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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!  作者: カップやきそば
第二章 この異世界より覚悟を決めて
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第2章 11話  真の覚悟は、見つけるべき己の善

 俺たちは例の警察署の裏にある『反逆者達』のアジトに戻った。今はちょうど昼を過ぎたぐらいだ。普段であればそろそろ昼ごはんが食べたくなる時間帯だが、今日はさすがに何か食べれる気分じゃない。


 「ふぅ、到着っと」


 シィズが車から降りた。俺たちも車から降りる。さて、ここからどうするか。


 「とりあえず、何とか全員無事にここまでこれたな。私はとりあえず、図書館に向かうことにしよう。シィズ、変装用具はどこにしまっていたっけ」


 サムが、シィズに何か聞いている。変装用具?ちょっと見てみたいかも、どんなのがあるのかな。


 「あぁ、あれなら台所の裏の倉庫に大量にあったはずよ?でも、今更図書館に行って、何か見つかるとも思えないけど...前にさんざん調べたじゃない」


 シィズはどうやら、乗り気ではないようだ。


 「あぁ、ミカミ レイについては多分、今 私たちが知っている以上の事は出ないだろう。私が調べたいのはそこじゃない。少し気になることがあるんだ。行ってくる!」


 サムは、あっという間に出かけて行った。何か、重要な事でも見つけたのか?すごく慌てているように見えた。シィズはサムの勢いに負けて、止まっていた。


 「ま、いいか。サムの事だから大丈夫でしょう。じゃあ私たちは...そうだ、サクラ君、君はまだあまり魔法が得意じゃないみたいだったわよね。少し練習してみたら?ここの奥に魔法用の訓練場があるから、そこで練習すればばいいよ」


 シィズは、俺たちに魔法の訓練を提案してきた。それが今できる一番の得策だろう。


 「そうっスね、この奥に練習場があるんスよね。使わせてもらっていいっスか?」


 俺は、ちゃんと魔法が使えるようになりたい。一刻も早く、あいつに、三上に追いつきたい。俺は、銃をもって奥に向かった。


 「拙者もやるでござる~」麗沢も付いてきた。


 俺たちは、奥に着いた。だだっ広い洞窟のような空間だ。広さ的には野球のドーム二つ分くらいあるほどの大きさだ。ここの一角に、的のようなものがいっぱい置かれた場所があった。俺はそこに向かった。そこである程度の距離を取り、銃を握った。


 「よし...やるか!」


 俺は、出来る限り手元に精神を集中させ、銃口を的に向けた、そして、引き金を引いた。


 『バチイイイイィィ!』


 勢いよく電撃が飛び出し、的を吹き飛ばした。的はカラカラと落ちた。最初に比べたらましになったが、これじゃまだまだダメだ。王が俺にやらせた「アレ」には到底及ぶ威力じゃない。俺はかなり全力でやっているはずなのに、クソ!もう一度だ!


 俺は、何度か練習をつづけた。別の場所で麗沢も剣の練習をしている。と言うか、突進の練習をしていた。


 「はぁ はぁ」


 俺は、とりあえず百発ほど撃った。だけど、どうにも威力不足が否めない。どんなにやっても威力が上がることはなかった。だが麗沢は違う、あいつは着実にコントロールし始めている。何故だ?なんで俺だけこうも下手糞なんだ?俺はどんどんむかついてきた。


 「ちくしょう...もう一度!」俺がもう一度銃に集中しようとしたとき、急に肩に手が置かれた。


 「うわああっ!」


 俺はビックリして引き金を引いた。案の定、可愛らしい電気の玉がシャボン玉のように飛んで、一秒で消えた。俺は振り向いた。いたのはグレイシアだ。かなりの至近距離で俺はまたビックリした。


 「グレイシアさん!驚かさないでほしいッスよ!心臓に悪いッス!」


 俺は今思ったことを、そのまま口にした。


 「ごめん。だけど、集中を外にも向けないと、実戦じゃ役に立たない」


 俺は、グレイシアの忠告でハッとした。戦うときは集中している猶予もなければ、一対一とも限らない、だったらどうすればいい。分からない。


 「レイは、元から魔法の扱いが上手かった。だから、闇雲にやってもレイには追い付けない」


 グレイシアは俺に説教を始めた。でも、確かにグレイシアの言うとおりかもしれない。


 「さっきの戦いで思った。君は不意打ちが上手い、あの時は威力不足だった、でも不意打ちも立派な戦い方、そこを磨けばいい」


 なるほど、確かに王と戦うのに、真正面から挑んでは勝ち目がない。だとしたら不意打ちも有効か。だけど、不意打ちをしてもあいつを倒せるのか?


 「じゃあ、サクラ。私と戦って」


 グレイシアは、俺にいきなり勝負を挑んできた。え?


 「じゃあ、行く」


 グレイシアが突然、俺に向かってきた。いつの間にか手に氷でできた剣をもって。


 「うわああぁぁぁ!」


 俺はいきなりで反応が遅れ、避けそこない、氷の剣で吹き飛ばされた。なんだよこの威力、本当に女の人の攻撃か?俺は体重は軽いほうだけど、十メートルぐらい飛ばされたぞ。そんなことを考えているうちに、グレイシアが間髪入れず攻撃してくる。ヤバい、何とか避けなければ!


