょっとズレているというかなんというか。