第2章 5話 到着した二人目はデブでも食ってろピザ野郎
俺は目が覚めた。俺はなぜか布団もかぶらず寝たのに、きれいに布団をかけられていた。この状況でここまで熟睡してしまったのは、俺が異常なのか。だけど眠いものは眠い。仕方ない。俺は時間を確認しようとしたが、どうにも時計がない。俺は外に出てみることにした。なんか香ばしい、いいにおいがする。俺はにおいのするほうへ向かった。シィズが何か調理場のようなところで料理をしている。
「あれ?起きたのサクラ君。今朝ごはんの支度中だからちょっと待っててね。でもここの貯蔵庫にいっぱい食材があってよかった。あっそうそう。ここの場所の説明してなかったね」
シィズは今俺のいる場所の経緯を説明し始めた。俺は寝ぼけ眼で聞いていた。
「ここは私たち『反逆者達』の基地。と言ってもただの会合所みたいなところだけど。ここは二年近く前に王が反逆者狩りを始めたころに作りだしたの。王はいきなり、前のアレックス国王からここの主権を乗っ取って、自分に反逆の意思を見せる者は殺すと言い放って、狩りを始めたのよね。罪もないのに勝手に濡れ衣を着せて、王は笑いながら殺していった。王の行動に本当に反逆の意思を持つものが現れるまで時間はかからなかった。そしてサムを筆頭に、私たちは徐々に同志を集めた。これが『反逆者達』の結成。そして、王に見つからないように作ったのがここって訳。作るまでにも、かなり犠牲は出ちゃったけど...」
シィズはうつむいた。フライパンから焦げ臭いにおいがしてきた。
「あっヤバい!」
シィズはそそくさとフライパンから目玉焼きのような物を皿に乗せた。俺はさっきシィズが言ってたことを思い出した。今って朝なのか?
「あの、俺ってどのくらい寝てたんスか?今、朝って...」
俺は、今までの説明よりも時間が気になった。
「ん?今は朝の六時前だけど?昨日の夜、君を起こそうと思って君の部屋に行ったんだけど。すんごいぐっすり寝てたから起こすのもかわいそうかなって思ってね...っていうか寝るときは、布団ぐらい被りなさいよ。風邪ひくわよ。仕方ないからかけておいたけどね」なんか説教された。まぁいいや。
「あっ、布団どうもッス」俺は、礼をいう事しかできない。
「でも君の顔...すんごい可愛らしい寝顔だったわよ」
シィズはクスクス笑いながら盛りつけている。俺はなんか恥ずかしくなってきた。
「俺も、何か手伝うッス...」俺は皿を準備した。
「よし出来た。私はみんなを起こすからね...ってグレイシアさん!?」
俺はふと、振り返ると目の前にグレイシアがいた。かなり距離が近い。
「うわぁ!」俺はビックリした。
「音もなく現れないで下さいよ!」
シィズが怒っている。グレイシアは悩んでいる表情をしている。
「きこえなかった?足音...」グレイシアはなんか言ってる。
「足音だけで誰か来たなんて分からないっスよ。っていうか、足音なんて聞こえなかったッスよ」
俺は、本当のことを言った。聞こえるかそんなもん。
「...ごめん。気を付ける。今度から、普通に来る」
グレイシアは、なんでこんな行動したのか理解できなかったがまぁいいや。サムも部屋から出てきたようだ。
「意外とここの設備だけで、普通に生活できるもんなんだな。もうちょっと苦労する生活になると思ったが、意外と快適」
サムはここの感想を言っている。自分たちで作ったんだろ?
俺たちは、朝ごはんを食べることにした。
いただきます。ちょっと焦げ付いた目玉焼き...のような物。目玉は潰れて存在しない。俺は食べる。塩コショウが少々効きすぎている。辛い。水をくれ。今度は俺が作ろうかな、コレよりかはおいしく作れると思う。隣を見るとサムの顔が青ざめている。サムは咽た。だが、グレイシアは普通に食べていた。
「ごめんね。目玉焼きしか作れないんだ。塩加減どうだった?」シィズは俺に振っているようだ。どうしたものか。どう返答しよう...
「サム!ついたぞ!」
どこからかいきなり、定食屋の店主が現れた。サムはガタっと立ち上がり、逃げるように店主について行った。
「サクラ君!君もちょっと来てくれ」俺はサムに引っ張られた。
俺は、別の出口から出た。誰も居ない路地に通じていた。ここはちょうど定食屋の裏のようだ。
「サクラ君だったよな。今、俺の店にもう一人のニホンから来た者が到着した。何とかバレずにここまでこれた。ちょっと彼に会ってみてくれ。もしかしたら知り合いかもしれない。サカガミ サクラの名前を知っているとか言っていたんだ」
俺は息をのんだ。知り合いがこっちの世界に?どうなってんだ?