 「はぁ...はぁ...」


 俺はグレイシアの攻撃を何とかよけ続けた。でも、そろそろ体力が限界だ。だけど、グレイシアのほうも間髪入れず攻撃を続けた為か、大分息が上がっている。


 「サクラ、なんで攻撃しないの?」グレイシアは俺に質問した。


 「何でって、いきなりだし、こっちから攻撃する余裕なんてなかったッスから。避けるだけで精一杯ッス」


 俺は本当のことを言っている。だけどグレイシアは、


 「違う、サクラ。君はまだ本気じゃない。心のどこかで逃げている。逃げてるから、攻撃できない。逃げてばかりいたら、私が君を殺してしまう」


 と言っている。逃げてる?俺はもう逃げないと決めたのに、ふざけるな。じゃあ今度は俺から攻撃するぞ!銃口をグレイシアに向けた。そして引き金を引いた。だが、俺の撃った電撃の弾は、グレイシア氷の剣で簡単にかき消されてしまった。この時、グレイシアが溜息をついた。


 「やはり、逃げてる。心が逃げてる。サクラ、君が優しい性格なのは分かった。でも、君は優しすぎる。いくら威勢よく叫んでも、君の心は誰かを傷つけるのを拒んでる。拒んでいるから魔法もろくに使えない。いくら怒っている振りをしても、それは本気じゃない。逃げてはダメ。人は常に誰かを傷つけている。殺している。悪なんかこの世界にはない。あるのは、己の善のみ、その為に人は、人を殺す。君がこれ以上逃げるのなら。私は、本当に君を...殺すから」


 グレイシアの目つきが変わった。





 俺は今、喉の奥が痛い、頬がビリビリする。つま先、指先、全てに電撃が走ったような感覚に襲われた。この感情は何だ?思い当たるのは一つだけだ。恐怖。それ以外に思い浮かばない。そして、グレイシアから直接感じるこの感覚、これが、殺気、なのか?つまり、グレイシアは本当に俺を殺す気と言う事。やるしかない...のか?。出来るのか?俺に...勝てるのか?グレイシアに...


 「バカヤロー...」


 グレイシアは、そう言って。氷の剣を構え、猛スピードで俺に突撃してきた。 

 

 俺は、考えていた。一瞬で様々なことを。逃げるって何なんだ?俺は、逃げるつもりなんてない。でも、さっき王と戦った時にもあった。分かりずらいあの感情。あれは何だったんだ?あれは、迷い?人を殺す事への迷い...なのか?人を簡単に殺すような奴を殺す事に、俺は、迷っているのか?それを認めたくない俺は、なんなんだ?


 


 それが、逃げている...俺..か。



 ・


 ・


 ・

 

 逃げたくない。逃げてたまるか。あいつに...三上 礼に、これ以上負けたくない。あいつは向かってくる。俺は逃げていた。そうだ、理解できた。俺は、体は向かっているのに、心を置いてけぼりにしていたんだ。周りにつられて、只、漠然とした正義しか見ていなかったんだ。だから、俺は何も出来なかった。けど、追いついた!


 気付くと、グレイシアの氷の剣が俺の目の前まで振り下ろされていた。俺は、斜め下に向かって引き金を引いた。その反動で、俺の体は剣をギリギリでかわし、グレイシアの横に着いた。


 「見えた!」


 俺は、感じたことを口にした。俺には見えた、攻撃を起こすタイミングが。今がその時、グレイシアが剣を振り下ろし、相手にわずかに背を向けた、この瞬間だ。ここで、グレイシアの体を、吹き飛ばす!俺は、銃を少し上げて引き金を引いた。


 『バアアァァァァン!』


 ゼロ距離で、俺は引き金を引いた。グレイシアの体は、数十メートル吹っ飛んだ。撃ったのは風の弾丸だ。グレイシアが、地面を転がり、止まった。やり...過ぎたのか?やべぇ!俺は我に返り、グレイシアのもとへ駆けつけた。


 「す...すいません!大丈夫ッスか!?」


 俺の問いかけに、グレイシアは答えてくれた。


 「大丈夫...攻撃の瞬間に、横に防御用の氷の盾を作ったから...砕けたけど。でも、よくやった。今の感覚だから、覚えておいて。それが、逃げずに立ち向かうものの攻撃だから」


 グレイシアは、結構ぴんぴんしていた。よかった。


 「ありがとうございます。グレイシアさん。俺は、やっと見えたッス。俺の善ってやつが、今までも見えてたんスけど俺は、それから逃げていたみたいッス。俺は、超えたい。純粋に、王の力を超えてみたい。それが俺の善。あいつもそう望んでいるみたいっスからね。それに答えてやるッス!」


 俺は、元気を取り戻した。待ってろよ。三上 礼。俺は必ず覚醒し、お前を超えて見せるからな。俺は、少しグレイシアの顔を見た。相変わらず無表情な顔をしているが、少し笑っているように見えた。

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