第2章 13話 それぞれの覚悟は、結末を変える強き信念
「あいつのゲームに付き合うしかないんスか?この後、どうなるんスかね?」
俺は今、他力本願しかできない。何も思いつかない。
「とりあえず、状況を整理しようか。もしかしたら何かいい方法が生まれるかもしれない」
サムはそう提案した。そうだな、まずは状況を知ることが一番だ。全部聞いていたけど、俺はまだ状況が理解できていない。他のみんなのそんな感じだ。
「まずは王の言っていた、君たち三人を住民に殺させる。これはおそらく、国民を分断させるために言った言葉だろう。この世界の住人を王側、我々側、二つに分ける。これがまず王の最初の目的だろう。国民にはどちらに付いても利益はさほど変わらない。王を殺すか、君たち三人を殺すかの違いしかない。どちらが利があるか、国民はそれぞれ考えなければない。まずは、我々に味方する者をどれだけ確保するか、これが今、我々のしなければいけない最初の事かもしれない」
確かにそうだな。仲間は多くいたほうが心強い。
「次に、今の我々の状況についてだ。王が言うには、私たちのいるこのボーダー地区にはもう、王国軍がいないと言っていた。つまりここを拠点として行動しろと言う事だろう。このボーダー地区は、『反逆者達』の本部。一番反乱の意思を持つ者が多い町だ。ここからなら行動は起こしやすい。王の事だ、おそらく知ってて、ここを解放させたのだろう」
サムは、王の言っていた事をまとめている。俺は聞き続けた。それにしてもサムも流石だと思った。この訳が分からない状況をとっさに分かりやすくしてくれた。さすがは『反逆者達』のリーダーをやるだけの事はあるな。
「さて、あとは君たちだ。君たちはどうすべきだと思う?どの選択肢を選ぶ?王は時間制限をかけた発言をしていた。だが、いくら王が強くても、国民をすべて殺す事は不可能だ。何か方法があるのか、はたまた...この時間、何か引っかかるな...」
サムは考え出した。あとは、俺たちが決めることだけだった。俺たちが行動すれば、それはおそらく王の思う壺だろう、かといって、ここに留まっていても何も始まらない、ここでは襲われないとか言っていたが、信用できない。俺はどうすればいいんだ?
「仕方ないでござるな。やるでござるよ。まっ、拙者の選択肢はもう決まっていたのでござるがな、拙者はあの者がどうしても許せぬ。王の言うゲームに付き合ってやるでござる。命を弄ぶのは断じて許せぬ!」
麗沢が怒っていた。そうか、怒っていいんだ。ようやく俺の中の感情が理解できた。怒りだ。王の勝手なわがままで人が死ぬ。怒って当然の事をしているんだあいつは。そして、王は俺たちと同じ世界から来た。放っておく訳にはいかないんだ。あいつを止めるのは俺達だ、俺たちの責任だ。俺の選択肢は決まった。
「麗沢。俺も賛成ッス。あいつのゲームに付き合うッス。そして絶対止めるッス。あいつに、三上 礼に、きつ~いお灸をすえてやろうじゃないっスか」
あとは、もう一人の選択肢だ。零羅。彼女はどうするんだ?俺は、あいつを止めたい、だけどこの子は、まだ子供だ。危険な目には合わせたくない。それに...
「わたくし...殺します!」
俺が、少し考えていたら隣から、物騒な単語が聞こえてきた。ふと、隣を見た。そこには相変わらず、少し困った顔をしている、零羅がいたが、何か違う雰囲気を感じた。
「わたくしは、争う事が嫌いです。それを、自分の都合でみんなを争わせるなんて、許せません。わたくしにとっては、ゲームでも何でも関係ありません!あの化け物を殺せ。今 わたくしの心はそう言っています。絶対に許しません!」
...どうやら、零羅は俺達よりかなり、危なっかしい思想にまで行きついているみたいだ。もしかしたら、零羅の怒りは、俺以上かも。おとなしい子が怒ると怖いって、本当なのかも...
「君たちの覚悟は決まったようだね、私はもちろん君たちの味方だ。何があってもね、こうなってしまった以上。この王のゲームに勝とうじゃないか!」サムは、意気込んだ。
「私も一緒に行くわよ、もちろんグレイシアもね」シィズとグレイシアが立ち上がった。
俺たちは、これからゲームを開始する。敵の戦力は未知数だ。だが、今の俺達よりはるかに上であることは確かだろう。俺たちは、このゲームに勝たなければならない。さもなければ全人類の死を意味するからだ。
だが俺たちはまだ知らない。この、意味不明なゲームの先に待つ、最悪の結末を、俺たちは今、進むことしかできなかった。
全ては、平和の、為に。