俺は裏口から入った。厨房を通って客席に向かった。そこでそいつを見た。そいつは、
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朝ごはんの定食を食べていた。
「あっまさか?坂神先輩でござるか?」俺はそいつを見た。肥満気味な体形で眼鏡とさらに俺が高校の時に着ていた制服。そして巨大なリュックサックを背負った男がそこにいた。俺はこいつを知っている。
「麗沢...か?」俺は、名前を口にした。
「そうでござる。拙者。麗沢 弾と申す。ペンネームは、レイダース。先輩殿は何故ここに?」
この独特な変なしゃべり方。間違いなさそうだ。高校の時の後輩。俺はスポーツが嫌だから適当に漫画研究部に入ってた。俺が三年の時に入ったのがこいつだ。歩くラノベ図書館とか、色々なあだ名で呼ばれていた。いわゆる...オタクだ!
「な...なんでって、俺が聞きたいんスよ。なんで麗沢がここにいるんだ?ってか何のんきに定食食べてんだよ」
俺はツッコんだ。すかさず反応を返してきた。早え~よ。
「拙者は、食べ物を愛している者。朝 昼 夜しっかり食べなければ、拙者のプライドが許さぬのです。キリッ。それと拙者は、高校でいきなり体が吹き飛んで気づいたらここにいただけなのでござるよ。拙者の体を吹き飛ばすとは、中々の者でござるな」
だめだ。俺は少しこいつが苦手だ。異常なほどの食への欲求。そして、異常な順応速度。こいつは昔からここに住んでいたと思わせるような存在感がある。
俺はサムと店主にちょっと聞いてみることにした。
「すいませんッス。本当に知り合いッスあいつ。高校の時の後輩で...っていうか、あいつにこの世界の事はどこまで伝えてあるんスか?」俺は、ボソッと聞いた。
「全部だ」店主が答えた。
「へ?」俺とサムは、同時に間抜けな声を出した。
「あいつにはすべて伝えてあるはずだ。ここは違う世界とも、ミカミ国王の事も、むしろ君よりいろいろ教えた。ってか俺の知ってるすべてを伝えた。『反逆者達』の事も詳しく。だけどあの男の発した言葉は一言。『焼肉から揚げ特大定食一つ』だ」店主は困った顔をしていた。
「あ...あっ...ぁ」
俺は言葉が出ない。気付いたら、あいつは食べ終わっている。二分ほど前までまだ結構残ってたはずなのに...
「ふぅ...ご馳走様。店長さん、お礼を申し上げる。とても美味でござった」麗沢がなんか言ってる。
「はぁ...どうも...」店主も乗せられている。
「さてと、拙者はどうしたものか...異世界なんて本当にあるとは、そうだ!坂神先輩、そなたは今どこで生活を?もし、空いているのであれば拙者も住まわしてもらいたいのでござるが...さすがに野宿はきついのでござるよ~」ずいぶんと元気そうなことを言っている。
「あのな、俺と来てもいいけど、命の保証はなくなるのかもしれないんスよ。俺は、三上に会って確信したんスよ。俺はあいつを倒すって。三上はとんでもない力を持っていた。でも俺たちはあいつと同じ境遇の存在ッス。俺達なら、倒せるんじゃないかって思ってるんスよ。協力してくれるか?」
俺は、真面目になって麗沢に聞いた。
「もちのロンでござる。先輩が拙者に頼み事とは、断る理由なんてないでござるよ~」
何故だ。何故こいつはこうも楽天的なんだ!俺は肩を落とした。
「だ...だが、協力してくれるんだね。助かるよ」サムは引き笑いしている。
「しかし、条件があるでござる」ん?なんか嫌な予感がする。
「条件?できるだけ協力しよう」
サムは、笑顔で答えている。ヤバい。こいつとんでもないことを言い出す気が...
「一日五食でお願いするでござる」
この言葉に、俺はプッツンした。
「麗沢ー!!てめぇ!状況分かって言ってんスかぁ!?みんな命張ってるってのにてめぇは食事の心配しか出来ねぇんスか!?」俺はブチ切れた。
「仕方ないでござる。腹が減っては戦は出来ぬ。食事というのは拙者の生きる意味。拙者の半分は、食事でできているのでござる。あと半分は二次元でござるがな」
コノヤロー...俺は胸ぐらをつかんだ。てかつかまずにはいられない。ちょっと痛い目を見なければ現実を見れないなこいつは。だが、持ち上がらない。重い...。今俺は少しでもスポーツやっとけばよかったと後悔した。俺の筋肉は貧弱過ぎた。俺は、疲れて手を下した。
「乱暴はいけないでござるよ~。でも先輩がそこまで言うなら仕方ないでござるね。一日三食出れば文句言いませぬ」
んぐ...まぁ少し癪に障るがまあいいか。
「は...ははは」サムは笑う事しかできていない。
「ふぅ、少し考えこんだらおなかが空いたでござる」え?こいつ今なんて言った?
「店長。つかぬことを聞くのだが...」こいつは...まさか!?
「へい。なんでしょう」やめろ店長。こいつはおそらく...
「この店にピザはござるか?」
『ブッチン!』俺は、血管が切れる音が分かった。
「麗沢ー!!こんのぉ、デブでも食ってろピザ野郎ーーーー!」俺は叫んだ。
「先輩落ち着くでござる。外に声が聞こえるでござるよ~。でピザは?」
コココ コイツハ...
「だああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
俺は疲れた。